「マドンナとデート」
アラン達が教室に入ると、生徒がアランの周りを囲んだ。
「レベッカとはどういう関係なの?」
「特技とかあんのか?」
「好きな食べ物は?」
「彼女とか居るの?」
質問の多さにアランは昇天しそうであった。
「やあ、君たち、アラン君が困っているではないか。」
「で、殿下!」
アーサーがアランの前に現れると、一気に人が吸い込まれるようにアーサーに注目が向いた。
「良かった...質問にこたえてるとボロが出ちゃうから困るんだよね...」
「確かに、お前は嘘が下手そうだよな。」
アランたちが席に座ると、レベッカ達も後からやって来た。
「アラン、他の人達になにか言われた?」
「なんかたくさん質問されたけど、アーサーさんが全部引き受けてくれたよ。」
「本当?良かった...なんとか作れたよ。」
レベッカはポケットから一冊のメモ帳を出してきた。
「これは?」
「私特製のアラン個人情報よ。これがあれば大体の質問には答えられるわ。」
「ありがとう!これがあればあの人達の質問に怯える必要もないもんね!」
アランがページをめくると、たくさんのことが書いてあった。
「氏名はアラン・オブリ。歳は15歳。好きな食べ物はビーフシチュー。身長は160.3cm。体重69.7。父はエルファラ・オブリ。母はアリシア・オブリ。数ヶ月前にターナー家にやって来た。彼女はなし。好きなタイプは金髪で目が少し緑かかった人。嫌いなタイプは赤髪で、発育がよく、ブラコン。なにこれ。」
「質問された時はこれを使ってね!」
「まず、なんで僕の身長と体重、好きな食べ物まで知ってるの?」
「頑張って調べたから!」
「レベッカ?私も聞きたいことがあるんだけど。」
「ま、マリア!?もしかして、聞いてた?」
「ええ、もちろんよ。」
マリアはレベッカを掴み、廊下に引きずり込んでいった。
「行っちゃった...」
「それにしても、いろんなことが書いてあるな。」
へルックがページをめくっていくと、気になる情報が載せてあった。
「なあ、魔力量が1万5千って、本当なのか?」
「一応?魔力を制限しろってことなんじゃない?」
「つまり本当は違うと。」
「そうだね。大体500万ぐらいじゃない?」
「は?つまんない冗談だな。本当はいくつだ?」
「うーん、元々は10万くらいじゃない?」
「じゅ、10万!?まじで言ってんのか?」
へルックは驚きすぎて声を上げてしまった。
「静かに!聞こえちゃうでしょ!」
「す、すまん...」
皆の注目がこちらに向いたところに、助け舟がやって来た。
「皆さん席に座ってください。」
先生は皆を席に座らせると、ホームルームを始めた。
「私はこのクラスを担任するセルリン・フォン・メルクだ。これから一年間よろしく頼む。今から、皆の前で順番に自己紹介をしてもらう。では、最初はウォード嬢だ。」
マリアが前に立つと、自己紹介を始めた。
「マリア・フォン・ウォードだ。数日前までは用事があり、休ませてもらっていたが、今学期から復帰させてもらう。」
マリアの自己紹介が終わると、大きな歓声が上がった。
「やっぱマリアさん、かっこいいよな!」
「ああ!顔もスタイルも良いし!どうやったら近づけるかな。」
「マリアさん、どうしたらあんなスタイルになるんだろう。私もあんなスタイルになりたいな。」
「私もよ。後で聞きに行こう!」
そんな中、アランは戸惑っていた。
「へルック、あれ、本当にお姉ちゃん?」
「お前の前だとあんな感じだが、いつもはクール系だ。」
「へ、へぇー...」
(なんか違う!あれ本当に同一人物?僕の知ってるお姉ちゃんじゃないんだけど。)
それから生徒たちは順番に自己紹介をして行き、レベッカの番になった。
「レベッカ・フォン・ターナーです。久しぶりの学校なので、忘れていることや、わからないことがあるので、教えていただけると幸いです。よろしくお願いします。」
レベッカもまた、大きな歓声が上がった。
「クール系のマリアさん、清楚系のレベッカさん、お前はどっちが好みだ?」
「俺はレベッカさんかな。付き合ったら、すごく優しくしてくれそうじゃない?」
