「ピクニック」
それから数日が経ち、グルーブは閉店した。
「いくら儲かったんですか?」
「大体金貨200枚だ。結構儲かっただろう?」
「金貨200枚って、そんな大金で何をするんですか。」
「大体は学園祭の費用にまわるが、残った分は、情報屋に使う。」
「なんですか?その情報屋って。」
「情報屋は学園内で起きている情報を高値で売っているんだ。アラン君が聞き出した情報に学園祭のことがあったから、少し調査をしようと思ってね。」
「もしかして、僕のこともバレてます?」
「いや、それはないね。国で情報は統制されているからそれはないはずだ。もし漏れても、一家ごと処刑されるからね。」
「そっすか...なんか、厳重ですね...」
「そりゃあ、死んだ人間が生き返って、王子様を守ってますって、国家機密にもなるだろう。」
「確かに。」
「それで、俺達はどこに行くんだ?」
「今日は、王都から少し離れたところで、ピクニック!そこで模擬戦も!へルックとの約束、グルーブでできなかったからね。」
「そうだな!アランの実力がどんなもんか見てみたぜ!」
「私もアランちゃんの魔術を見てみたいわ。」
「二人はやる気みたいだけど、レベッカたちはどうする?」
「遠慮しとくわ...」
「アランのことを傷つけたくはないわ。」
「私はやめておくよ。」
「おいおい、なんで三人はそんなに遠慮するんだよ。みんなでワイワイしようぜ!」
「アランの事を見たらわかるわよ。」
そんな話をしていると、目的地に着いた。
「広いね!とりあえず、ご飯でも食べようか。」
「承知いたしました。」
ビクトリアとエレンはピクニックの準備をし始めた。
「飯じゃ、飯!」
「あの子、誰?」
「僕の使い魔のアリシアだよ。」
「使い魔?あのこ魔物かなにかなの?」
「魔王じゃ、魔王。ほら。」
すると、アリシアの頭から角が生えてきた。
「も、もしかして、魔族!?」
「あれ?言ってなかったけ?」
「言ってないよ!アリシアが魔族だったなんて...」
「レベッカ、私達は見てたでしょ?あの強さを。あれを見れば魔族ってわかるでしょ。」
「確かに...」
「それより、飯はまだか!」
「焦らないでください。すぐにお出ししますから。」
「むー!」
「可愛い!もちもちしてる!」
ベルージュはアリシアの頬を掴んでいた。
「なんじゃ、妾にそんなことをするのか。まあ、その勇気に免じて許してやろう。」
「そう、ありがとう!」
「にゃ、にゃんじゃ、わりゃわのきゃおがへんきぇいしちょるじょ。」
「あ、ごめんごめん。アリシアちゃんの顔がぷにぷにで楽しくて。」
「そうか。それより、この匂いは!」
「皆さん、準備が整いましたよ。」
アランたちが見ると、そこにはテーブルに、椅子、パラソルが設置され、テーブルの上には豪華な食事が広がっていた。
「みんな、食べよう!じゃないとアリシアに全部食べられちゃうから。」
「なに言ってんじゃアラン。妾はそんなことはせんぞ。」
「いや、したよね。常習犯だよね。なに言ってんじゃはこっちのセリフだよ。」
その会話をマリア達は遠目で見ていた。
「なんか、腹立つ。」
「アリシアはそういう子だから、しょうがないわ。」
「それより、アランちゃんの隣は私!」
ベルージュはすぐさま、アランを引きずり、席に陣取った。
「あ!私だってアランの隣に!」
「あーあ、また始まったよ、ハーレムが。」
「アランくんはモテモテだね。美女二人を手玉に取るとは。」
「あら、私が含まれていない気がするけど。」
「気のせいじゃないか?それより、マリアは混ざらなくて良いのか?」
「ここは姉としての余裕を見せるのよ。」
「そう。」
数分後...
