「密命」
ボーディアムに勝利し、アランの任務は達成された。
「これで、任務は達成かな。でも、もう少し強いと思ったんだけどな、本気を出したかったけど、出せなかったな。でも、まだ幹部はいるだろうし、楽しみにしておこ!」
アランが飛行魔術を解き、城壁に着地すると、皆が駆け寄ってきた。
「さすがじゃな。あのボーディアムを無傷で倒すとは。妾でも難しいぞ。」
「私の助手になってくれないか!そしたら、私の仕事も魔術の研究も捗る!」
「それはお断りします。」
「意外と、声は高いんだね!君はアラン君といったかな?」
アランは口を滑らしてしまった。アランは慌てて手で口を抑えたが遅かった。
「いつか、君の素顔を見てみたいものだ。」
「それより、アラン、この状況をどうしてくれるんだ?」
シーザスたちが地上を見ると、酷い有様であった。至るところに、穴が空いており、周りの木々は全て焼き尽くされていた。おまけに、地上は魔物や魔族の死体で埋め尽くされていた。
「魔王軍を撃退するのに、地上を破茶滅茶にしなかったのは礼を言おう。だがな、お前と幹部の戦いで城壁まで被害が来てんだよ!」
地上だけではなく、城壁も被害にあっていた。
特に、エレクトロニックランスの二次被害で、城壁にかなりの数の穴が空いていた。
「そ、それは...」
「まあまあ、友よ、落ち着き給え。お前の睡眠時間で魔王軍の幹部を倒せたと思えば、安いもんじゃないか。」
「ウェルネス!貴様!俺のことなどお構い無しか!」
「当たり前だ。君の残業など、幹部を倒すよりは楽だよ。」
「お二人とも、ギルド長と将軍が喧嘩をしているのですか。早く戻りますよ。」
ビクトリアの静止で、二人の喧嘩は収まった。
その後、ウェルネスは魔王軍の死体を処理するためにアランたちと別れた。
アランたちは、今回泊まる宿に来ていた。そこには、メイドのエレンもいた。
「レベッカ嬢には2つの話があるって言ったな。」
「え、ええ...」
「今日から新しい護衛がつく。名前はアランだ。」
「え!?聞いてないんですけど!」
「これはギルドからの依頼であり、国王からの密命だ。逆らったら、国外追放だ。」
「それでも嫌です!旅ができないじゃないですか!」
「そもそも、お前が魔王城を壊さなかったらこうはならなかったんだぞ!お前が壊したせいで、魔王軍はブチギレ、士気は爆上がり、おかげで我々の戦線は後退している。レベッカ嬢はこの国でもかなり重要な立ち位置だ。ターナー商会の次期商会長ともなると、魔王軍も狙ってくる。だから、お前に護衛の任務が出たんだ。」
「因果応報じゃな。」
「だってだって、魔王城を壊せば、少しは任務がすくなると思ったんだよ!」」
「それでだ、レベッカ嬢がこれを承認したら、アランが護衛につく。だから、あの戦いを見せたんだ。お前を護衛するやつは国を滅ぼすことができる。実際、魔王城を一人で破壊した男だ。黒炎や他の禁術だって使う。そんな奴が護衛をするんだ。」
「つまり、何が言いたいんですか?」
「怖くはないか?君の横には常に国を滅ぼす人間がいる。俺だったら、怖いな。」
「そうですね、確かにアランの強さと残酷さには驚きました。少し怖いとも思ってしまった。でも、アランは優しい人です。決して裏切るようなことはしません。私を殺そうとはしません。だから、護衛をお願いしたいです。」
