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魔法使いの家出  作者: 羽良 凪都輝
第3章 護衛
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「ボーディアム」

「さすがは魔王城を破壊した魔術師だな。だが、こんなのこのこと、出てくるとは。これで殺しやすくなったよ。ありがとな!」

そう言って、魔族はアランに向かって闇の矢を放った。

「あれは!魔王軍幹部のボーディアム!彗星の魔法使い!そいつは危険だ!四天王が四人で相手しても勝てるかわからない相手だぞ!」

崇高の魔術師はアランに下がるように言ったが、アランは聞く耳を持たなかった。

「魔王軍幹部か。そいつはありがたいな。」

「どういうことだ?」

「ここで、魔王軍幹部が一人減るんだぞ。戦況が大きく変わるぞ。」

シーザスが話している間、アランとボーディアムは肉弾戦を繰り広げていた。

「魔術師のくせに近接戦闘もできんのかよ。まあ、この俺に近接戦を挑んできたのを後悔させてやる!」

すると、ボーディアムは剣を出すと、その剣に黒炎をまとわせた。

「あれは黒炎!アラン!逃げて!」

だが、アランは動じることなく、セシルを出した。

「やっと俺様の出番か。遅いぞアランよ。」

「ごめんね。今まで戦ってきた相手が弱すぎてさ。」

ボーディアムは剣を振るうと、その斬撃で城壁の一部が崩壊した。

「嘘でしょ...あんなの当たったらひとたまりもないじゃない...」

だが、アランは簡単に避け、セシルでボーディアムを吹き飛ばした。

空中戦なので、上下左右どちらからも攻撃が来る状態であった。

その中で、ボーディアムは下からの攻撃を選択した。

「下ががら空きだぜ!」

ボーディアムが頭上に居るアランに攻撃を当てようとしたが、アランはそれを防御結界で防いだ。

「おいおい、黒炎に防御結界とはとんだバカ野郎だな!」

ボーディアムの言う通り、剣にまとっていた黒炎はアランの防御結界を焼き尽くした。

だが、防御結界が破れたと同時に、巨大な魔術式が現れた。

「バカはどっちだろうね。破滅の波動!」

アランは防御結界で相手を油断させ隙を作り、神術、破滅の波動を発動した。

術式から、勢いよく波動が放たれ、ボーディアムは回避しようとしたが、間に合わず、片腕を失ってしまった。

「片腕がなくなっちまったか。だが、そんなものならいくらでもくれてやる。」

すると、ボーディアムの片腕は再生し、元通りになっていた。

「腕が再生した!あんなの勝ち目がないじゃない!」

「幹部クラスになると、体も再生できるのですか...これじゃあ、彗星の魔法使いの勝機は薄いですね。やはり、ここは私達も援護に。」

崇高の魔術師が飛び立とうとしたが、シーザスがそれを止めた。

「おいおい、ショーはここからだぞ。もう少し待てよ。」

ボーディアムの腕が再生するのを見たアランは笑っていた。

「すごい!すごい!楽しいよ!君と戦うのはすごく楽しいよ!もう少しギアを上げるね!」

すると、アランの魔力は徐々に解放され、魔力のオーラはアランのもとの量になっていた。

「何だこれは!お前!何者だ!」

「僕の名前はアラン。彗星の魔法使いだ。」

ボーディアの目には奇妙な光景が映っていた。

空には、巨大な隕石、周りには黒い球体、目の前には黒炎の矢を放つ少年。

「何だよこの化け物は!燃えるじゃねえか、久しぶりだぜ!こんな化け物は!」

用意した神術は、アランの詠唱によって解き放たれた。

「彗星の雨、核心の貫き、破滅の黒炎!」

空からは大量の隕石、周りには黒炎の光線、目の前には黒炎の矢、ボーディアムには逃げ場などなかった。

だが、ボーディアムは動じず、一つの詠唱を始めた。

「テレポート。」

すると、目の前からはボーディアムの姿はなく、アランが用意した神術は全て不発に終わった。

「瞬間移動!?アランがせっかく追い詰めたって言うのに!」

「いえ、あれは作戦のうちですよ。」

ボーディアムはアランの背後に瞬間移動すると、魔術を放った。

「ジェットブルーム!」

ボーディアムの魔術は黒い縄のようなもので、アランを縛り上げた。

だが、アランは不敵に笑った。

「エレクトロニックランス。」

詠唱が終わると、天候が急に変わり始めた。

「エレクトロニックランス、古代魔法であり雷属性の中で随一の魔術、使えるものはこの国ではいないのに、彗星の魔法使いはなぜこんな簡単に...」

空は黒い雲に埋め尽くされ、大量の雷がボーディアムに降り注いだ。

ボーディアムはあまりの苦痛に悲鳴を上げた

「うわあああぁぁぁ!」

ボーディアムはアランにかけていた魔術を解除し、雷を防ごうと防御結界を張ったが、雷はいとも容易く結界を破り、ボーディアムを苦しめた。

数秒後、天候はもとに戻り、ボーディアムへの攻撃は止んだ。

