「転職先はギルドマスター」
「エドワード様!」
そこにいたのは、デイビッドだった。
「デイビッド!これには訳があって...」
「よくぞご無事で...こんなに大きくなられて。」
「アラン様、この方は?」
「すみません、申し遅れました。私はデイビッド・ホール、ここの新しいギルドマスターです。」
デイビッドは丁寧にお辞儀をした。
「リオラ、防音結界を。」
「はい。」
リオラは防音結界を張った。
「俺の名前はラファエル・オブリだ。」
「私の名前はビクトリアです。」
「僕の名前はアランです。」
「ギルドマスターとガキはどういう関係だ?」
ラファエルがデイビッドに聞いた。
「私は元々ウォード家の当主の秘書でした。アラン様はその息子で、7年前に家を出られて行方不明になっておりました。世間一般には大病を患って亡くなられたということになっております。」
「父上らしいですね。それで、なぜ秘書を辞めたのですか?」
「私はバーナード様の考え方と合わなかったので辞めたのです。」
「話に割り込んで悪いんだが、そちらのお嬢さんは?」
「あ、すみません。私の名前はリオラ・ホールです。ギルドマスター秘書兼妻でございます。」
「妻?デイビッド、もしかして近衛騎士団の人って...」
「はい、リオラのことです。」
「なるほど。じゃあリオラさんに口止めは頼もうかな。」
「はい、かしこまりました。夫にはしっかり言っとくので安心してください。」
リオラの笑顔はとても怖かった。
「そ、それで今日はどのようなご用件で?」
「今日はこのガキのギルドカードの発行と、仕事の引き継ぎを。」
「仕事の引き継ぎですか。つまり、これからはビクトリア様とアラン様に仕事をお願いするでよろしいですね。」
「仕事?僕が何かしないといけないの?」
「ああ。俺の存在は冒険者ギルドのギルド長にバレていてな、その口止め料として仕事してるんだ。」
「仕事の内容は私から説明しましょう。アラン様にやってもらうのは、主に討伐の依頼です。Sランク冒険者でもこなせない依頼を、ギルドの特殊部隊として処理してもらいまさか。たまに、国からの要請で騎士団と一緒に魔王軍の撃退をしてもらいます。」
アランは頭をかかえた。
「つまり、僕の名前が色々な人にバレるってこと?」
「いえ、特殊部隊として動く時は特別なギルドカードを使います。その時は偽名で大丈夫です。」
「わかりました。」
「では、特殊部隊のカードは後日配布しますので、それとは別にギルドカードの作成でしたよね。ギルドカードの説明はリオラからありますので。」
リオラのギルドカードの説明が始まった。
「では、私から説明させていただきます。ギルドカードは誰にでも発行することができます。これは、冒険者ギルドのある国では身分証として使えます。そのため、原則本名が必要になります。」
「本名ですか!?それは、僕の場合はどうすれば?」
「アラン様はアランという名前で大丈夫です。何か起きれば、私たちで対処いたします。また、冒険者になる方はランク付けがありまして、下からD、C、B、A、Sとなります。Aランクの冒険者はそこそこいますが、Sランクの冒険者は、一つのギルドに1パーティーいるかいなかですね。ギルドカード発行の時は、冒険者ギルドの職員が相手となり、模擬戦をおこなってもらいます。」
「そこでランクをつけるんですね。」
「はい。原則として最初につけれるランクはBランクまでですが、アラン様は模擬戦免除でSランクとなります。」
「そうですか。じゃあ今から発行することはできますか?」
「はい。もちろんです。受付でできますのでそちらに行きましょう。」
アランとリオラが部屋を出ようとした時、外から扉がノックされた。
「ギルドマスター、開けてもよろしいですか?」
「ああ、話はすんだからな。」
リオラが扉を開けると、そこには1人の男が立っていた。
髪は赤色で、かなり目つきが悪かった。
「おいギルマス、なんで俺らのパーティーランクを上げないんだ!」
その男は怒鳴りながら言った。
冒険者パーティーは、冒険者ランクとはまた別にランクがある。