マリアの顔色はみるみる悪くなっていった。
「どうしたんだ?余裕の”お姉様”?」
「黙れクソガキ。私は至って普通だ。普通だ。」
マリアの目線の先には、レベッカがアランに食事を食べさせていた。
「レベッカ様?私はそこまでは許しておりませんよ?」
「あら、そんな約束してたかしら。」
「あははは...そうですよね。」
そう言うと、ビクトリアが馬車からなにかを取り出してきた。
「ん、この匂いは!」
すると、アランは犬のように、ビクトリアに近づいてきた。
「おて。」
「おて!」
「おかわり。」
「おかわり!」
「腕立て伏せ。」
「腕立て伏せ!」
「なんか最後のちがくね?」
「よくできました。では、あーん。」
「あーん。」
すると、ビクトリアが取り出したのはビーフシチューであった。
アランはそれをパクパクと食べ始めた。
「ビクトリア!私達約束したよね!」
「そんな約束をした覚えはありませんよ。」
「ぐぬぬ...」
そんなことはつゆ知らず、アランはビーフシチューを食べていた。
アランが食べ終わり、周りを見ると、取っ組み合いになっていた。
「ビクトリア許すマジ!」
「メイドの分際でアランちゃんを!
「ぶち殺す!」
「絶対に混じりたくないね。」
「あぁ。俺等が入ったら、まじで死ぬぞ。」
取っ組み合いが始まってから数分が経つと、流石に疲れたようで、勢いが収まった。
「頭は冷えたかい?」
「はぁ、はぁ、うるさいな...」
「殿下は黙ってください。これは女の戦いです。」
「メイド服が...」
「あ、アランちゃんはどこ?」
周りを見渡すと、アランはまだビーフシチューを食べていた。
「まだ食べてる...」
「ん?美味しいよ。」
「そう...私達も食べよ。」
「そうね。」
「わかったわ。」
取っ組み合いをしていた者たちは、結局食事を取った。
「それで、もう一度聞くが、そこの三人は観戦ってことで良いんだな?」
「ああ。君たちだけでやってくれ。」
「そうか。それで、ルールの確認だが、本当に2対1で良いんだな?」
「うん、良いよ。」
「そ、そう...アランちゃん、本当に無理してない?護衛だからって、別にアランちゃんは強くなくても良いのよ?その時は私が守ってあげるから。」
「心配しなくても良いよ。じゃあ、アーサーさん、合図よろしくお願いします。」
「ではいくぞ。用意、はじめ!」
始まったと同時に、へルックは距離を詰めてきた。
へルックはアランの腹に一発入れたが、アランはよろめきもしなかった。
「え?」
「あまいね。」
アランはへルックの拳をつかみ、自分の方へ引っ張ると、回し蹴りをして空中に飛ばした。
「え?」
へルックは息をつく暇もなく、アランは空中に浮いているへルックを蹴り落とした。
「アラン君!そこまでにしておいてくれ。」
「わかりました。後はベルだけだね。」
「へルックがやられた?うだうだしてると私も負けるかもしれないわね。私も本気を出すわよ!」
すると、ベルージュの前に、稲妻でできた鳥が現れた。
「フェニックス?もしかして!」
「ライトニングブレス!」
稲妻の鳥は口から稲妻の光線を放った。
「セシル、出番だよ!」
「最近出番が少ないぞ!もっと俺様を使え!」
「いくよ!」
すると、アランはセシルを両手で持ち、光線を空に打ち返した。
「セシル、これはホームランじゃない?」
「そうだな。まあ、俺様を使えば当然の結果だ。」
「ねぇ、アランが言ってるホームランって何?」
「マリアは知らないの?最近王都ではやってる競技よ。確か名前は...なんとかボールって言ってた気がするわ。バスケットだったかしら。」
「ベースボールだ。てか、そもそもベースボールはボールを打ち返す競技なのに、アランくんは魔術を打ち返してるではないか。」
一方、アランたちの戦いは激化していた。
「すごい!ベルって雷属性だったんだね!」
「なんでそんな余裕があるのよ!」
アランはベルージュの攻撃を、セシルで的確にさばいていった。
その上アランはベルージュに話しかける余裕があった。
「どこ見てんだ!」
「え?」
アランが興奮していると、後ろから何者から攻撃され、遠くまで蹴り飛ばされてしまった。