「そうか。なら、アランにはこの任務を受けてもらう。任務の期間は、魔王軍との抗争が落ち着くまでだ。お前がつけた火種だ。しょうがないと思え。」
「うっ...はい、わかりました...」
「これからよろしくね、アラン!」
「頑張ります...」
「妾は嬉しいぞ。レベッカの出すご飯はとても美味いからな。」
「私は、アラン様の命令に従います。」
「わかった。じゃあ、とりあえずほとぼりが収まるまでね。」
「うん!」
それから、アランの任務が始まった。
次の日。
「今日は、王国軍と商会の取引があるの。そこに着いてきてくれる?」
「うん。僕は護衛だからね。」
「相手は、あの場にいた崇高の魔術師だから、フードを被るか何かをしといたほうが良いわよ。」
「わかった、気をつけとくよ。」
アランたちは昨日いた、王国軍の施設に来た。
「今日はあなた達と取引に来ました。」
レベッカの前にはウェルネスが座っていた。
「今日の取引内容は食糧についてですよね。」
「ええ、あなた達王国軍は、魔王軍に補給路を絶たれ、食糧が底を尽きかけていると聞きます。」
「そうだ。魔王軍は去ったが、それでも兵士たちはかなり疲弊し、限界寸前だ。なるべく早く食糧が欲しい。それも、大量に。」
「それで、取引内容ですが、王国軍の兵士は現在4万弱。なので、兵士4万人分を一週間に一度届けるのでどうでしょう。」
「4万人分!?そんなによろしいのですか!?」
「ええ。準備はできています。後はあなた達がどれだけ金を出せるか、それだけです。」
「そうだな。兵士4万人分を月に4回、そうすると金貨8000枚でどうでしょう。」
「14000枚。」
「14000枚ですか。それは何故ですか?」
「兵士の食糧1週間分を一度に運ぶのには、大量の馬車が必要です。私達の商会が持っている馬車を全て使っても、兵士2万人が限度でしょう。なので、足りない分は外部に委託します。その依頼料、手数料、そして私達の利益を考えると14000枚が妥当です。」
「そうですか、では13000枚というのはどうでしょう。」
「そうですね、まあ良いでしょう。それでは取引成立ということで。最初の食糧は3日後ぐらいでしょう。」
「わかりました。それまではこちらでどうにかします。それより、一つ聞いてもよろしいですか?」
「何でしょう。」
「なぜ、そこに彗星の魔法使い殿が居るのですか?」
「私の護衛です。」
「護衛!?私の誘いには応じなかったのに!?ずるいですよ!」
「だめです。私のアランです。ちょっかいは出さないでくださいね。」
「わかりました...今度商会に少し顔を出すか。」
「なにか言いました?」
「いえ、何も。」
「そうですか。では、私達はこれで。」
アランたちは取引が終わり、宿に戻ってきた。
「レベッカ様は取引がお上手ですね。狙っていた金額より少し高く利益が出るのでは?」
「あら、ビクトリアはわかっていたのね。」
「はい。崇高の魔術師様が言っていた8000枚は普通であれば、妥当な金額です。ですが、それに緊急事態と合わせれば金額が跳ね上がることをわかっていて、狙っていた金額より高い数字をだし、相手が少し下げた金額で取引をする。単純な手法ですが、相手が切羽詰まっているならば効果的です。」
「すごいじゃない!私の計画を全てわかっていたのね!ビクトリアは商売の才能があるんじゃない?」
「それほどでも。」
* * *
その頃、王国軍施設では...
