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魔法使いの家出  作者: 羽良 凪都輝
第3章 護衛
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「初めまして、ギルド長」

「君がアランか。」

そこには筋肉質で大柄な男がいた。

身長はかなり高く、ビクトリアやアランを軽く見下ろせる程度であった。髪は茶髪であり、顔には何かにひっかかれた傷があった。

「あなたがギルド長ですね?」

「いかにも。俺の名前はシーザス・ボルクだ。お前らが快く依頼を受けくれて本当に助かるよ。」

「それは、あなたが"無理やり"やらせてるからでしょう?」

「そう怒んなって。ラファエル爺さんが死んじまったから、これからはもう少し依頼が増えるだろうから頼むぜ。」

「それで、シーザスさんは今日はなぜここに?」

「それはお前に会いに来たのと、北部に急ぎの用事があったからだ。あとは、レベッカ嬢に話もあるからな。」

「私にですか?」

「ああ。レベッカ嬢には二つ話がある。一つは北部の食糧供給についてだ。これは知っての通り北部の食糧は尽きかけている。そこで、ターナー商会から食糧を供給してもらいたい。」

「ですが、北部では魔王軍が供給路を絶っているとの話ですが。」

「それなら大丈夫だ。こいつらがなんとかするから。」

シーザスはアランたちの方を向いた。

「アランがどうにかするってどういうことですか?」

「こいつらはギルドからの要請で魔王軍撃退を頼まれている。」

「ですが、アランには申し訳ないですが、たった1人が動いたところで、事態は変わらないと思いますが。」

「レベッカ嬢にはアランの活躍を見てもらいたいからな。それが終わったら、もう一つの話をする。ビクトリアたちは寝てて良いぞ、って寝てる...」

アランはシーザスの話などお構い無しにビクトリアに膝枕をされていた。

(ずるい!私もしたいのに!)

