「誕生日プレゼント」
「アランくんもかなり成長しましたね。」
「その声は!」
アランの後ろには一人の男がいた。身長はラファエルと同じほど。髪は銀髪。声はすごく柔らかかった。
この3つに該当するのは一人しかいない。
「クラークさん!」
「久しぶりだね。かなり大きくなったじゃないか。魔法使いとしての雰囲気も出ている。」
「お前のために、来てくれたんだ。ちゃんと感謝しろよ。」
「はい!”クラークさんとビクトリア”に感謝しますね!」
「おい、俺は?師匠だぞ。そんなこと言ってると、プレゼントもあげないぞ。」
「ご、ごめんなさい。ちゃんと師匠にも感謝してますよ!」
「そうだろう、そうだろう。じゃあ、パーティーを始めるぞ。」
こうして、アラン、ラファエル、ビクトリア、クラークの4人での誕生日会が始まった。
「私からの誕生日プレゼントは今日の誕生日会が終わってからです。新しい服を買いに行きましょう!」
「本当!?やった!最近、身長が伸びてきたから新しい服が欲しかったんだよね。」
「じゃあ、次は私かな。私からは、この棒術についての本だ。棒術に関しては、ラファエルはあまり詳しくないからな。これを読んで、修行すると良い。」
クラークからは棒術に関しての本が何冊か渡された。
「ありがとうございます!この本は大事に使わせてもらいます!」
「最後は俺か。俺はビクトリアと少し被ってしまうが、これだ。」
ラファエルがアランに渡したのはローブだった。
ローブは紺色をメインにし、少し金色が入っていた。
「これはローブですか?」
「ああ、そうだ。それは至高のローブだ。それは、お前の持っている至高のスタッフと同じ王族の紋章が入っている、クリシオル帝国の神器だ。俺の、お下がりだが傷は修復されているはずだ。」
「神器!?しかも、王族の紋章って、すごいやつじゃないですか!」
「こいつは、自我を持ったローブだ。だから、こいつも使用者を選ぶ。だが、王族の紋章がある神器を持っている者は大体着られるはずだ。」
すると、至高のローブが飛び上がった。
「すごい!本当に自我を持ってる!」
至高のローブがアランの周りを飛び回っていると、セシルが話しかけてきた。
「懐かしい感じがするな。ひょっとして、ロロローブか?」
「ロロローブ?もしかして、至高のローブのこと?」
「あ!それそれ。俺様が作ったやつなんだ。」
すると、至高のローブがアランの耳につけていた、至高のスタッフにすり寄っていった。
「でも、なんでロロローブなんて言うの?」
「俺様が神器を作る時、大体のものに命名式があるんだ。その時に、俺様が少し噛んで、ロロローブって言ってから、ずっとロロローブって読んでるんだ。」
「ロロローブ、なんかダサい。」
「ダサいって言うな!俺様がつけた名前だぞ!」
「それは至高のスタッフでしょ。」
「それで、師匠。ロロローブの特徴ってなんですか?」
「まず、中級魔術までのものは攻撃が通らない。後は、物理攻撃でもかなり強くないと通らない。後は、魔力を流すと、傷がついても修復してくれる。」
「すごいじゃないですか!」
すると、セシルが話しかけてきた。
「ロロローブはそんなに弱く作ってないぞ。黒炎だって防げるはずだ。見たところ、術式が半分ぐらい壊れているな。後で、俺様が直してやろう。」
「直したら、黒炎も防げるの!?」
「当たり前だ。俺様も黒炎なんかじゃびくともしないぞ。今日の夜までに、術式を考えておくから待ってろ。」
「だって!師匠、ロロローブってすごいものなんですね!」
「いや、どういうこと?黒炎を防げる?何言ってんの?」
「なんか、直したらすごくなるらしいです。」
「そ、そうか。まあ、それはセシルに任せよう。じゃあ、ケーキを食べたら街に行って服を買おうじゃないか。」
「はい!」
アランたちはケーキを食べ終え、街に出て来た。
「今日も、フランシスさんのお店に行くんですか?」
「そうです。今日はフランシスさんにお願いして、時間を開けてもらってますから。」
「でも、師匠とクラークさんは来なくて良かったの?」
「あのお二人は、この街では英雄扱いされるので悪目立ちしますから。それに、あの二人は今頃決闘でもしてますよ。」
* * *
ビクトリアの言う通り、ラファエルとクラークは決闘をしていた。
ラファエルとクラークは空を飛び、常人には見えないほどの速さで戦っていた。
「お前、弟子の修行につきっきりで、腕が落ちたんじゃないか?」
クラークはそう言いながら、氷の結晶を作り、ラファエルに向けて放った。
「落ちるわけ無いだろう。音速を超えるやつと毎日修行してるんだ。そんな遅いもの、止まって見えるぜ!」
ラファエルは氷の結晶をかわし、近接戦闘に持ち込もうとしていた。
(ラファエルのやつ、私が近接戦闘が苦手なのを良いことに、着実に近づいてきている。)
「少し離れたらどうだ?少し、暑いんだが。」
「そんな言い訳で、逃げると思ってんのか?」
ラファエルとクラークの戦闘は激化していった。
クラークは氷の結晶でひたすらラファエルのことを攻撃していた。
だが、ラファエルはそれを丁寧に処理していき、クラークのことを追い詰めていった。
(なにかおかしい。アランのやつ、なぜ上級魔術を使わない。ずっと、氷の結晶しか出さないのはなぜだ?)