「確かに。でも俺はマリアさんかな。なんかエスコートしてくれそうだよな。」
「おいおい、まだもう一人残ってるじゃねぇか。」
教室の前に立っているのはベルージュであった。
「ベルージュ・フォンマルフィンです。気軽にベルって話しかけてね。よろしく。」
ベルージュもまた、男子からの人気はマリアやレベッカに負けないほどであった。
「確かに、ベルさんも良いよな。なんか、大人っぽい雰囲気出してるし。」
「なあ、聞いたか?こないだ、難攻不落って言われていたカイルを10秒で堕としたらしいぜ。」
「まじかよ。それでどうなったんだ?」
「カイルが告白したらあっさり断られたらしいぜ。噂じゃ数十人の被害者が居るらしいぜ。」
「そりゃやべぇな...」
生徒たちが盛り上がっていたところ、一人の生徒が前に出た瞬間、一気に静まり返った。
「私はアーサー・ハワードだ。この学校で生徒会長をやっており、第一王子でもある。なにか学校に不満などがあったらすぐに私に相談してほしい。すぐに解決してみせよう。」
アーサーの自己紹介が終わると、今までで一番の歓声や拍手が上がった。
そのすごさは窓が揺れるほどのものであった。
「生徒会のみんなはすごい人気だね。」
「そうだな。女子三人はこの学校で四天王って言われてるほどの美女で、アーサーは言わずもがなって感じだ。」
「へルックはどうなの?」
「そうだな。俺はって、順番が来ちまったわ。」
へルックが前に出ると、男子の目線が一気にへルックに集まった。
「俺はへルック・フォン・ログルだ。まあ、家庭事情は皆の知ってのとおりだが、よろしく頼む。」
すると、大きな歓声が上がり、男子からは熱い声が伝わってきた。
「へルック!お前の家庭事情なんか気にすんな!俺達は友達だろう?」
「そうだそうだ!今年も頼んだぞ!」
「おうよ!」
(すごい...へルックもすごく信頼が厚いんだな。)
へルックの自己紹介が終わると次はアランの番であった。
「えっと、アラン・オブリです。レベッカ様の召使として転入してきました。よろしくお願いしまひゅ...」
(あ...噛んじゃった!どうしよう!)
アランが前を見ると、大きな拍手とともに、一つの単語が聞こえてきた。
「可愛い...」
アランの意思とは別に、アランは多くの生徒達を引き寄せる存在となってしまった。
「自己紹介が終わったので、次は交流会を開こうと思う。各々席を立って良いぞ。」
メルク先生がそう言うと、皆は一斉にアランの方に向かってきた。
「なあ、好きな食べ物はなんだ!」
「彼女とか居るの!」
「好きなタイプは!」
「え、えっと、まず、好きな食べ物はビーフシチューで、彼女は居なくて、好きなタイプはわからないです...」
アランはとりあえず、レベッカから渡されたメモ通りに進めていった。
だが、段々答えるのが難しい質問が増えてきた。
「ねぇ、家族は今どこに住んでるの?」
「得意な魔術は?」
「魔術資格は?」
「え、えっと、その...」
そこに、一人の女子生徒がやって来た。
「あらアランちゃん、すごい人気ね。私ともお話してくれる?」
「あ!ベルージュさん!」
「気軽にベルって呼んでちょうだい。」
ベルージュがアランと話し始めると、生徒たちはざわついてきた。
「おい、ベルージュさんが早速動き始めたぞ。何秒で堕ちると思う?」
「7秒!」
「4秒!」
「2秒!」
「じゃあ、私はベルが負けるに賭けようとしよう。」
「で、殿下!?そ、それは流石に...」
「まあ、君たちは見てなって。」
アーサーの顔は余裕の笑みで埋まっていた。
「アランちゃんはさ、今まで何人と付き合ったの?」
「付き合った?一度もないですよ。」
「へ、へぇ...その顔なのに?」
「はい。別に街を歩いてても声はかけられませんし、あんまり女の人と話さないですから。」
「そうなんだ。じゃあ、今日は私がこの学校を案内してあげるよ。どう?」
「良いですよ。じゃあ、はぐれないように手をつなぎましょう!」
ベルはアランのあまりの積極さに驚いてしまった。
「う、うん...」
(な、なんで?私と二人きりって、結構ドキドキするはずなんだけど、手を繋ぐ?もしかして私が眼中にない?)