冒険者パーティーは、冒険者が集まって作るものだ。パーティーにはランクがあり、依頼を受けて達成すると、ランクが上がる。
「何度も話したでしょう。あなた達は素行が悪い。それに、実力もまだ足りていない。」
「あぁ?新人は黙ってろ。」
そこに、女性二人が来た。
「そうよ!あんたは新人なんだからさっさとランクを上げなさいよ。」
「あんた聞いたわよ。そこにいるガキを模擬戦免除でSランクにするつもりでしょ。馬鹿なの?子供をSランクに、しかもカード発行時点で。どうせ、金を積まれてやったんでしょ。これ、他の冒険者にも伝えるから。」
デイビットが困っていると、ラファエルが話しかけた。
「じゃあ、そこのガキとお前らのパーティーで模擬戦をして、勝ったほうがSランクってことえ良いだろう?」
「ふっ、子供と模擬戦?ふざけんな!」
「まさか、できないのか?子供にも勝てない弱小パーティーじゃSランクにはなれないな。」
「はぁ?いいぜ。決闘だろう。ただ、条件が一つある。決闘結界はなしだ。」
決闘結界は決闘専用の結界だ。普段は攻撃を食らったら、怪我をする。
だが、決闘結界は違う。決闘結界は攻撃をされても、怪我をしない。だが、そのかわりに魔力が減る。
決闘は魔力量で勝負が決まる。
「良いだろう。ギルドマスター、場所を用意してくれ。
「わ、わかりました。」
(ふっ、こいつも馬鹿だな。結界がないからあのガキを痛めつけ放題だ。)
「ガキ!模擬戦をするぞ!」
アランは振り返った。
「え?模擬戦をするんですか?」
「ああ。決闘結界はなしだ。」
すると、ビクトリアが小声でアランに話しかけた。
「あのパーティーはギルドでも処理に困っているらしいです。どうぞ、叩きのめしてください。」
「パーティーと戦うの?それなら、少し力を出しても良いよね。」
アランたちは決闘場に来た。
「これから、決闘兼模擬戦のルールを説明します。ルールはどちらかが戦闘不能になるまで戦う。それだけです。」
「さすがギルマスだな。ガキにもわかりやすいように説明してくれてありがとう。」
「そうですね...名前を聞いてもよろしいですか?僕の名前はアランです。」
「俺の名前はロイだ。こっちは、グロリアで、こっちはヘレナだ。」
「私がグロリアよ。よろしくね、貴族の坊ちゃん。」
「いくら子供でも、手加減はしないわよ。」
アランの顔はひきつっていた。
「では、両者準備についてください。」
両者、少し離れた場所についた。
「これから、Aランクパーティー、ウォーズメン対アランの決闘を始める。用意、はじめ!」
決闘が開始した瞬間、グロリアが炎魔術を放ってきた。
だが、アランはそれを簡単に避けた。
「グロリアが魔術師ってことは、ロイは剣士でヘレナは回復術師か。」
「少しはやるようね。でも私の魔術を舐めてもらっちゃ困るわね。」
そう言うと、グロリアは炎の竜巻を作った。
「ファイアートルネード!」
炎の竜巻はアランに直撃した。
「おいおいグロリア、ちょっとやりすぎじゃないか?あれでも子供なんだぞ。」
ロイはそう言って笑った。
だが、アランは無傷で現れた。
「うーん、イマイチだね。魔力操作が雑だし魔力の込め方が下手だね。多分君は魔力量でどうにかしようとしてるでしょ。」
「な、なんで、無傷なのよ!」
「まあ良い。俺が叩きのめしてやる!」
ロイはアランに勢いよく斬りかかってきた。
「これはミスリルでできた剣だ。S級の魔物ぐらいじゃないと傷一つつかないぞ。」
そう言って斬りかかると、アランはその剣を掴んだ。
「ミスリルか。あれは柔らかいからあんま鎧には向かないよ。」
そう言うと、アランはその剣を握り、破壊した。
「剣が!ミ、ミスリルの剣が!お、お前、な、何をした!」
「え?だって、脆いじゃん。簡単に壊せちゃうよ。」
「脆い!?何を言ってんだ?」
ロイが驚いていると、アランはロイを蹴り飛ばした。
「ぶはぁっ!」
ロイは決闘場の壁にめり込んでいた。
「あれ、手加減したはずなんだけどな。まあ良いや。とりあえず、さっさと終わらせちゃおう。」
すると、アランは雷の矢を作り、グロリアとヘレナに当たった。