「お前、なんか隠してるだろう。まだ、一度も上級魔術を使ってないだろう。」
(気づかれたか。そしたら、魔力も溜まったことだし、発動するか。)
すると、ラファエルの動きが止まった。
「あれ?体が動かないぞ!」
ラファエルの周りには強力な冷気が漂っていた。
そして、ラファエルの動きが止まったところで、クラークは氷の弓矢を作った。矢には巨大な魔術式がいくつも重なっていた。
「グラシスリレイス!」
クラークが詠唱すると、氷の矢は放たれ、通ったところは一面凍らされていた。
これで、クラークの勝利かと思われたが、一筋縄ではいかなかった。
「アンチグラビティ!」
すると、氷の矢は、一瞬で地面に叩きつけられた。
「お前、新しい魔術に集中しすぎて、俺の手札を忘れているだろう。」
「ああ。アンチグラビティのことはすっかり忘れていた。」
そう。クラークの冷気は、新しい魔術であった。
大賢者アラン・クラークの得意属性は風と氷である。ラファエルとは幼馴染であるが、得意属性を増やすことはしなかった。その代わり、ラファエルよりも、氷と風の魔術は圧倒的に優れており、新しい魔術を開発することも多々あった。
今回、ラファエルを止めた冷気は、クラークが密かに魔力を大気に混ぜ、魔力に氷属性を付与し、冷気を作るというものだ。
これは現代の、上級魔術よりも至難の業である。
ラファエルとクラークの決闘は激化していった。
* * *
「向こうから、爆発音がずっとなってるのってそういうこと?」
「そうですね。決闘が続いているのでしょう。」
アランとビクトリアが話していると、フランシスの服屋についた。
「あら、アランちゃん。大きくなったわね。今日は10歳の誕生日なんでしょ?とびきり良い服を仕立ててあげるわ。」
「よろしくお願いします!」
アランの服を仕立てるために、身長や、体周りの計測が始まった。
「今は、150cmもあるの!?すごいじゃない!10歳の中だとかなり大きいわね。しかも、こんなに筋肉がついて、将来期待できるわね。」
「そうですね。将来が楽しみですね。」
「じゃあ、計測も終わったから、2、3時間で仕上げるわ。」
「早いですね。じゃあ、少し街を出歩いてますね。」
アランとビクトリアは服が出来上がるまで、街を出歩くことにした。
「今日はレストランはやめときましょう。ケーキを食べているので、これ以上はあまり入らないでしょう。」
「そうだね。じゃあ、どこ行こうか。」
「そうですね、歩きながら気になったお店に入ってみましょう。」
アランとビクトリアは街を歩き始めた。
「前来たときより、少し人が増えたね。」
「そうですね。前に来たのは3年ほど前ですからね。最近は、ここが貴族の別荘地として人気が出ているようです。」
「そうだったんだ。じゃあ、あんまり街に出ることもできなくなるね。」
「残念ながらそうですね。もしかしたら、アラン様を知っている方と会うかもしれないからね。」
アランとビクトリアが話しながら歩いていると、向こうでなにか騒ぎが起きていた。
「み、みんな!逃げろ!S級の魔物が来るぞ!」
「S級の魔物ですか。街に現れるのはかなり珍しいですね。アラン様、行きましょう。」
「そうだね。ロロローブを呼ぼうか。ロロローブならフードがあるから顔を見られる心配もないしね。」
アランが手を掲げると、屋敷のほうから一つのローブが飛んできた。
「すごいね。セシルと同じように飛んでくるんだね。」
「当たり前だ。俺様が作ったんだからな。」
アランが両手を広げると、ロロローブは滑らかに入った。
「フードをかぶれば、ほぼ顔は見えませんね。これなら、気兼ねなく動けますね。」
「そうだね。じゃあ、少し急ごうか。」
アランとビクトリアは飛行魔術を使い、魔物が出た現場に急行した。
「あそこですね。誰か戦っているようですね。」
そこには、3つの頭を持つ猛獣とその魔物と戦っている一人の女がいた。
「とりあえず、近くに行こう。」
アランとビクトリアは、魔物の近くに行き、観察していた。
「あの赤い髪、あの動き、あの身長、間違いない。お姉ちゃんだ!」