ボーディアムの体は満身創痍であり、再生もできぬほどの血が流れ出ていた。

「本気は出せなかったな...もうちょっと頑張ってくれると思ったんだけど、僕の期待外れだったか。」

「期待外れ!」

 * * *

「父上!魔法学校のテストで一位を取ってまいりましたよ!」

「そうかそうか、それは偉いぞ!今日はステーキでも食うか!」

「うん!」

ボーディアムは魔法学校で優秀な成績を収めていた。

そんな中、ボーディアムに一つの声がかかってきた。

「俺に魔王軍に入隊してほしい?」

「ああ、今朝軍の方が来たんだ。これはお前のことだから、お前が決めろ。俺は、お前の意見を尊重するぞ。」

「魔王軍って悪い人間を倒すんだろ?みんなのために戦う!」

「そうかそうか!じゃあ、頑張ってい来いよ!」

そう言われ、ボーディアムは魔王軍に入隊した。

入隊してから1ヶ月が経とうとしていた頃、ボーディアムに一つの任務が課せられた。

「伝令ですか?」

「ああ、この伝令は同志たちの命に関わるものだ。絶対に送り届けてくれ。」

「了解いたしました!」

ボーディアムの任務はラファエル王国の北部で戦っている魔王軍に撤退の伝令であった。

「俺が魔王軍の、みんなの命を預かってるんだ!絶対に任務を成功させてやる!」

ボーディアムの出だしは順調であった。

だが、悲劇は伝令の道中で訪れた。

「何だ?子供か?」

道には一人の子供がいた。

「人間か!」

人間の子供はどうやら親とはぐれたようで、魔王軍領土で彷徨っていた。

「だれ?」

「人間は殺す!」

ボーディアムが子供に刃を向けた瞬間、子供の目は絶望の色に変わった。

そんな目を見て、ボーディアムは思ってしまった。

(こいつは人間だが子供だ。俺らの脅威になるわけじゃない。ここで逃がしても別に...いや、だめだ。人間は悪だ。子供でも許してはならない!)

ボーディアムが子供を切ろうとしたところ、近くから魔物の声がした。

「あ、ああ、あれは、お父さんを食べた!」

子供は魔物を見て、膝から崩れ落ち、泣いていた。

そんな子供を魔物は餌と思い、襲いかかった。

そんな子供を、ボーディアムは庇った。

「うわああぁぁぁ!」

一瞬であったが、ボーディアムに慈悲が芽生えてしまったのだ。

「お、お兄ちゃん!」

「に、逃げろ、遠くに、お前は逃げるんだ...」

子供はボーディアムに従い、一目散に逃げていった。

「後は、こいつだよな...なんとかしないとな...」

それから数十分後...

「はぁ、はぁ、やっと殺せた...怪我を追っちまったが、まあ、大丈夫だろう。」

それから、怪我をした体で、ボーディアムは北部へ伝令を届けに行った。

ボーディアムが北部に着いたが、そこは悲惨な状況であった。

「うそ、だろ...」

ボーディアムの伝令は失敗し、魔王軍は壊滅、ラファエル王国が勝利し、進軍を始めていた。

「俺が、人間を助けたせいで...」

ボーディアムが王都に帰ると、待っていたのは批判の嵐であった。

「魔法学校の首席もこんなもんか。」

「ああ、そこら辺のチンピラのほうがよっぽど優秀じゃねぇか。」

「期待外れだったよ。君はもう一度、一からやり直したほうが良い。今日から一週間休暇を与える。そこで頭を冷やせ。」

「はい...」

ボーディアムが久しぶりに実家に帰ると、ボーディアムの父は激怒していた。

「何だこの失態は!お前は魔法学校で一体何を学んできたんだ!全く、期待して損した。この期待外れが。」

「期待外れ...」

 * * *

「期待外れ!俺は期待外れなんかじゃない!お前ら人間があの時邪魔をしなければ!」

「なに?人間が邪魔?そんなの当たり前じゃん。僕達にとっては魔族は邪魔な存在なんだから。結局そうやって、極端に正義と悪を決めつける。人間も魔族も本質は同じなんだね。じゃあ、さよなら。」

「俺は死なねぇ!」

ボーディアムは最後の力を振り絞り、アランに魔術を放った。

「テンバークレス!」

ボーディアムの魔術はアランの発動させた防御結界を破り、アランを吹き飛ばした。

「よし!」

だが、アランは無傷で立ち上がっていた。

「は?どうして?なんで?おかしいだろ!なんで無傷なんだよ!」

「だって、君の魔術は魔術じゃないじゃん。魔術と魔法の境目だよ。雑すぎる。魔術ってのはこういうのを言うんだよ。」

アランは雷の矢を握った。

「サンダーボルト。」

雷の矢は、ボーディアムの心臓を貫いた。

その矢は極めて精密に作られていた。一寸の魔力も無駄にせず、見事に的を射抜いた。

「これが魔術だ。これが人間が作った魔術だ。君たちが思ってるほど、魔術は簡単じゃないよ。」

「俺の、名前は、ボーディアム、だ...お前が、戦った、最初の、幹部だ、忘れるな。」

「わかった、ボーディアムね。忘れないよ、君の名前。」

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