そのままアランは教室を抜け出し、ベルージュと一緒に学校を周りだした。
「ま、まずここは高等部の校舎よ。他に中等部校舎とホール、食堂、色々な場所があるわよ。今は近いところから周っていきましょう。」
「うん!」
(か、可愛い...お、落ち着け!私がこの子を堕とすのよ。私が堕とされてどうするの!)
アランたちが廊下を進んでいくと、大きな扉が見えてきた。
「あそこは魔術研究室よ。よく授業で使うから覚えておいてね。それからあっちは職員室。私達が一番言っちゃいけない場所ね。」
「確かに。二人で抜け出してきちゃったからね。」
「そ、そうね。」
それからしばらく廊下を歩くと、食堂に着いた。
「ここは食堂よ。朝来たからわかるよね。」
「うん。少し喉が渇いたね。ベルは何が飲みたい?」
「え、えっと、カフェラテが良いわ。冷たいのね。」
「わかった!買ってくるね!」
アランはカフェラテと、ミルクティーを買ってきた。
「はいこれ、カフェラテね。後これはおばちゃんがくれたクッキーだよ。」
「すごい!美味しそう!」
すると、アランはクッキーを取り出すと、ベルージュに向けた。
「はい。」
「え?」
「早く口開けてよ。」
「え!?」
ベルージュは言われるまま口を開けると、アランはクッキーを運んだ。
(え!?え!?な、なんで私がこんなことされてるの!?これじゃあまるで私が弄ばれてるみたいじゃない!)
ベルージュの顔はみるみる赤くかなっていった。
「どうしたの?顔が赤いよ?」
「だ、大丈夫よ。」
ベルージュはカフェラテを飲み、少し落ち着いたが、まだ心臓はバクバクと鳴っていた。
「カフェラテ、美味しい?」
「え、ええ。美味しいわよ。ここの食堂は王都のレストランに劣らない美味しさよ。」
「そうなんだ。ちょっとカフェラテ借りるね。」
するとアランはベルージュが飲んでいたカフェラテを飲んでしまった。
(嘘でしょ!?私が飲んだカフェラテをいとも簡単に...ま、まずいわ...この私が負ける。)
「じゃあ、次はどこに行く?」
「そ、そうね、中庭にでも行きましょうか。」
「うん!」
それからアランとベルージュは学校の庭園に来ていた。
「すごいね!あの噴水とか僕の住んでた街にもなかったよ!」
「そうね。ここは王国選りすぐりの職人たちが作ったからね。」
「少し歩き疲れたから休憩しようか。」
アランは近くのベンチに座った。
「ほら、ベルも座ったら?」
「う、うん。」
(な、なんで私が緊張してんのよ!何度も経験してきたはずなのに!)
「あの花綺麗だね。」
「あれは確かライラックね。」
「そうなんだ。あの花、ベルの髪色と同じくらい綺麗だよ。」
「え?」
(も、もしかして、告白!?)
「ねぇ、君、僕を恋に堕とそうとしたでしょ。」
「え?べ、別にそんなことは...」
「僕はね、相手が何を考えているのか大体わかるんだ。だからね、君が考えてたこともすぐに分かったよ。」
「じゃ、じゃあ、私を誘ったりしたのって...」
「からかっただけだよ。すごく反応が面白かったよ。」
「うそ...私は手のひらで転がされてたってこと?」
「そうだよ。」
「ねぇ、私と付き合わない?」




