「親子喧嘩」
「ねぇ、下等生物は黙ってくれるかな。話してるだけで苦痛だから。」
アランの声は静かでいつもと変わらない口調であったが、明らかな怒りが見えた。
「次やったら、学校に言うから。」
アランはそう言って去っていった。
「あいつ!」
「エイムさん、あいつやばいっすよ。すぐにでも魔術を使うつもりでしたよ。」
「今度痛い目を見せてやる!」
その頃アランたちはレストランに向かって進んでいた。
「ごめんね、あんな姿見せて。人が丹精込めて作ったものを壊すのが許せなくてね。」
「アランちゃん...」
「べ、ベル?」
「ん?別にこれぐらい普通でしょ?」
「そう...」
ベルージュはアランにくっつきながら道を進んでいった。
道を進み続けて数分が経つと目の前に長蛇の列が見えてきた。
「もしかして、あそこ?」
「そうよ。私達は予約してるから。」
ベルージュはそう言うと、行列の横を通り過ぎ、店に入店した
中は貴族で満員であった。
装飾は豪華であり、店員は皆スーツを着ており、ここが貴族御用達の高級料理店ということがわかった。
「二人で予約していたマルフィンです。」
「承知いたしました。こちらへ。」
そう言われると、アランたちは普通の人達とは違い、奥の部屋へと案内された。
「テーブル席ではないんですか?」
「はい。VIPはこちらになります。」
アランたちは奥へ進むと、先程までとは比べ物にならないほどの豪華さになった。
確かにメインホールは他の店に比べると装飾にこだわりがあったが、その奥のVIPルームは比べものにならないほどの装飾であった。
「すごい!王宮みたい!」
「王宮に行ったことがあるの?」
「少しね。」
そんな話をしていると、豪華な個室へと案内された。
「今日はコース料理を頼んでるからゆっくり休みましょう。」
「そうだね。ここはどんなお店なの?」
「ここは王宮にいた料理人が創立したレストランなの。私達がいるVIPルームは侯爵以上の爵位を持っている人達が案内される場所よ。」
「つまりベルは侯爵令嬢っていうこと?」
「そうなるわね。私達生徒会は大体が侯爵以上の爵位を持っている者たちが運営しているわ。殿下に信用されている者じゃないといけないのと、他の貴族から見て爵位を持ってない者が生徒会になるのはちょっとね...」
「そうだね...」
「あ、アランちゃん?なにかあった?」
「え?あ、いや、なんでもないよ。それよりいい匂いがしてきたね!」
早速料理が運ばれてきた。
「いただきます。」
アランが一口食べると、アランの目が変わった。
「すごい!今まで食べた中で一番美味しい!」
「そう?良かったわ。」
それから、アランは運ばれる料理を全て食べつくした。
「美味しかった!ありがとうね!」
すると、アランたちの部屋の扉が開いた。
「やあ、美味しかったかい?」
「はい!すごく美味しかったです。ん?えっと、どちら様で?」
「はじめまして。私はフロム・フォン・マルフィンだ。ここの料理長をやっているんだ。」
「料理長さんが...ん?マルフィン?」
アランはベルージュとフロムを交互に見た。
髪は双方とも紫色。顔の輪郭が似ている。目の色も同じ。
そして、一つの結論に至った。
「親子か!」
「そうよ。このお店は私の父がやっているお店よ。」
「ベル、そこの子は?」
「私の恋人よ。」
「え?」
「え?」
「私とアランちゃんはラブラブなのよ!ほら見て!」
「ん?えっと、ん?」
「アランと言ったかね。少し話をしようか。」
フロムはベルージュからアランを無理やり引き剥がし、アランを他の個室に連れて行ってしまった。
「では、話をしようか。」
「えっと、多分誤解をされてると思うのですが...」
「そんなの知らん!うちの娘をどうやってたぶらかしたのだ!」
「えっと、その...」
「喋らんというのか!貴様!」
