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魔法使いの家出  作者: 羽良 凪都輝
第4章 王立魔術師学校マギア 前編
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「本性」

「あなたも気づいてるのでしょう?」

「お前のその顔、俺の本性を見抜いた顔だな。これで二人目だ。」

アランの目は鋭く、まるでへルックの全てを知っているような顔であった。

「あなたは今までずっと偽っていたのですか?あのおおらかな性格、自分を頭の悪そうに見せるのも。」

「だから、俺の部屋に来たのか。良いだろう、お前には教えてやる。俺の本性を。その代わり、お前の本性も教えろ。良いな?」

「良いでしょう。」

「俺は忌み子だった。父はれっきとした貴族だったが、女癖が悪かった。俺の母はメイドだったんだが、その間に俺が生まれた。当然、母はその責任を問われ自害、父は俺を家の邪魔者として、始末しようとした。俺を、魔王軍との戦場においていったんだ。だが、そこに一人の少年が助けに来てくれたんだ。それがアーサーだった。こんな俺にもちゃんと救いの手を差し伸べてくれた。だから、誓ったんだ。俺はアーサーを守ると。なにがなんでも。だから、使えるものなら何でも使う。アーサーを守るならこの命だって差し出せる。魔族に一生飼われたって良い。だから、俺は今まで嘘を語っていた。アーサーを守るために。相手に俺を無能と錯覚させるために。」

「なるほど。その言葉に偽りは無さそうですね。」

「俺は話したぞ。次はお前の番だ。そんな可愛い顔をしたって、俺には騙せない。俺はこの世の地獄を見てきた。どうせ、マリアやレベッカがお前に好意を寄せてることもわかってるんだろう?」

「そこまでお見通しですか。僕はね、人間であり人間ではないんですよ。みんなのように、遊んでも楽しくない。僕が誰に殴られたって、怒りの感情も、悲しみの感情も出てこない。恋愛感情だって現れなかった。僕が幸せと感じるのは2つ、一つは僕が戦闘狂であること。僕は戦ってる時が一番生きてて心地良いって感じる。2つ目は大切な人達と一緒にいる時。お姉ちゃんやレベッカ、ビクトリアやアリシア達と一緒に居るのはすごく楽しいし、嬉しい。だからこそ、その人達が傷つけられるのは、許せない。あの人達を守れるなら、この世界だって滅ぼすよ。確かに、お姉ちゃんたちが僕に恋愛感情を向けてるのはわかる。でも、僕は今、この瞬間、あの人達と一緒にいられるだけで良い。それこそある意味、恋愛感情なのかもしれないね。だから、別にみんながどう思って、どう接してても良い。僕の大切な人達は僕の家族みたいなものなんだ。」

「じゃあ一つ聞く、お前はなんで俺の本性を見抜けたんだ?その理屈なら、お前はただ大切な人達を守る、戦闘狂だ。」

「それは君と同じだよ。僕はね、大きな期待を背負って生まれた。期待が大きれば大きいほど、失望はさらに大きい。僕はあの五年間、僕のことを悪く言う人を何千と見てきた。君の周りの人達がするように。」

「お前は俺と同じか。良いだろう、ようこそ王立魔術師学校、マギアへ。頑張ったな、アラン。」

へルックはアランのことを抱きしめた。

なぜなら、アランの目には涙が浮かんでいた。

アランは感情がないわけではなかった。アランはあの五年間で感情を著しく失ってしまっただけであった。

「お前はよく頑張った。お前の気持ちはよく分かる。俺と同じで辛い環境で生きてきた。だから、今は泣いて良いんだ。今までためてきたのを全部吐き出せ。そしたら、少しは気持ちが楽になる。」

「...うん...ありがとう...」

アランはそれから数十分、へルックのもとで泣いていた。

アランが泣き止み、落ち着いた頃、へルックに一つの質問をした。

「へルックさんが言っていたもう一人の人って誰ですか?」

「へルックで良いよ。もしくはお兄ちゃんだな。俺は弟ができたみたいで嬉しいぞ!」

「本当?僕も嬉しよ!あのお姉ちゃんはあんまりお姉ちゃんぽくないしね...」

「そうだな。普段はあんなじゃなかったんだぞ。多分お前がいなくなって相当追い詰められてたんだろう。お前が死んだって言われてる日はすごかったぞ。何もかも投げ出して、死にたいって顔をしてたからな。流石にアーサーもかなり心配をしてたが、全く心に響いてなかったからな。」

