「おかえり」
「レベッカ!お土産を持ってきたわよ!」
「マ、マリア!?ど、どうしてここに!?」
マリアの突然の来訪にアランとレベッカは驚いた。
(ど、どうしよう!レベッカは僕がウォード家ってことを知らないし、お姉ちゃんにバレたらそれはそれでまずいし!どこか逃げ道は!)
アランは見渡したが、部屋に逃げ道はなかった。
「あら、お客さん?こんにちは。私は災禍の炎帝、マリア・フォン・ウォード、レベッカの親友よ。あなたは?もしかして、レベッカの新しい護衛の人?」
「は、はい...アランと申します。」
「そう!レベッカをいつも守ってくれてありがとね!本当は私が守ってあげたいんだけど、それは議会が許さなくてね。」
「そ、そうだ、アランは用事があるんじゃなかったかしら!」
「あ、あー!忘れてた!じゃあ、マリアさん、レベッカをよろしくお願いします!」
「はい!バイバイ!」
アランは部屋から脱出することに成功した。
(ど、どうしよう、顔を見られちゃった...でも、僕だとは気づいてなかったし、大丈夫でしょ。とりあえず、街で暇をつぶすか。)
アランは街に出かけることにした。
その頃、レベッカはマリアが買ってきたお土産を食べてきた。
「これはね、北部伝統のお菓子なんだって!美味しいでしょ!」
「うん!すごくおいしい!でも、マリアはなんで急に来たの?」
「それは来週、エディの誕生日でしょ?」
「あ、ああ!確かにそうだね。誕生日は毎年エディを探すんだよね。」
「そうよ。エディは絶対に生きてる。だから、私が生きている間は毎年探して、いつか見つけないと!」
マリアは元気に言っていたが、どこか強がっているようでもあった。
「そ、そうだね。それで、北部の様子はどう?」
「それがね!強い魔術師が魔王軍を一人で撃退したらしいんだよ!レベッカは知ってる?パーゲイティオって。」
「パーゲイティオ?」
「やっぱ知らないか...パーゲイティオはね、素性がわからない冒険者なんだけど、すごく強いんだって。ウェルネスさんによると、国を滅ぼせるぐらい強いって言ってたんだけど、流石にそれは誇張だと思うの。それでも、ウェルネスさんがそう言うんだから、すごく強いと私は思うの。いつか戦ってみたいわ!」
「ウェルネスさんって、崇高の魔術師様?」
「そうよ。そういえば、その人は確か、彗星の魔法使いって言ってた気がするわ。ほら、5年前に私達を助けてくれた人よ。覚えてる?」
「あ、ああ、あの人ね...」
(覚えているわよ!だって、私の護衛であんたの弟じゃない!)
「だからね、今ギルド長に会いたいってお願いしてるんだけど、なかなか取りあってくれないんだよね...」
「そ、それは大変だね...」
それから、数時間、マリアとレベッカは色々なことについて話し、二人は充実した一日を送った。
そして、マリアが帰る頃には夕方になっていた。
「そろそろ私は帰るわね。周りには気をつけてね。意外と近くに嘘をついてる人がいるかも知れないからね。」
「わかったわ。気をつけておく。」
「見送りは大丈夫よ。それこそ、そこで狙われたら大変だわ。」
「たしかに...じゃあ、またね。」
「ええ。」
レベッカはその場でマリアを見送った。
その頃、アランも屋敷の玄関に来ていた。
「もう帰ったかな。」
アランがレベッカのもとに向かうと、途中で帰るマリアに遭遇した。
アランが軽く会釈をすると、いきなりマリアはアランを連れて、近くの部屋に入った。
「え!?ど、どうしたんですか!?」
すると、マリアはアランに抱きついた。
「おかえり、エディ...」
「やっぱり気づいてた。やっぱだめか...でも、まずは、ただいま。お姉ちゃん。」
アランとマリアは二人で抱き合い、どちらも号泣していた。
それから数十分が経ち、レベッカが自分の部屋に入ろうとしたところ、異様な光景が広がっていた。
「あっ...そっか。まあ、良かったね、マリア。」
アランとマリアは泣きつかれ、その場で寝ていた。
それから、数時間が経ち、アランとマリアの二人の説教が始まった。
「感動の再開は良いんだけど、なんで私の部屋でするの!」
「そ、それは...」
「どうせ、マリアがアランのことを見つけて連れ込んだんでしょう?」
「うっ、全部お見通しじゃん...」
「そりゃ、親友だからね。それで、今までの話はしたの?」
「えっと、それは...」
「てかやめてくれない?いい加減二人とも離れてくれない?見ててイライラする。」