「ちょ、ちょっと、待ってくださいよ!」
「待たん!知らぬ存ぜぬなら、無理やり口を開かせてやる!」
フロムはそう言って、術式を作り出した。
「ゲイルブロンド!」
「え、マジ!?室内でそれはまずいって!」
フロムの放った魔術は、このレストランごと破壊する勢いであったが、それをアランは全て受け止めた。
そこに、爆音を聞きつけたベルージュがやって来た。
「お、お父さん!?ちょ、まって、話を聞いて!」
「あぁ?お前は黙ってろ!」
そう言って、更に魔術を放とうとしたが、体が動かなかった。
「一回落ち着いてください。」
「な、何だこれ!?」
アランは螺旋を使い、フロムの動きを封じた。
「わ、私が悪いの!アランちゃんのことを婚約者って嘘ついて...」
そのことを聞くと、フロムはため息をついた。
「またか!何度言ったらわかるのだ!」
「え?また?どういうこと?」
すると、もう一度ため息をついて、ベルージュを叱った。
「ベルージュ!何度言ったらわかるのだ!もう結婚相手は決まっているのだぞ!しかも、そのことをアランくんに伝えてないとはどういうことだ!」
「何度言ったらわかるの!私はあいつとは死んでも結婚しないから!」
「はぁ!?お前に拒否権はないんだ!わかったらその子を連れてさっさと出てけ!」
「良いわよ!二度と帰ってこないから!」
そう言ってベルージュはアランを連れてレストランから出ていってしまった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!どういうことか教えてくれない?」
「ごめんね、勝手に家庭の事情に巻き込んで。少し場所を変えましょう。」
それから二人は近くのカフェへと場所を移した。
アランとベルージュはそれぞれ飲み物を頼むと、先程の会話の続きを始めた。
「それでさっきの話なんだけど、私には婚約者が居るの。でも、私はその婚約者とは絶対に結婚したくないの。だから、今まで何人もの男を連れてきたんだけど、全員お父さんにことごとく潰されてしまったわ。」
「そうなんだ。でも、どうしてベルはその人と婚約したくないの?」
「相手は隣国、ミオラ王国の第三王子よ。」
ラファエル王国の隣国に位置するのがミオラ王国。
ミオラ王国はラファエル王国ほど大国というわけではないが、この大陸の中では上位に位置する。
「王子!?すごいことじゃないですか!」
「あ、アラン!声が大きい!」
アランが周りを見渡すと、他の客はアランのあまりの声の大きさに驚いて、こちらに視線を向けていた。
「ご、ごめん...それで、なんでその王子様と結婚したくないの?」
「あのクソ王子は私と社交会で会った時に『顔が良いな。よし、お前を俺の妻にしてやる』って言って、私に婚約を迫ってきたのよ!最初はお父さんも断ったんだけど、外交問題にするって言って、権力を振りかざしてきたのよ!」
「それはひどい話だね。陛下はそのことを知ってるの?」
「ええ。陛下もどうにかしたいと言ってはいたけど、相手が相手だから...」
ラファエル王国は魔王軍と国境が面してるため、隣国との関係が悪化すると、一気に均衡が崩れてしまうのだ。
「外交問題はなかなか大変だよね。だから、フロムさんもベルやこの国のことを思ってあの態度をとったんだと思うよ。」
「そうだよね...わかった、もう一度お父さんと話してくる。」
「冷静にね。二人とも熱くなると、暴走するタイプだから。」
「わかったわ。改めてお父さんに紹介したいからアランちゃんも来てくれる?」
「ごめんね、この後用事があるんだ。だからまた今度、結果教えてくれる?」
「わかったわ。じゃあ、良い結果を待っててね。」
「うん!バイバイ!今日は楽しかったよ!」
「うん!」
二人はそう言って、別れていった。
「じゃあ、行きますか、王宮へ。」