「あれは魔法ですね。」
「ああ、ちゃんと魔法も上達しているな。」
ここで、決闘は終了した。
「只今の決闘、アランの勝利だ。」
こうして、アランはS級冒険者になった。
アランが帰ったあと、デイビットと、リオラは話していた。
「アラン様、魔術が使えていた。魔力がなかったはずなのに。」
「そうですね。あの、ウォード家の恥晒しと言われた人なのに、なぜでしょう。」
「それは、私がお伝えしましょう。」
そこにはビクトリアがいた。
「ビクトリア様!?なぜここに?」
「ずっとここにいましたが。」
「ずっと!?今まで!?」
「はい。それより、少しアラン様についてお話が。」
「そうですね。私達も聞きたいことがあります。」
ビクトリアはデイビットたちに話しだした。
「アラン様は呪いにかかっていました。魔力を一時的に失わせる呪いです。」
「呪い!?そんな訳ありません!私はウォード家に仕えてましたが、一度も侵入者など入っておりません。」
「そうですか。でも、確かに呪いはかかっていました。」
「つまり、ウォード家の誰か、または使用人の誰かが呪いをかけた、そういうことですね?」
リオラはビクトリアの考えに察しついていた。
「察しが早いようで。」
「どういうことだ?
「ビクトリア様は、私達にその犯人を探してもらいたいということですね。」
「ええ。お願いします。」
「わかりました。そのことについては、私達で調べておきましょう。」
「そうですか。よろしくお願いします。では、私はこれで。」
ビクトリアが去ろうとした時、何かを思い出したように言った。
「そうそう、アラン様のことは他者に漏らさないでください。もし、約束を破った場合、その時は...」
「その時は...」
「私が地獄の果てまで追い詰めるので。私のアラン様の平穏は崩させません。」
ビクトリアの目は人を殺す目をしていた。
「わかりましたわ。私達はこの命に変えても約束を破りましょう。」
「ありがとうございます。」
そう言って、ビクトリアは去っていった。
「ビクトリア様を敵に回してはいけないですね。あれは、人を殺す目をしていました。あの人は、アラン様を守るのであれば何でもします。」
「そうだな。それに、ビクトリア様はアラン様のことを”私の”って言ってたからね。まあ、ビクトリア様はそういうことだろう。」
「そうですね。」
デイビットとリオラは微笑んだ。
* * *
「あのクソガキ、俺の剣を壊しやがって!」
「あのガキ、気に入らないわ。私達のことをこけにして!」
「そうですね。復讐したいです。あのクソガキを。」
ウォーズメンのパーティーは復讐を誓った。
「復讐ですか、お手伝いしましょうか、その復讐。」
そこには褐色の肌で、白い髪をした老人がいた。
「誰だお前!」
「私は、ベネディクトと言います。あなた達に力を貸しましょう。」
そう言って、ベネディクトは話しだした。
「力って、何をしてくれるの?」
「あなた達に情報を与えましょう。あの子供の。」
「情報?笑わせないでよ。そんなもので、どうしろっていうのよ!」
そうグロリアが怒鳴ると、ベネディクトは笑みを浮かべて言った。
「あの子供の心を折り、屈服させるほどのです。どうです?ほしいでしょう?」
「そこまで言うなら聞いてやる。話せ。」
「では。」
ベネディクトが話そうとしたところに、メイドの服を着た女が来た。
「ここにいましたか。あなたが決闘にいた時、私達に視線を向けていた人ですね。」
「ほう、なぜそれを?」
「いえ、魔族は雑なので潜入には向きません。」
「魔族!?」
ウォーズメンたちは驚いていた。
「そこまで見破るとは、想定外でした。あなた達は計画に邪魔なので排除しときましょう。」
ベネディクトは人間には見えない速度で、ビクトリアに襲いかかった。
だが、ビクトリアは簡単にそれを受けて止め、ベネディクトを睨んだ。
(なんだ、この感じ、昔何処かで会った記憶がある。)
「やはり魔族は馬鹿ですね。全く、これだから人間に負けるのですよ。」
(この言葉!まさか...)
「お、おまえ、まさか、白の悪魔!」




