「彗星の魔法使い」
「あの赤い髪、あの動き、あの身長、間違いない。お姉ちゃんだ!」
魔物と戦っていたのは、マリアだった。
「ケルベロスですね。確かにS級の魔物です。どうしますか?」
「そうだね、まあ、お姉ちゃんなら勝てるでしょ。」
アランの言う通りだった。
マリアは上級魔術を使い、ケルベロスを圧倒していた。
「フレイムスピラル!」
マリアが詠唱すると、炎が渦をまいてケルベロスに向かった。
ケルベロスの体は炎によって貫かれていた。
「レベッカ!もう大丈夫よ。とりあえず、屋敷に戻って領主様にこのことを報告しましょう。」
マリアの後ろには、マリアより少し身長が小さく、金髪の女がいた。
「本当?じゃあ、急いで帰りましょう。街の皆さんは避難されていると思うので、危険は去ったと伝えに行きましょう。」
その様子をアランとビクトリアは盗み見ていた。
「お姉ちゃんと一緒にいる金髪の人はだれだろう。見たことないな。」
「そうですね。とりあえず、危機は去ったようですね。」
マリアとレベッカがその場から去ろうとした時、後ろから一人の男が来た。
「あなたが私のケルベロスを殺したのですね。」
そこには、角が生えた一人の男が立っていた。
「魔族!」
「いかにも。私は、上位魔族のレシムと言います。以後お見知り置きを。」
「なんで、魔族の名前なんかを覚えないといけないのよ。」
「覚えなくても大丈夫ですよ。私は少しこの街を破壊しに来ただけですから。」
マリアがその言葉を聞くと火の球を作り、レシムに向けて放った。
「そんなもので、私を倒せる思いで?」
火の球はレシムに当たったが、レシムは無傷だった。
(確かに初級魔術だけど、それなりに魔力は込めた。この魔族、強いわ。)
「レベッカ、先に逃げて街の人達を避難させて。」
「で、でも、マリアは?」
「私なら、大丈夫よ。一様、お父様を呼んできてくれるかしら。」
「わ、わかった。すぐに呼んでくる!」
レベッカは街の中心へと走って行った。
「仲間を逃がすのは良い判断だ。だが、結果は変わらないがな。」
レシムは空を飛び、黒色の球を作りマリアに向けて放った。
マリアは防御結界を使い、攻撃を防いだ。
(これは、まずいわね。今の攻撃でわかったけど、一つ一つの攻撃が重いわ。これだと、お父様でも勝てないかもしれないわね...)
マリアが考えていると、レシムは一瞬で距離を詰め、マリアを蹴り飛ばした。
「何を考えているのですか?隙ができてますよ。」
「わ、わかってるわよ...」
(今ので、肋骨が何本か折れたわ...このままじゃ死ぬ!)
マリアはなんとか立っているが、ふらついていた。
そこに、レシムは追い打ちをかけ、マリアに距離を詰めてきた。
レシムが殴り飛ばす瞬間、何かに阻まれた。
(何だ?あの女は防御結界を使う素振りはしていなかった。だとすると、他に誰かいるのか)
レシムが周りを見渡すと一人、顔が見えない人がいた。
「あなたですか、私の攻撃を防いだのは。」
「...」
「答える気はありませんか。では、あなたも敵ということでよろしいですね。」
レシムが黒い球を作り、放ったが、そこに人影はなかった。
その横では、ビクトリアに話しかけていた。
「今は、あの方が戦っているので少し休んでいてください。」
「あの方?」
「魔法使いとでも呼んであげてください。」
その魔法使いは、レシムの後ろにいた。
(今の一瞬で私の後ろに...一体何者だ?)
「あなた、何者ですか?只者じゃないでしょう。」
「彗星の魔法使い。」
「彗星の魔法使い、知らぬ名ですね。まあ、良いでしょう。私も本気を出しましょう。」
すると、レシムから、魔力のオーラが漏れ出し、背中には羽が生えていた。
「では、いきますよ!」
レシムの動きはマリアと戦っていたときより遥かに速かった。
「速い!私と戦ったときよりも遥かに速い!目で追えうのが限界だわ。」
「そうですか。」
レシムが殴りかかろうとした時、爆発音がなり、その瞬間レシムは蹴り飛ばされていた。
(い、いたい...何が起きた?)
「お、お前、何をした!」
「...」
その瞬間レシムの首が飛んでいた。
「へ?」
(私は宙を舞っている。私の体が離れていく。もしかして私は死んだのか?)
