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魔法使いの家出  作者: 羽良 凪都輝
第4章 王立魔術師学校マギア 前編
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「何かが違うカフェ」

「え?誰?」

「あ...お前...」

「そっか。ベルは知らないのか。」

「左の子はレベッカのメイドのエレンちゃんでしょ。でも、右の子は初めて見たわね。」

「ビクトリアと申します。アラン様のメイドをやらせていただいてます。この度はレストランの裏方をやらせてもらいます。」

「ん?メイド?アランちゃん、あなた馬鹿なの?潜入任務なのにメイドを連れてたら意味ないじゃん!」「馬鹿ではないよ。ビクトリアは一応レベッカのメイドとして来ているからね。」

「それにしては勝手に部屋に入ってた気がするが...」

「気のせいです。」

「気のせいか...」

「そ、それで、このビクトリアちゃんとエレンちゃんが料理をしてくれるの?」

「そうだよ。僕達は接客だよ。」

「やっぱそっか...」

「なにか不満かい?」

「いえ。殿下の意見に不満はありません。ですが、私達、貴族ですよね。接客業などやったことがないのですよね。」

「それは大丈夫だよ。適当に客と話してたら、勝手にお金が入ってくるから。」

「そうですか。ん?勝手にお金が入ってくる?」

「もうそろそろ開店だよ。準備して。」

「わ、わかりました。」

(勝手にお金が入ってくる?殿下はなにを言っているんだ?てか、今更だけど、私達、なんでドレス着てるの?へルックと殿下は礼服だし。)

アランたちが厨房からホールに出ると、外には長蛇の列ができていた。

「これは会計記録を見るのが楽しみだ。」

「ええ。一体いくら儲かるでしょうか。」

「金の亡者たちめ。あれが第一王子だとは思えん。」

「同感だわ。あのガキが第一王子ね...あいつが国王になった瞬間、財政とか『節約だ、節約!』とか言いそうよね。」

「確かに。想像ができる。」

「お店開けるよ!」

アランが店の扉を開けると、生徒たちがなだれ込んできた。

「すごい!殿下の服装!いつもと雰囲気が違うけど、これはこれですごく良いわ!」

「なあ、さっきのメイド服の子、可愛くね?」

「ほんとだ!でも、あんな奴居たか?」

「グルーブへようこそ。お好きな席へどうぞ。」

店内はそれほど広くなかったが、装飾は流石ターナー商会の力を借りているだけあり、かなり豪華な装飾であった。

そして、特徴的だったのは、一つのテーブルに一人ずつ生徒が座っていたことだ。

「お客様はお好きな席にどうぞ。」

それを聞くと、男子生徒は主に、レベッカたちの方へ、女子生徒はアーサーたちの方へ座っていった。

「来てくれてありがとね。今日は私がとことん君たちに付き合ってあげよう。」

「本当ですか!?」

「どういうことだよ。こんなの本当にレストランなのか?」

「へルック様は普段はどういうことをなさっているのですか?」

「普段か。普段は筋肉を鍛えたり、魔術を練習しているな。たまにアーサーの用事に付き合うこともあるが。」

「そうなんですね!普段から鍛えているとは流石へルック様です!」

「そ、そうか...」

(これ、本当にあってんのか?)

「マリア様はいつも何されているのですか?」

「普段は魔術の練習と、部下の教育だ。部下はまだまだ未熟だから、私が引っ張らないといけない。」

「すごいですね!俺と同い年とは思えないですよ。」

「君たちもそのうち私のようになるさ。君たちの努力は知っているからね。」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

(のせられてる...)