アランはマリアの膝の上に座っていた。
「だ、だって、十年ぶりの再会だよ?これぐらいは許してよ!」
「それでもだめ!少なくても私の前でやらないで。」
アランはマリアの上から降りた。
「それで、アランていうのは偽名?」
「そうだよ。今はアランって名前で生活してるんだ。」
「そう。じゃあ、私もエディのことはアランって言った方が良いわよね。」
「うん、そうして。てか、なんでレベッカは僕のことについて知ってるの?」
「そりゃ、一度会ってるからよ。あんたのメイドが私と会った記憶を消したからね。アランが覚えてなくても、私は覚えているわよ。」
「ビクトリアが僕に精神干渉魔術を使ったの?後で詳しく聞かないと。」
「精神干渉魔術!?それって禁術よ!アラン、そのメイドを今すぐ連れてきなさい!」
「連れてきたらどうするの?」
「殺す。」
「だめ。殺すならなおさら。とりあえず、僕が家出してからの話をするね。」
「お願い。お姉ちゃんもそれは聞きたい。」
「まず、家出してすぐに、ビクトリアに拾われて、底からドルディンクにある山奥の屋敷で十年間育てられたの。」
「それで?」
「それだけ。」
「アラン?嘘つかないで。マリアにはまだ話すことがあるでしょう。」
「話すこと?まさか、アラン、なにかひどいことでもされたの!?」
「ち、違うよ。部分的に。」
「なんて言った?」
「いや、なんでもない。それでね、これを見てほしいの。」
そう言って、アランは手から光を出した。
「これって...」
マリアの動きが止まった。
「魔術だよ。魔術が使えるようになったの。あと、魔法も。それだけだよ。」
「アランが魔術、エディが魔術、待って、もう一度言って?」
「だから、魔術が使えるようになったの。」
「アランが魔術?ん???????」
「僕はなにかの呪いにかかってて、魔力と魔術が使えなかったらしいの。だから、ビクトリア達がそれを解呪してくれて、魔術を使えるようにしてくれたの。」
「つまり、アランは魔術が使えるの?」
「だから、使えるって!さっきから言ってたんだけど。」
マリアは涙を流しながら抱きついた。
「良かった...エディはこれで嫌な思いをしなくて済む...」
「泣かないでお姉ちゃん。僕なら大丈夫だから。」
「でも、私のせいで、私が魔術を使うから、アランが家出して...」
「え?違うよ。僕は父上に呆れて、生き残るために家出したんだよ。僕は別にお姉ちゃんがどうとかはないよ。」
「どういうこと?」
「父上は、僕が魔術ができないから殺そうとしたんだ。だから、家から抜け出したの。」
すると、マリアの怒りは爆発した。
「あんのクソ野郎、ぶっ殺してやる!」
「お、お姉ちゃん、落ち着いて!僕はもう怒ってないから!てか最初から怒ってないから!」
「でも、でもでも!」
「確かにエドワード・フォン・ウォードはしんだ。でも、新しくアランという人間が生まれた。それで良いじゃん。」
「そうよ。マリア、一度頭を冷やしなさい。もし、アランがバーナード殿にバレたらそれこそ、アランが殺されるわよ。」
「確かに...」
「だから良い?これは私達だけの秘密よ?」
「わかったわ。」
「そうだ!アラン、明日は空いている?」
「空いてるけど、どうしたの?」
「良かった!アラン、明日はお姉ちゃんとデートよ!」
「デート!?だめよ!アランは私の護衛よ!」
「良いじゃない。その、メイドとか言う人に任せておけば。」
「たしかに、ビクトリアなら大丈夫か。レベッカ、お願い!久しぶりにお姉ちゃんと一緒に過ごさせて!」
レベッカは考えに考え抜き、答えた。
「しょうがないわね。一日だけよ?良いわね?」
「うん!」
「今日はもう遅いから、マリアもうちに泊まっていって。」
「本当!?ありがとう!部屋はいらないから!」
「へ?」
「私はアランの部屋で寝るから!じゃあ、行くよ!」
「ちょちょ!」
レベッカの静止も聞かず、マリアは連れて行った。
「行っちゃった...エレン!」
「はい、お呼びですか、お嬢様。」
「計画に、大きな邪魔が入ったわ。マリアがアランのことを知ってしまったわ。」
「そうですか...それは大きな障害ですね。マリア様は十年間アラン様と会わず、ブラコン化がさらに進んでしまいましたからね。」
「ええ...マリアなら『アランはもう弟じゃないから結婚する!』とか平気で言いそうよね...」
「そうですね。私達も早急に手を打たなければ。」
「そうね。明日は作戦会議よ。」
「わかりました。」




