「約束」
「君の敗因は僕を怒らせたことだね。」
ベルグールの体は灰にもならず、全てを焼き尽くしていた。
アランは戦闘が終わると、外していたカーチャーをつけ、魔力を制限した。
「結局は僕も人間か。何万もの命を奪い、大切な家族がいる者の命も奪った。覚悟を決めていたはずなのに。結局自分の番になったら悲しみ、怒る。人間はなんて儚いものなんだろう...」
「アラン!」
マリアたちが駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん!」
アランとマリアは抱き合い、二人とも涙を流していた。
その様子を見て、アリシアは笑っていた。
「くく、ふっ、ふはははは!」
「ど、どうしたの?ほら、早くアランのところに行こうよ!」
「すまぬすまぬ。この感情をもう一度味合う事ができるとは思わなくてな。」
「感情?」
「ああ。妾は本気で戦って負けたことは一度しかない。その戦いは神竜と戦ったときじゃった。あの戦いは面白かった。妾が初めて恐怖を感じ、初めて本当の興奮を味わった。まあ、結局のところ戦いにもならなかったじゃがな。」
「どういうこと?」
「つまり、妾の計画はかなったということじゃよ。妾は妾より強い者を欲していた。そして、その夢はかなったのじゃ。」
「そ、そうなの?ま、まあ、それなら良かったね...ほら、さっさと行かないとマリアに取られちゃうわ!」
レベッカたちもアランたちのところへ行き、全員で抱き合った。
それから数分後...
「さあ、彗星の魔法使いよ。話をしようじゃないか。」
「はい。」
「今回の決闘だが、アーサーの勝ちだ。」
「はい!?陛下!?どこからどうみてもアランの圧勝でしたよね!」
「それは事実だ。だが、ルール上、防御結界を壊してはならないとあったはずだ。だが、そのルールを彗星の魔法使いは破った。つまりは、ルール違反のため失格ということだ。」
「え!?もしかして、結界、壊してました?」
「そうだな。ちゃんと壊していたぞ。」
「で、ですが、陛下!アランは魔王軍幹部、ベルグールに勝利したんですよ!」
「では言わせてもらうぞ。わしの目の前でここら一帯を吹き飛ばし、おまけに禁術祭りだ。禁術は一度でも使ったら死刑は免れない。それを数十回も使った。わしがいる目の前でこんな破茶滅茶なことをするとは、国王に対しての侮辱罪も追加しても良いと思うのだが。」
「そ、それは...」
「さあ、災禍の炎帝よ。これでわしと彗星の魔法使い、いや、エドワード・フォン・ウォード、どちらが有利かわかっているな?」
その瞬間、アランがピタリと止まった。
「国王陛下?何故僕がエドワードだと?」
「君の顔はよく似ている。君の両親を知っている者ならば見抜ける。」
「それで、僕をどうするおつもりですか?父上に報告でもするのですか?」
「私の約束を覚えているかい?」
「決闘の約束ですか?確か、勝ったほうが相手に一つ命令できるんでしたよね。」
「そうだ。だから、わしはアーサーの代理として指示を出す。彗星の魔法使い、アランよ。君をこの国の第一王子であり、我が息子、アーサー・ハワードの護衛を命じる。」
「え?」
「え?」
皆の動きが止まってしまった。
「ち、父上?そ、それはどういうことですか?」
「そのままの意味だ。お前の彗星の魔法使いを護衛につける。」
「国王陛下!アランは私の護衛ですよ!それはどうするつもりなのですか!」
「そのことについても話したいことがある。まずは一度王宮に戻ろう。崇高の魔術師よ、馬車はまだ残っているか?」
「なんとか残っております。」
「そうか。なら、王宮に戻るぞ。」
こうしてアランたちの決闘は終わった。
* * *
魔王軍王都。
「魔王様、ベルグールが敗北しました。」
「ベルグールが?魔王軍の中でも屈指の実力者だぞ。」
「え、ええ。ですが、使い魔の報告によると、例の魔法使いに消し炭にされたと。」