「そうだったんだ...お姉ちゃんには悪いことしたね。」

「そうだな。後でちゃんと謝っとけよ。それで、俺の本性を見破ったやつだが、それは陛下だ。」

「国王が?あの人やっぱり腹黒だよね。」

「そうだな。陛下は一度大病を患ってただろう。」

「そうだね。でも、めっちゃピンピンしてたよ?」

「大病は嘘だったらしい。目的は王家を乗っ取ろうとする貴族たちを炙り出すためだったらしい。」

「え!?とんだ策士じゃん!」

「ああ。だから、陛下とお会いしたときにすぐに見抜かれたんだ。そうだ、俺も質問して良いか?」

「なに?」

「お前って魔力がないんだよね。なのに、どうやって戦うんだ?」

「あれ、もしかして聞いてないんだ。」

「なんかあんのか?」

「へルックだから教えるね。僕は別に魔力がなかった訳じゃないんだ。魔力をなくす呪いにかかってて、魔力がなかったらしいんだ。」

「つまり、今のお前は魔力があるってことか?」

「そうだよ。だから、魔術も使えるんだ。」

「そうなのか。じゃあ、明日模擬戦しようぜ!アランと戦ってみたいからな。」

「本当?良いよ。じゃあ、生徒会全員でやろうよ!」

「名案じゃん!そしたら、みんなに声かけてくるわ!」

そう言って、へルックは走って部屋を出ていった。

それと入れ違いで、ビクトリアとアリシアが来た。

「アラン様、荷物をお持ちしました。」

「ありがとう。それで、僕の話を聞いてどう思った?」

「え?」

「話し、聞いてたでしょ。」

「だから言ったじゃろ。アランにはすぐにバレるって。」

「えっと、それは...」

「どう思ったの?」

「私はあの話を聞いて嬉しかったです。アラン様の大切な人と言ってもらえて。」

「そう。じゃあ、この話は内緒だからね。アリシアもだよ。」

「わかっておるわ。妾の主はアランじゃからな。」

「じゃあ、これからの話をするね。まず、アリシアに関しては学校に居るのは秘密になってるから、普段はこの部屋で学校全体を監視してほしいんだ。」

「良いぞ。その代わりに、美味し物を持って来るんじゃぞ。」

「わかってるよ。それでビクトリアは、普段はこの学校の情報収集をしてもらえれば大丈夫かな。」

「わかりました。」

「じゃあ、そういうことだからよろしくね。」

それからアランはベッドに入り、眠りについた。

次の日の朝。

「ほら、アラン、起きろよ。お前のメイドがこの学校爆破しそうなんだよ。」

「ん...もうちょっと...」

「へルック様、こういう時は魔術を使うのです。」

ビクトリアはアランに向けて、炎を放った。

その瞬間、アランは起き上がり、防御結界を張った。

「あれ、もう朝?」

「そうですよ。今日から学校ですよ。ほら、服を脱いでください。着替えますよ。」

「ん。」

アランが服を脱ごうとすると、へルックが止めた。

「いやだめだろ。いくらメイドでも、女だぞ!ビクトリアと言ったか。ここは俺に任せて、アランの勉強道具とか準備してくれ。」

「わかりました...」

「ほら、アラン、さっさと着替えるぞ。」

「ん。」

アランはへルックに手伝われながら着替えた。

アランが着替え終わると、へルックはアランを連れて外に出た。

「ん、どこに行くの?」

「朝食だ。寮生だから寮に食堂があるのも当たり前だろう?」

「ん。」

アランはまだ目が覚めておらず、すぐに転んでしまった。

「しょうがねぇな。俺がおんぶしてやるから、早く行くぞ。俺は腹が空いてんだ。」

「ん。」

アランはへルックにおんぶされながら、食堂に来た。

「ねぇねぇ、へルック様がおんぶしてる子って転入生よね。」

「そうわね。でもなんか昨日と違くない?」

「確かに、なんか寝癖付いてるし、目は空いてないし。」

へルックがレジに着き、料理を注文していると、アーサーが合流した。

「アラン君とは仲良くなったかい?」

「当たり前だろう。こいつ良いやつだぜ。朝以外は。」

「そうだね。アラン君は寝ちゃってるし。」

「え?」

アランは二度寝をしていた。

「おいおい、起きろよ。頼むよ。じゃないと、あいつに...」

「噂をすると...」

マリアも合流した。

「へルック?あんたアランになにしてんの?」

「えっと、これは、その、アランが起きなくてだな...」

「そう。じゃあ、寝かしといてあげなさいよ。」

「まじかよ...」

へルックが料理を受け取ると、空いている席につき、アランも座らせた。

「ほら、アラン、起きろよ。マリアも来てんぞ。」

「ん。」

「ん、じゃあねぇんだよ。他の生徒も見てんぞ。」

「え!?」

アランが飛び起きた。

周りの生徒は皆同じ意見を持っていた。

「なんか、子供みたい...」

「やってしまった...」

「ほらアラン、スープが冷めちゃうわよ。早く食べよう。」

「うん。」

アランたちが朝食を食べてる間、皆は色々な噂をした。

「おい、なんで転入生が生徒会と一緒にいるんだよ!」

「レベッカ様の召使らしいよ。」

「まじかよ。良いなー。」

「あの転入生、可愛くない?」

「やっぱり?私もそう思う!なんか、子供みたいで可愛いよね!」

「彼女とか居るのかな?」

そんな中、二人の女子生徒がやってきた。

「おはよう、アラン。」

「ああ、レベッカ、おはよう。」

「レベッカ様でしょ。忘れないでよね。」

「そうだった、レベッカ様。」

「レベッカちゃん、趣味が悪いわね。」

「しょうがないでしょ。これも計画なんだから!」

周りの生徒がざわついた。

「ねぇ聞いた?あの転入生、レベッカ様って言ったわよ。もしかして、召使かなにかなのかな。」

「それなら生徒会と一緒に居るのも理由がつくわね。後で、レベッカ様に転入生のこと聞いてみようよ!」

「そうね。そしたら転入生と仲良くなれるわよね。」

「アラン君は早くも人気者だね。アラン君はもう教科書はもらったかい?」

「多分ビクトリアが取ってきてくれてます。そういえばまだクラスを見てなかったんですけど、何組かわかりますか?」

「私達生徒会は1組だね。この学校は成績順でクラスが決まるから、生徒会は必然的に1組になるんだ。」

「もしかして、生徒会って、頭良いんですか?」

「そうだよ。だから、アラン君も頑張ってね。実技は取れても筆記が取れなかったらだめだからね。」

「まずい...」

「そろそろ時間だね。じゃあ、また教室で会おうか。」

「はい。」

アランたちは朝食を食べ終わると、授業の準備をして、教室に向かった。

「へルック、今日は何するの?」

「今日はな、みんなの自己紹介と、交流会だ。」

「そうなんだ。」

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