「遅いわよ筋肉ダルマ。私一人だったら負けるかもしれないじゃない。」
「うっせぇな。少しあぐらをかいていたが、あの攻撃で目が覚めたわ。行くぞ!」
「言われなくてもわかってるわよ!」
へルックは、倒れたアランに追い打ちをかけるように向かってきた。
「レフリエンド!」
へルックの放った魔術は氷属性の、レフリエンドだ。
これは上級魔術であり、その中でもかなり強力な部類だ。
何と言っても、炎をも凍らせる冷気を放つ。
一部の上級魔術師や、宮廷魔術師でないと防げない攻撃である。
「覇流のうねり。」
その瞬間、渦を巻いた黒炎が、その冷気を飲み込んだ。
「うわぁ...まじかよ、それは反則じゃねぇか。」
アランはへルックの隙をつき、セシルを伸ばしてへルックを突き飛ばした。
「ライトニングヘル!」
アランがへルックに攻撃を与えている間に、ベルージュはすでに魔術を用意していた。
稲妻は地面を伝いながら、アランに攻撃をした。
だが、アランはそれを認識していなかったのにも関わらず、防御結界を展開した。
「あれ?攻撃来てた?気づかなかったよ。」
「嘘でしょ!?アランちゃんどうやって発動したの!?」
「反射かな。」
「反射で魔術は打てないわよ!」
すると、アランの背後には無数の光の矢が現れた。
「何秒耐えれるかな?」
アランが指を鳴らすと、光の矢は一目散にベルージュに向かった。
ベルージュは球体の防御結界を張り、それを防いでいた。
(球体の結界だと長くは持たないわね...あの脳筋が助けに来てくれることを願うしかないわね。)
アランの攻撃は凄まじく、ベルージュの結界は数秒もせずにヒビが入り始めた。
(お願い!耐えて!)
ベルージュの結界は崩壊寸前であった。
だが、その時、アランの背後から尋常じゃない魔力の動きが感じられた。
「コーゴルキャステム!」
その瞬間、アランの足元から氷が現れ、アランの全身を飲み込み、氷漬けにしてしまった。
「へルック!アランになにしてんの!」
「いや、でも、こうでもしないと勝てねぇだろ!」
「マリア、落ち着いて。」
「で、でも...」
その瞬間、氷にヒビが入り始めた。
「え、まじ?」
ヒビは広がり、氷は粉々に割れて、アランが出てきてしまった。
「すごいね。めっちゃ硬かったよ。」
「いや、硬いとかのレベルじゃないはずだぞ。あれ?俺がおかしいのか?」
「じゃあ、仕切り直しといきますか。」
すると、アランは飛行魔術を使い、宙に浮いた。
「飛行魔術!?」
へルックはすぐに氷の塊で攻撃したが、アランの背後にあるなにかに防がれてしまった。
「できた!核心の貫きの自動迎撃!」
「自動迎撃!?頭イカれてんのか!?」
「数で押し切るわよ!」
へルックとベルージュは何度も攻撃したが、全て撃ち落とされてしまった。
「一発も入ってない...へルック、どうする?」
「俺に聞かれてもわかんねぇよ!頭脳はお前だろ!」
「こんなの聞いてないわよ!そもそもあんな魔術知らないし!」
「次は僕の番だね。」
すると、アランは巨大な術式を作り出した。
「へルック!避けて!」
「エレクトロニックレールガン。」
へルックは避けようとしたが、レールガンは一瞬でへルックの目の前まで距離を詰めた。
へルックに当たる瞬間、アランの攻撃は何者かの魔術によって防がれた。
「アラン、そこまでよ。へルックが怪我をしてしまうじゃない。」
「あ...ごめんお姉ちゃん...」
「良いのよ。そもそもあの二人がアランのことを甘く見ていたのが悪いのよ。」
「うっ...」
「二人はこれでわかったわね?あなた達だけじゃアランは倒せないわよ。」
「ごめんね、アランちゃん。私達はあなたを見くびっていたわ。ごめんなさい...」
「俺もすまねぇ...俺等は見かけだけで決めつけていた。それは本当は良くないことだ。」
「別に大丈夫だよ。本気出してないし。」
「ん?」
「そんなことは良いとして、アラン君、これをどう片付けるつもりだい?」
「そ、それは...」
来た頃はきれいな野原であったが、今は至るところに穴があり、草も燃えて灰になってしまっていた。
「アラン様?片付けましょうね。」
「はい...」
それからアランたちは、夕方まで野原に励んだ。