「彗星の魔法使いか。あれは少々厄介だな。とりあえず、一度軍の進軍は見送ろう。かなり戦力を削られてしまったからな。」
「承知しました。」
* * *
アランたちは王宮に来ていた。
「では改めて話をしよう。まずは君のことについてたくさん聞きたいことがある。」
「...」
「アラン君?」
「...」
「エドワード?」
「...」
ソルブがアランのことを揺さぶると、アランは寝ていた。
「寝てる...すごいな、わし一応国王なのじゃが。」
「す、すみません!私の弟がとんだご無礼を!」
マリアは土下座をして詫びた。
「まあ、良い。アラン君も疲れているのだろう。なにせ、魔王軍幹部を一人で相手したのだからな。それぐらいは許そう。」
「陛下、私が説明してもよろしいでしょうか。」
「君はアラン君のメイドかい?」
「はい。私はアラン様のメイドをしているビクトリアと申します。」
「そうか。なら君に聞こう。まずはアラン君が使っていた流派だ。あれは王家に代々伝わる英雄ラファエルが使っていた流派だ。この流派は王家の者にしか伝わっていないはずだ。なのに何故アラン君が使えているのだい?」
「それは、アラン様がラファエル様の弟子だからです。」
「へ?」
皆の動きが止まった。
「アラン様は英雄ラファエル様の弟子です。アラン様はウォード家を出られてから10年、ラファエル様のもとで修行を積んでおられました。」
「はい?」
「英雄ラファエルが?すまぬ、英雄ラファエルはもう千年前の話だ。なのにどうして生きているのだ?」
「それはラファエル様がエルフだからです。エルフは魔族によって滅ぼされました。その生き残りとしてラファエル様は同族の敵を打ったということです。そして、その弟子がアラン様ということです。」
「つまり、アラン君は英雄ラファエルが育てた弟子ということかい?」
「はい。そういうことになります。」
皆は驚愕していた。
「あのアランの強さは英雄ラファエルが育てたからってこと?」
「部分的に。確かにラファエル様の指導はかなり厳しかったですが、アラン様はそれ以上に努力をし、あの力を手に入られました。」
「そうだったのね...それで、陛下、私の護衛はどうするおつもりですか?私は護衛対象として、アランをそばに置きたいのですが。」
「そのことだが、レベッカにはマギアに復帰してもらう。そして、アラン君にもマギアに入ってもらう。」
「それって、つまり、アランには学校に入ってもらい、私と殿下を護衛してもらうということですね?」
「そうだ。確かアラン君の歳は14歳だろう?」
「いえ、もし4月から入るとなると、15歳になります。その時に飛び級として入ればよろしいかと。」
「そうか。もうすぐ4月になるから、良いだろう。後は、災禍の炎帝、マリアよ、君には一つ仕事を与える。」
「仕事ですか!?で、でも、私もアランと一緒にマギアに行きたいです!」
「仕事はアラン君の補佐だ。いくらアラン君とはいえ、大学レベルの勉強は追いついていないだろう。だから、君も一緒にマギアに復帰し、放課後などに勉強を教えてやれ。」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「また、この任務は国家機密とする。そのため、アラン君の存在も、マギアにはただの転入生と伝える。良いな?」
「つまり、学校では私達の関係はバレてはいけないと?」
「ああ。まあ、マギアに入る名目としてレベッカの付き人としよう。良いな?」
「わかりました。」
「陛下、アーサーがかなり前にアランのことについて気になっていたようですが、それはなにか関係しているのですか?」
「君は魔眼というものを知っているな?」
「はい。魔眼は魔力を見れる目ですよね。私は持っていませんが。」
「私達は代々、魔眼を持っているんだ。一度だけわしはアラン君と会ったことがあるんだが、その時魔力のオーラが見えたんだ。魔力がないと言われていたのに。」