「まだまだ列ができているわね。どうしますか?そろそろお帰りになられても。」

「えー?もうちょっとレベッカといたいよ!」

「それならこのパフェでも頼んでは?このパフェはうちの商会の商品を使っているのですよ。なので高品質で、しかも特別価格です。」

「それ頼むわ!スタッフさん!パフェ一つ!」

「はい!かしこまりました!」

(すごい。どんどん頼まれてる。)

(計画通り。私達と話したいあまり、時間と金に糸目をつけなくなってきている。)

(会計費を見るのが楽しみだわ。いくら儲かったかしら。)

アランが二人を見ると、見るからに邪悪なオーラが出ていた。

「お客さん可哀想...」

アランは厨房に入った。

「パフェ追加ね!」

「承知いたしました。エレン、少しペースをあげるわよ。」

「はい!」

二人は王都料理人顔負けの手さばきであった。

アランが少し店内を見渡しているだけで、頼まれていた料理が完成していた。

「おまたせしました。グルーブパフェでございます。」

次から次へと注文されるので、アランに休む暇はなかった。

「ここが兄上の店か。王子である者がこんな仕事をするなんて、滑稽だな。」

後ろに数人を連れている男がやって来た

「いらっしゃいませ!お好きな席にお座りください。」

「あ、ああ...ど、どうも...」

男たちが座ると、アランは早速このカフェの紹介を始めた。

「このカフェは、いくつかのテーブル席に分かれています。一つのテーブルに一人ずつ生徒会役員がついているので、お好きな方の席にお座りください。長居をされる方は商品の注文をお願いします。」

「そうか。なら、君の席はあるのかい?」

「え?ぼ、僕はホールスタッフなのでそれは。」

「いいから。早くここ座って。」

「そ、それは...」

「私が代わりにやりますので、安心してください。」

「ビクトリア、一人で大丈夫?」

「大丈夫です。エレンもかなり上達してきたので。」

「じゃあ、よろしく。」

アランは新たに入ってきた客の接客に周った。

「お名前を聞いてもよろしいですか?」

「ほう。僕の名を知らないとは、君はどこかのメイドかい?僕の名はフェンデス・ハワードだ。」

(嘘!?この人第三王子だったの!?)

「王家の方とは!すみません、僕の落ち度でございました。」

「僕の顔は庶民にはあまり知られてないから、今回は許してやろう。それより君の名前は?」

「えっと、僕は...」

(どうしよう。偽名にする?アーサーさん!助けて!)

アランがアーサーの方を見ると、アーサーはすぐに気づいた。

(偽名にしてくれ。そして、色々なことを聞き出してくれ。)

(わ、わかりました。)

「僕の名前はアレンと言います。今日はよろしくお願いします。殿下と言えば、中等部で生徒会をなさっているのですよね。」

「そうだ。僕は中等部で生徒会長をやっているんだ。」

「そうなると、日々たくさんの仕事をなさっているのですよね。今日は僕がとことん付き合いますよ。」

「あ、ありがとう...」

「それで、普段はどんな仕事をしているのですか?」

「普段か。僕達生徒会は中等部のまとめ役のようなものなんだ。だから、トラブルがあったり、行事がある時は僕達が解決したりするんだ。他には王子としての仕事かな。」

「そうなんですね。王子はそんなに大変なのですか?」

「そうなんだよ。他国への手紙や、部下への割り振り。社交会で人脈づくり。どれも大変だよ。」

「そうなんですね。殿下は容姿が端麗ですから社交会でも大変ですよね。」

「そ、そうか?兄上に比べれば別に...」

「そんなことないですよ。殿下も十分かっこいいと思いますよ。」

「あ、ありがとう...」

その瞬間、他のテーブルからカップの割れた音がした。

「ま、マリア様?カップが割れていますよ。」

「あ、ああ、すまない。ビクトリア、片付けてくれるか?」

「承知いたしました。」

「マリア様がカップを割ってしまったみたいですね。」

「ああ。なんか持ちてが割れているような気がするが...」

「き、気のせいですよ!それより、殿下は少し顔色が悪いですよ。寝不足ですか?」

「あ、ああ。そうなんだよ。最近少し忙しくてな。」

「そうなんですね。なにか生徒会で企画でもしているのですか?」

「いや、そういうわけじゃないんだが、色々とあってな。」

「そうなんですね。辛いことがあったら僕に相談して良いんですよ?」

アランはそう言って、フェンデスにすり寄った。

その瞬間、また何か割れた音がした。

「ベルさん?どうしたの?」

「いえ、少しよそ見をしていたわ。ビクトリア、片付けてくれる?」

「承知いたしました。」

「ふっ、生徒会もこんなものか。」

「殿下は兄上とは仲良くないのですか?」

「あの男は大嫌いだ。昔から僕のすることなすこと、全てにおいて僕の上をいった。そのうえ、大衆には猫を被っている。そんな奴国王の座まで奪われるなんて、それだけは嫌だ。だから、僕はあの計画も組んでいるんだ。」