「君、弱いね。」
(そうか、私は負けたのか。私は決して油断していたわけではない。圧倒的な力量があったんだ。私の敗因はあの魔法使いと戦かおうとした瞬間から負けていたんだ。)
「私の負けだ...」
レシムは彗星の魔法使いに敗れた。
「う、嘘でしょ。何が起きたの!?」
「あの斬撃は、もしかして...」
今起こった出来事を説明しよう。
まず、レシムは魔法使いに向かって飛んできたが、魔法使いはレシムに反応させないほどの速さで近づき、レシムを蹴り飛ばした。
その後、レシムの動きが止まったところで、魔法使いが手を降り斬撃を送り、レシムの首を断った。
「では、私達はこれで。」
「ちょ、ちょっと待ってください!あなた達、何者ですか?せめて名前だけでも!」
「そうですね。あの方の名前は彗星の魔法使いとお呼びください。」
「彗星の魔法使いね。私を救っていただき、ありがとうございました。また何処かでお会いしたときは、お礼をさせていただきます。」
「そうですか。では。」
ビクトリアと魔法使いはその場を去っていった。
「アラン様、良かったのですか?」
「何が?」
「お姉様のことです。正体を明かさなくても良かったのですか?」
「うん。今戻ったところで、僕の夢が叶わなくなるだけだから。」
「そうですか。戦いで使った斬撃は、神の力ですよね。」
「バレた?ディンスターさんにお願いして、少し使わせてもらったんだ。」
「そうですか。では、フランシスさんのところに行きましょう。もうそろそろ、服が出来上がる時間ですからね。」
アランとビクトリアはフランシスの服屋に向かって行った。
(アラン様、すごく怒っていた。あの目は、見たことない目だった。家族が傷つけられるのはやっぱり辛いんだ。)
* * *
アランとビクトリアと別れた後、マリアはゆっくりと歩きながら街の中心へと向かっていた。
(彗星の魔法使い、聞いたことないわ。二つ名でもなさそうだし、誰だろう。しかも、かなり小柄だった。帰ったら、少し調べてみよう。それより、レベッカは大丈夫かしら。)
マリアが歩いてると、前から金髪の女性が走ってきた。
「マリア!良かった、無事で本当に良かった...」
レベッカは泣きながら抱きついてきた。
「痛い、痛い。無事だから、とりあえず離れて。多分肋骨が折れてるから。」
「嘘でしょ!?とりあえず、街の人達はみんな無事よ。あの魔族は?」
「えっと、それが、通りすがりの魔法使いが倒したの。」
「へ?」
「私じゃ歯が立たなかったのに、あの魔法使いは一瞬で倒したの。」
「マリアで歯が立たないって、そんなにあの魔族は強かったの?」
「ええ、多分だけど四天王と同じレベルだわ。」
「四天王...そんな魔族を一瞬で倒したってその魔法使いは何者なんだろうね。」
「私も知りたいわ。彗星の魔法使いって名乗っていたわ。」
その名前を聞いてレベッカは驚いた。
「彗星の魔法使い!その人は、今どこにいるの!」
「え?すぐにいなくなったからわからないわ。彗星の魔法使いを知っているの?」
「し、知らないわ。」
「そう。」
(アランが倒してくれたのね...ありがとう。あなたのおかげでマリアは命を救われたわ。いつか、また会いましょう。)
「それより、今日はエディの誕生日だったのに...こんな日になってしまって。」
「そうね。いなくなってから5年。まだ、一つも情報がないわね。」
「私はあの子が生きてると信じてるわ。あの子は強い。絶対に生きてる。」
(そうよね。マリアにとって、エドワードは自分の命より大切なもの。生きてると信じないと心がもたないわよね。)
「そうとなったら、また情報収取を始めるわ!」
「いや、だめよ。マリアは肋骨が折れてるじゃない。」
「嫌だ!探す!」
「だめです。ほら行くわよ。」
レベッカは半ば引きずりながらマリアを連れて行った。
* * *
アランとビクトリアはフランシスの服屋に来ていた。
「あら、大丈夫だった?街にS級の魔物が出たって聞いたけど。」
「はい。大丈夫でした。ケルベロスでしたが、すぐに倒されたようでしたので。」
「もしかして、アランちゃんがやったの?」
「いえ、僕は後始末をしただけですよ。それより服はできましたか?」
アランが聞くと、フランシスは奥から服を出してきた。