「シーザス、アラン様が寝ているので静かにしてください。起きてしまいます。」

「お前ら、一応レベッカ嬢の護衛なんだろ?護衛が何呑気に寝てるんだよ。」

「大丈夫じゃよ。いざとなったら、妾たちで相手をするわい。」

「君は?」

「アランの使い魔のアリシアじゃ。」

「使い魔?こんな少女が?アランは奴隷商人かなにかか?」

シーザスが冗談を言うと、ビクトリアは剣を抜きシーザスの首元に剣を突きつけた。

「シーザス?次そのような事を言ったら、あなたの首が飛ぶわよ。」

「す、すまなかったよ...もうこういう冗談は言わねえから、物騒な神器をおろしてくれよ...」

 ビクトリアが神器を下ろすと、レベッカはその神器に興味津々であった。

「神器!?ビクトリアは神器を持ってるの?」

「はい。アラン様も持っていますよ。」

「え!?アランも持っているの?どれが?」

「まず、アラン様の着ているローブです。後は首につけているネックレスと、耳飾りです。」

「3つも!?あなた達のその財力はどっからできているの?ターナー商会でも、神器はほぼ取り扱ってないのよ。」

「屋敷に神器があるので。それを言うならば、レベッカ様がつけているペンダントも神器でしょう?」

「え?なぜわかったの?」

「アラン様のことについて記憶を消去しようとしたのですが、何かに阻まれたので。」

「あなた、本当に容赦がないわね...これは、私を守ってくれる神器よ。もし、魔術が飛んできても大丈夫なように、肌見離さずに持っているの。」

「おいおいビクトリア、レベッカ嬢に精神干渉なんてしたら、死罪だぞ。」

「精神干渉!?それは禁術では?」

「そうだ。だが、こいつらは平気で禁術を使う。だから、ギルドが黙っているぶん、依頼を受けてもらっているんだ。」

「そうだったのですね。私もそろそろ、眠たくなってきました。少し寝ますね。何かあったら起こしてください。」

「ああ、そうするよ。」

レベッカが寝た後、何事もなく北部に到着した。

一番最初に起きたのはビクトリアであった。

「少し寝てしまいましたか。」

「大丈夫じゃぞ。敵は来ておらん。」

「アリシア様は寝てないのですか?」

「魔族は睡眠はいらんのじゃ。」

「そうだったのですね。」

ビクトリアたちが話していると、シーザスとレベッカが起きた。

「ん、朝か?もう着いたのか?」

「はい。もうすぐつきます。」

「私達が寝ている間は大丈夫だった?」

「ええ、アリシア様が見守っていたので大丈夫でした。」

「アリシアが?まだ、子供なのに寝ないとだめだよ。」

「妾が子供?妾は三千年は生きておるわ!」

「三千年!?そんなに生きているの!?でも、見た目は子供って、どういうこと?」

「妾は大人じゃよ。それより、アランはまだ起きんのか。」

アランはアリシアたちが話していても、起きる様子はなかった。

「アラン様は朝が弱いのです。私が起こさないと、半日は起きないでしょう。」

「嘘でしょ...どんだけ寝るのよ。」

「起こす時アラン様の近くに魔術を発動させると、反射的に起きます。」

ビクトリアが魔術で火をおこすと、アランは飛び起き防御結界をはった。

「あれ?まだ朝か。もう一回寝るか。」

アランはそう言うと、もう一度寝ようとした。

だが、ビクトリアはそれを許さなかった。

「駄目ですよ。もう北部につきますよ。早く依頼を終わらせますよ。」

「えー?もうちょっとだけ!」

「依頼が終わったら好きなだけ寝て良いですから、今はだめです。」

「ケチ!ビクトリアなんか嫌い!」

アランがそっぽを向くと、ビクトリアは涙目になっていた。

「あ、あ、ご、ごめんなさい、私が悪かったので嫌いにならないでください!」

「じゃあ、今から寝ても良い?」

「良いですから、嫌いにならないでください!」

すると、アランは満足したように、二度寝を始めた。

「またやられてしまった...今度は負けないと思っていたのに...」

「あんた、アランに対してかなり弱いわね。」

「あのビクトリアがこんな簡単に...アランは一体ビクトリアに何をしたんだ?」

「ほら、アラン様が起きてしまいます。静かにしてください。」

「一応、私の護衛任務でもあるんだけどね...」

ビクトリアたちが話していると、馬車が止まった。

「どうやら着いたようじゃな。」

「ここは、軍の施設ですよね。私もここで降りるのですか?」

「ああ。先に見てもらいたいものがあるからな。ほらみんな、行くぞ。」

ビクトリアはアランを背負いながら降りた。

軍の施設に入ると、人が行き来し、レベッカたちが話しかけるような暇はなかった。

「こりゃ、かなりやられてるな。お前らが来てくれて本当に助かったよ。」

「それはアラン様に言ってください。依頼を受けたのはアラン様なので。」

「これが北部の戦況...かなりひどいわね。確かにこれなら私達の商会に援助を頼むのも無理ないわ。」

「魔族のほうが優勢か。妾がいなくなっても、すこしはやるようじゃな。」

レベッカたちが奥に行くと、そこには一人の魔術師がいた。

「やあシーザス。久しぶりだな。今日はレベッカ嬢も一緒なのか?」

「やあ、崇高。それだけじゃないぞ。今日は援軍もつれてきた。」

崇高の魔術師がビクトリアの方を見ると、すごく嬉しそうにした。

「彗星の魔法使いではないか!よくぞ来たな!今度は私にどんな魔術を見せてくれるのだ?」

だが、アランからは返事がなかった。

「彗星の魔法使い様は今は寝ておられます。今起こすので少々お待ちください。」

ビクトリアがもう一度魔術を使うと、瞬時に起き、防御結界を発動させた。

「彗星の魔法使い様、着きましたよ。作戦は前回と同じでよろしいですね。」

アランは頷いたが、シーザスがそれを止めた。

「それはだめだ。お前らのせいで、地形が変わったんだぞ。そのせいで国王に何度呼ばれたことか...今回は地形は変えないでくれ。」

すると、アランはビクトリアに耳打ちした。

「彗星の魔法使い様はわかったとのことです。では、早速始めるので、兵は撤退させてください。危ないので。」

「わかった。頼んだぞ。」

数行の魔法使いが指示している間、レベッカが話しかけてきた。

「なんで兵を撤退させたの?あなた達は一体何をするつもりなの?」

「レベッカ嬢には特等席で見てもらおうか。今から起きることを目に焼き付けておけ。」

皆が外に出ると、戦場は酷い有様であった。

魔物や魔族が城壁のすぐそこまで迫っていた。

「ギルド長!これはまずいわよ!いくらアランが強いとわいえ、この数は流石に無理よ!」

レベッカの意見には一理あった。レベッカたちは城壁の上に立っていたが、見渡す限り、魔物と魔族によって埋め尽くされていた。奥には、攻城兵器と思われるものもあった。

「そうだな。だが、彗星の魔法使いならやってくれるよ。」

アランが飛び上がると、空に無数の黒い球体を作った。

「核心の貫き。」

アランが詠唱すると、黒い球体から、黒炎に雷をあわせた小さな光線が放たれた。

それは、魔物や魔族たちの急所を正確に撃ち抜いていった。

「レベッカ嬢、これがアランの力だ。これが彗星の魔法使いの力だ。俺達が見ているものは戦争ではない。一方的な虐殺だ。」

シーザスの言う通り、戦場を駆け巡っていた兵士は、何もできずに散っていった。

レベッカは驚いて言葉すら発せなかった。

「これはまたすごいな。一つ一つが正確な魔術だ。私でも正確に急所を撃ち抜くのは至難の業なのに、それをいとも簡単に、しかもこの数を...底が知れぬな、あの魔法使いは。」

「そうですね。彗星の魔法使い様の本気は一度しか見たことがありません。もう一度だけ本気を見てみたいものです。」

戦場はアランの攻撃によって、兵士は次々に倒れていき、魔王軍はまたしても壊滅してしまった。

だが、アランが一息つこうとしたところ、一人の魔族がこちらに攻撃をしてきた。

「さすがは魔王城を破壊した魔術師だな。だが、こんなのこのこと、出てくるとは。これで殺しやすくなったよ。ありがとな!」

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