「え?」
「つまりじゃな、アラン君は魔力があったのにも関わらず、魔術が使えていなかったのだ。」
「なるほど。だからアランがエディとわかってもあまり驚いていなかったのですね。」
「そうだね。」
「そもそも、エドワード君の顔はあの可愛いままじゃないか。」
「良いじゃない!この完璧な顔が良いんでしょ!」
「でた、ブラコン。」
「本当に君たちは仲が良いね。」
「陛下?いくら陛下でもそれは怒りますよ?」
「父上!このクソガキと一緒にしないでください!」
「まあまあ、二人ともアラン君のこと、頼んだよ。」
「わかりました。しっかり護衛されてきます。」
「アランの補佐は任せてください。」
「ビクトリアよ、アラン君にこのことを伝えといてくれるな?」
「伝えるも何も、最初から起きいましたよ。」
ビクトリアが言うと、アランは目を開けた。
「ビクトリア!もうちょっとだったのに!」
「アラン!?起きてたの!?」
すると、ソルブが笑い出した。
「本当に君はローラの子だ。わしが初めてローラと会った時も全く同じだ。」
「では、陛下、私達はマギアへの復帰の準備があるので、そろそろおいとまさせてもらいます。」
「そうだね。じゃあ、アラン君、僕の息子を頼んだよ。」
「了解です。」
それからアランたちは入学準備に入った。
「マギアは寮生ってことはわかっているわよね。」
「うん。確か高等部から寮生なんだよね。」
「アランが必要なのは服ね。それ以外は私が全部用意するわ。」
「服って、このロロローブじゃだめ?」
「ロロローブ?まあ、どんな名前でも良いんだけど、学校生活は基本制服だから、今から服を仕立てに行くわよ。」
「それならもう手配しております。」
ビクトリアが外から戻ってきた。
「え?でも、マギアの制服って仕立て屋フランシスでしか仕立ててもらえないはずじゃ...」
「フランシス?フランシスさんのこと?」
「フランシスさんのことを知っているの!?フランシスさんはこの王都で一番の職人だったのよ!」
「え!?そうなの?」
「でも、どうして許可が降りたんだろう。アランのことはまだマギアには伝わってないはずよ。」
「それはフランシスさんが校長に掛け合ってくれたそうです。なので、明日には服が届くそうです。」
「服が届く?まさかフランシスさんに仕立ててもらったの!?」
「はい、そうですが。」
「嘘でしょ!?フランシスさんの仕立てた服は神器と同じくらいの値段がするのよ!」
「え!?神器と同じ値段!?てことは、ビクトリアのメイド服も...」
レベッカがビクトリアの服をよく見ると、刺繍を見つけた。
「あ!刺繍がある!本物じゃん!」
「刺繍?」
ビクトリアの服には金色の刺繍がしてあった。
「フランシスさんの作る服にはこの刺繍があるの。この刺繍はフランシスさんにしか作れないほど緻密なの。だから、偽装しようとしても作れないの。」
「そうだったんですね。だったら、アラン様のあの服も刺繍が入ってるということですね。」
「あの服?」
「ちょっとまっていてください。」
アランとビクトリアが少し席を外した。
数分後...
「すごい!アラン、かっこいい!」
アランは10歳の誕生日にもらった礼服を着ていた。
「本当?良かった!僕これ着こなせるかわかんなかったからね。」
すると、レベッカは奥からなにか持ってきた。
「ちょっと待っててね。」
レベッカが何かを手に持っていた。
「それはカメラですか?」
「ええ。あなたが前に使ったやつよ。お父様にお願いしてもらったの。」
レベッカがシャッターをきると、写真が出てきた。
「わぁ!これ一生の宝物にするわ!」
「レベッカ様?私にも一枚もらえますか?」
「良いわよ。後で模倣の魔術で複製しとくわ。」
「ありがとうございます。」
「あの、勝手に僕の写真を複製しないでくれない?」
二人には聞こえてなかった。