「殿下、そのお話は控えたほうがよろしいかと。」

「す、すまない。少し感情が爆発してしまった。」

「大丈夫ですよ。僕で良ければ、相談に乗りますのでいつでも来てください!」

「アレン...」

それから、フェンデスは毎日アレンに会いに来た。

「アレン!会いに来たよ!」

「こんにちは殿下。毎日来るなんて、お金がなくなってしまいますよ。」

「良いんだよ。それより、今日は嬉しいことがあったんだ!」

「そうなんですか?何があったんですか?」

「七大公爵のモルー公爵が会談に応じてくれたんだ!今までは会談を提案しても、ことごとく断れていたんだが、これは大きな進歩だ!」

「それはすごいことですね!それでモルー公爵はどのようなことを言っていたのですか?」

「モルー公爵はまだどちらの派閥につくかは決めていないと言っていたが、条件が良ければこちら側についてくれるそうだ。」

「そうなんですね。今日は会談で疲れたでしょうし、僕が肩をほぐしてあげますよ。」

「え!?い、良いのか?」

「はい!いつも来てもらっていますから。」

その瞬間、グラスの割れた音がした。

「れ、レベッカ様!?だ、大丈夫ですか?」

「え、ええ...少し感情が高ぶってしまったわ。」

「そ、そうですか...」

「最近、カップを割る人が多いですよね。」

「そうだね。まあ、僕達には関係ないことだけど。」

「そうですね。もし、モルー公爵が殿下の方についたら、前言っていた計画も進むのですか?」

「聞いていたのか?」

「す、少しだけ...」

「あの計画だけは誰にも言えないんだ。ごめんね。」

「そうですか...僕達は隠し事なしの仲だと思っていたのですが、残念です...」

「ご、ごめん!で、でも、これだけは!」

「そうですよね。どうせ僕なんてすぐに捨てられるだけですし!殿下なら、他の女がうじゃうじゃとよってきますしね!」

「す、少しだけだからね!それなら元気になってくれる?」

「はい!」

「良かった...それで、僕達が考えている計画は学園祭で行おうとしているんだ。まあ、詳細はその時までのお楽しみってことで我慢してくれる?」

「まあ、それなら許してあげます。」

「良かった...それより、明日でこのお店は閉まるんでしょ?アレンはどうするの?」

「僕はいつもの仕事に戻るだけですよ。」

「じゃあさ、僕のメイドにならない?僕のメイドになったら、いつも通り僕と話せるし、給料も上がるよ!どうかな?」

「すみません。私はある方に一生を使っても返しきれない恩があるので、それだけはできないです。ですが、プライベートであればたまに会えると思います。」

「そ、そう...まあ、でも、プライベートでは会えるんでしょ?」

「はい!もちろんです!」

「そっか...じゃあ、またね!」

「はい。またいらしてください。」

フェンデスが去ると、アランは何かが抜けたようになった。

「疲れた...」

「あんのクソ王子め。アランにあんなことさせるなんて。てか、プライベートで会う約束をしたわよね。私にはそんなこと言ってくれないのに...」

「しょうがないじゃん!営業なんだから。」

「じゃあ、私とも今度付き合ってくれる?」

「そりゃあ、もちろん。護衛だからね。」

「まさか、レベッカだけ抜け駆けするつもりはないのわよね?」

「レベッカちゃん?まさか私達を裏切るつもり?」

「あ、あれ?聞いてた?」

「じゃあ、みんなで行こっか!」

「なんか、私達抜きで盛り上がっているね。」

「俺らハブられた...」

「じゃあ、生徒会みんなで行きましょうか!」

「そうこなくっちゃ。」

「やっぱそうだよな!」

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