「お前、ターナー商会に13000金貨で食糧を買ったそうじゃないか。」
「ああ、それがどうかしたのか?」
「まんまとのせられたな。レベッカ嬢の商売センスは父親譲りか。」
「何が言いたい、シーザス。」
「兵士4万人の食糧は合わせて8000枚。それに手数料を入れても9000枚。プラスで危険な北部に運ぶとしても金貨10000枚。それを、13000枚で買ったのだ。」
ウェルネスは驚愕した。
「は!やられた!」
「こりゃ、帰ったら国王陛下から呼び出しだな。」
「クソ!あんの腹黒親子め!」
「あーあ、ウェルネスの貯金がパーだな。」
「せっかくためたのに!」
* * *
「はっくっしゅん!」
「どうしたの?」
「なんか寒気がして。それより、どうする?アラン達が望むならもう少し滞在しても良いけど。」
「そうだね。少し街を回ったら、帰ろうかな。それでも大丈夫?」
「うん。私達は一緒に行動しないといけないからね。」
アランたちは街を回ることにした。
「魔王軍との抗争があったとは思えませんね。」
「そうだね。街が賑わってるね。」
「それは、魔王軍が撃退されたからですよ。」
街は魔王軍壊滅により、お祭り騒ぎであった。
「あ!レベッカ様!いつもお世話になっております。」
「こんにちは。お店の調子はどうですか?」
「兵士さんたちもたくさん来てくれて繁盛してますよ。」
「それは良かったです。」
「ターナー商会は個人店とも取引してるの?」
「そうよ。だから、信頼が厚いの。だから、私達の商会は王国からも依頼を受けるのよ。」
「そうなんだ。それはすごいね。」
アラン達が街を歩いていると、アリシアが美味しそうなものを見つけた。
「あれは何じゃ!あのふわふわなやつは!」
アリシアが指していたのは綿あめであった。
「あれは綿あめですね。買ってきましょうか?」
「うん。全部で四人分ね。」
「わかりました。」
ビクトリアが4つの綿あめを持ってくると、それぞれ食べ始めた。
「久しぶりに食べたわね。いつもはこういうお菓子は出されないから、新鮮で良いわね。」
「すごいぞ!口の中に入れたら溶けるぞ!なんの魔術を使っているんじゃ!」
「魔術じゃないよ。ただのお菓子だよ。砂糖を溶かしたお菓子なんだ。」
「そうなのか!ビクトリア、今度作ってくれ!」
「ちょっと待ってさいよ、これで私は何個の料理を作らないといけないのですか!」
「全部じゃ!妾が食べたいもの全部じゃ!」
「駄目です。何個かに絞ってください!」
「嫌じゃ!」
「それならエレンにも手伝ってもらえば?」
レベッカの後ろにはメイドが一人いた。
「エ、エレン・ヴィンディーです。お嬢様のメイドを20年間やっております!料理などもできます!」
「そうなんですね。よかったですね、アリシア様。これで好きなものが食べれますよ。」
「本当か!それは良いことじゃ!」
アラン達はそれから北部の街を堪能し、王都に帰っていった。
それから一週間が経った。
「アラン、今日は魔導具店との取引があるの。着いてきてくれる?」
「良いよ。どこの魔導具店?」
「バジラ魔導具店よ。」
「バジラ魔導具店ですか。この国でもかなり有名なお店ですね。」
「なにかおもしろいものはおいてある?」
「そうわね、本店に行くからあるかもね。」
「お嬢様、準備ができました。」
「ありがとう、エレン。じゃあ行こうか。」
アランたちは馬車に乗り、王都の中にある、バジラ魔導具店に来た。
「いらっしゃいませ、レベッカ様。バジラ様がお待ちです。」
店はさすがラファエル王国有数の魔導具店の本店ともあり、かなり高級な魔導具が多かった。
「お久しぶりです、レベッカ殿。」
「そうですね。半年ぶりですね。お元気にしていましたか?」
「はい、レベッカ殿のおかげで繁盛しております。」
「それで今日はどのようなご要件で?」
「今回、私達バジラ魔導具店が、王国軍の宮廷魔術師師団に魔導具を提供することになりまして。」
「それは素晴らしいことですね!」
「ええ!それで、取引する魔石の量を増やしてもらいたいのです。」
「なるほど。それで、どのくらいの量をお求めで?」
「今までの量の1.5倍ほど。」
「それはかなり多いですね。今の商会ではおろせるのはせいぜい1.3倍といったところでしょう。」
「そうですか...」
「ですが、お父様に相談すればどうにかできるかもしれません。」
「本当ですか!?」
レベッカ達が話していると、いきなりアランが叫んだ。
「みんな伏せて!」