「これは、特注品の礼服よ。これから貴族とも関わっていかないといけないでしょう?この服は、最大10cmまで伸ばせるわ。でも、アランちゃんならすぐにそんなの超えられそうよね。その時はまた来てちょうだい。私が仕立て直してあげる。」
フランシスが持っていた、礼服はかなりのものだった。素材も装飾も一級品だ。
「もしかして、フランシスさんてすごい人なんですか?」
「まあ、そうね。一様これでも、王都に私のお店が何個かあるから、その時は寄ってちょうだい。私が通しておくから。」
「本当ですか!機会があったら行きます!」
「そうですね。これから遠出することも多くなると思うのでその時は。」
「じゃあ、支払いは済んでるからまた来てちょうだい!」
そう言ってフランシスはアランとビクトリアを送り出した。
その後、アランとビクトリアが屋敷に戻ると、庭は荒れ果てていた。
「なにこれ、庭が穴だらけじゃん。」
「多分、ラファエル様とクラーク様ですね。」
空を見上げると、ラファエルとクラークはまだ戦っていた。
「そろそろ、体力の限界なんじゃないか?」
「お前には言われたくないね。賢者は家で本でも読んでな!」
ラファエルとクラークは夕方になるまで、一歩もひかず、我慢比べのようになっていた。
「ねえ、ビクトリア。僕も混ざってっくるから、この服は部屋においといて。」
「え!?ちょっと待ってください。今入ったら...」
アランはビクトリアに服を任せて、飛んでいってしまった。
「師匠!僕も混ぜて!」
「おいクラーク。一旦ここは休戦してあいつを潰さないか。」
「不本意ながら私も同意見だ。今この中で一番強いのはアランくんだ。作戦はいつもので良いな?」
「言われなくてもわかってる。行くぞ!」
ラファエルとクラークは息のあった動きで、アランを攻撃した。
「うわ!卑怯だ!2対1なんて!大人げないですよ!」
「ガキは黙ってろ!」
ラファエルがアランに光の剣を飛ばすと、アランは防御結界を使い防いだ。
「何をよそ見しているのですか?」
すると、アランの背後から氷の矢が飛んできた。
だが、アランはそれを蹴り返し、破壊した。
「それは予想外ですね。なぜその発想に至るのか教えてほしいですね。子供の考えることはやはり読めません。」
クラークが分析していると、アランが一瞬で距離を詰め、セシル(至高のスタッフ)を使い、叩き落とした。
「何だ、あの威力...もろに食らったらひとたまりもないぞ。クラークのやつ大丈夫か?」
「人の心配をしている前に、自分の心配をしたらどうですか?」
アランはすでにラファエルの背後におり、ラファエルに向かって雷の槍を放った。
だが、ラファエルはそれを予想していたように、防御結界を張り簡単に防ぎ、火の球を作りアランを吹き飛ばした。
「それはどっちのセリフだ?」
アランは吹き飛ばされ、地面にめり込んだが、すぐに飛び上がり、矢を放つような動作をした。
「貫け、破滅の黒炎。」
アランは、黒炎を矢の形にし、ラファエルに向けて放った。
「あいつ!神の力を使いやがった!」
そう、破滅の黒炎は神術である。最近のアランは、短時間に限って神の力を解放している。しかし、ずっとではないので、常時神の力を使えるわけでわないし、威力もあまり高くない。だが、暴走の心配はなくなる。
「じゃあ、俺も使うしかねぇよな!」
ラファエルの前に巨大な術式が現れた。
「厳守の光芒!」
すると、術式から巨大な光の結界が現れ、黒炎の矢と衝突した。
「ラファエル、私の魔力も注げ!」
クラークも復活し、ラファエルに魔力を注いだ。
「この黒炎の矢はどんな威力してんだよ!」
破滅の黒炎は古代魔法をも凌ぐほどの威力を持っていた。
だが、ラファエルの厳守の光芒もかなり強く、どちらも一歩もひかない様子だった。
「まずい!このままじゃ、もたない!」
その瞬間、厳守の光芒は粉々に破壊されたが、同時に破滅の黒炎も魔力が尽き、消滅した。
「防がれたか。とりあえず、近接戦闘に持ち込むか。」
アランは結界がなくなったので、一瞬で二人の間合いに入り、セシルを使い二人を吹き飛ばした。
だが、二人ともすぐに体勢を立て直し、アランに向けて魔術を放った。
「ブライトクレギン!」
「グレイシスアルクス!」




