「覚醒」
「君は僕の家族に手を出したね?」
* * *
アランが起きる少し前...
「よお、アラン。」
「...え?」
アランは精神世界に来ていた。
「初めてじゃないか?魔力切れを起こしたのは。」
「魔力切れ?そんなに魔力は使ってないよ?」
「お前は今呪いにかかってるんだ。だから、魔力の消費も激しく、身体能力も落ちていた。」
「呪い?また?」
「ああ、だから誰かが呪いを解くか、自分で呪いを解くかしないといけない。」
「え!?じゃあ、僕はずっと待ってなきゃいけないの?」
「そんな時間はないな。今、お前の姉貴とメイドが魔族と戦っている。」
「嘘!?」
「お前が自分で呪いを解いて加勢しないと負けるかもしれないぞ。」
「じゃ、じゃあ、呪いを解く方法を教えて!」
「呪いはいわば縛りだ。だから、その縛りを解くには、その呪いを凌駕するほどの力を使わないといけない。」
「つまり?」
「魔力を一点に集中するんだ。お前の中には大量の分身がいる。だから、その分身の魔力も集めないとならない。」
「え!?それって五百万ぐらい集めないといけないの!?」
「そうだ。まあ、精神世界では時間の流れがかなり遅いから今から始めたら、精神世界で一ヶ月ぐらいでできるようになるだろう。」
「一ヶ月!?」
「お前は家族たちを守りたくなないのか?」
「家族...守りたい!仲間を守りたい!」
「じゃあ、今から頑張れ。」
「わかった!」
それから精神世界で修行が始まった。
「集中するんだ。目をつぶり、魔力を自分の中の一点に集めるんだ。」
「はい!」
アランは目をつぶり、魔力を集めていた。
最初はかなり順調であったが、壁にぶつかってしまった。
「あれ?魔力が分散する...」
「それはお前の魔力操作が下手だからだ。膨大な魔力を集めるには卓越した魔力操作が必須だ。まあ、何度も失敗して学ぶんだな。」
「はい!」
それから精神世界で数日がたった。
「あ!」
「どうした!?」
「魔力が集まってきたよ!」
「まじか!思ったより上達が速いな!その調子だ!集中力を切らさずに頑張るんだ!」
「はい!」
それから一週間が経った
アランは自分の中にある魔力の半分ほどを一度に集めることができるようになった。
だが、そこからあまり集めれなくなっていた。
「あれ?何度もやってもできないよ?」
「そうだな。もしかして、人間の限界に来たのか?」
「限界?」
「ああ。人間が処理できる魔力の量には限界がある。多分、それに達したのだろう。」
「え!?じゃ、じゃあ、どうするの?」
「お前、分身の脳と自分の脳を融合させることはできるか?」
「え?うーん、理論的にはできるとは思うけど、やったことないからわからない。そもそも、今まで使っていた体の中に分身を作るのは、自分を細胞ぐらい小さくして体に入れてるから、それを自分の脳にリンクしないといけないんだよね。多分そうすると、分身がその反動で壊れちゃう気がするな。」
「そうか...じゃあ、魔眼を覚醒するしかないか。」
「魔眼を覚醒?」
「ああ。魔眼を覚醒すると神眼になる。神眼は魔力の流れが見えたり、数秒先の未来を予知できたり、色々できるんだが、その中に自分の脳の限界を引き上げることができるんだ。」
「それってすごいじゃん!」
「ああ。だが、その覚醒には厳しい条件がある。」
「条件?」
「
「それは、激しい心のゆらぎだ。楽しいという感情でも、悲しいという感情でも良い。爆発的な感情が覚醒の条件だ。」
「それで、どうするの?」
「今から外で起きていることを見せる。お前はいつもは温厚だが、家族のことになると、感情的になるよな。」
「そ、そうかな?」
「ああ。だから、お前には悪いがこれを見せる。」
すると、精神世界に一つの映像が映し出された。
「お姉ちゃん!」
そこにはベルグールと戦うマリアが映し出されていた。
その様子はかなり劣勢で、全身傷だらけであった。
「残念だな。お前はこんなに強くなったのに、家族一人守れないなんて。」
「僕が呪いにかかったから...」
「ああそうだ。お前が注意していれば呪いにはかからなかった。お前の姉貴をこんな姿にはさせなかった。」
「助ける力はあるのに、その力が使えないなんて!」
「そうだな。今のお前はただの無力なガキだ。」
「そんな!」
「さあ、お前はどうしたい?マリアを助けたいか?」
「助けたい!」
「でも、このままだとマリアは殺されるぞ?お前が弱いから。」
「弱いから...」
その瞬間、アランの心に限界がきて、泣き出してしまった。
「泣いても意味はないぞ。」
「...」
(この調子だと、もう少し覚醒には時間がかかりそうだな。なら、あれを使うか。)
「なあ、このままだとお前の姉貴はお前の母と同じように”お前のせい”で死ぬことになるぞ。」
「僕のせい...」
その瞬間、アランの心は限界に達した。
それと同時に、アランの魔眼が覚醒を果たした。
「よく頑張ったな。もう大丈夫だ。お前にはわれがついてる。だから、もう少し頑張ろう。」
ディンスターはアランを抱きしめた。
「頑張る...」
アランは神眼を手に入れた。
「大丈夫か?今は無理しなくても良いんだぞ?」
「大丈夫。早くみんなを助けないといけないから。」
「わかった。今は魔力を貯めるのに集中するんだ。」
「はい!」
それから数日がたった。
「もう少しでできそうだな。」
「はい。」
アランは何度も失敗した。
そして、ついに。
「お!呪いが!」
ついにアランは呪いを解くことに成功した。
「よし、じゃあ行って来い!」
「はい!」
* * *
「呪いが解けた?私の呪いが?」
「マリア様、私達は引きますよ。」
「え?で、でも、アランはまだ魔力が...」
「ふっ、お前みたいなガキに何ができると?」
アランのフードは脱げていた。
「僕の家族に手が出したこと、わかってるよね?」
アランの声からは怒りがにじみ出ていた。
「君は自分が人間だとわかっているのか?私は魔王軍幹部のベルグールだぞ?」
「そう。だから何?」
「だ、だから?貴様、口の聞き方に気をつけろ!アリシア様にもタメ口を使っていたな。私が直々に殺してやる。」
「殺されるのは君の方だ。」
すると、ベルグールは大笑いをした。
「お前が私を?面白い冗談を言うね。私を倒すのなら神竜でも連れてくるのだな。」
「そう。」
アランは自身に制限をかけていたカーチャーを放り捨てた。
その瞬間、アランの魔力のオーラーが膨れ上がり、決闘場全体を飲み込んだ。
「あ、あり得ない!こんな魔力は神竜しか!」
「さあ、掃除の時間だ。」




