「人間と神」
「それはわれが教えてやろう。」
アランが声に反応したときには、周りはなにもない真っ白な世界になっていた。
「え?ここ、どこ?」
「ここは精神世界だ。」
「精神世界?てか、君だれ?」
そこには、黒く青い光をまとい、髪は青色で、男は石のようなものを持っていた。
「われは、破壊神ディンスター、お前の父のようなものだよ。」
「破壊神!?え?あなたが?」
「そうだ。」
アランは率直に思った。
「なんか、神っぽくない。」
「てめぇ、この世から消し去るぞ。」
「だって、神ってなんか椅子に座ってあぐらをかいてるじゃん。」
「それは、お前の固定概念だ。お前の常識を押し付けるな。そしたら本題に入るぞ。」
「本題?」
「ああそうだ。お前、神の力と魔術の違いがわかっていないだろう。」
「うん、そうだけど。だって、神の力を使った覚えなんてないし。」
「あ、そっか!」
ディンスターは納得したように言った。
「俺がお前の体を乗っ取ってたんだ。」
「は?どういうこと?」
「じゃあ、まずわれが、なぜお前の体の中にいるのか説明してやろう。」
「よろしく。」
「そうか。じゃあ始めるぞ。われはこの世界を滅ぼしに来た。」
「は?滅ぼしに来たって、僕を使って?」
「そうだ。だが、お前の体を完全に乗っ取ることができんかったんだ。だから、こうして精神世界にいるんだよ。」
「つまり、僕が神の力を使おうとすると暴走するのって、もしかして...」
ディンスターは笑顔で言った。
「われのせいだな。」
「お前か。」
「まあでも、気が変わった。お前に、われの全てを授けてやろう。この精神世界は現実の世界より進みが遅い。大体、この世界の1日が現実の1時間のようなものだ。」
「なにそれ!?修行し放題じゃん。」
「そういうことだ。だから、お前に神の力の使い方を教えてやる。」
「でも、どうして気が変わったの?」
すると、ディンスターは邪悪な笑みを浮かべて言った。
「お前、ついこないだまで、差別され、ゴミと同じように扱われていたじゃないか。」
アランの顔が険しくなった。
「だから何?」
「お前、復讐したくないか?」
「めんどくさい。」
「そうだろう、そうだろ、ん?めんどくさいと言ったか?」
ディンスターは驚愕した。
「うん、言ったけど。」
「お前、復讐したくないのか!?あんな思いをしてもか!?」
「だって、人間だし。人間はそういう生き物でしょ?」
「人間だからか。お前、面白いな。お前に一つ問う。力を手に入れたら何がしたい?」
「なにがしたい?うーん、旅をしたり魔族と戦ったりしたい。」
「魔族と戦うか、なぜだ?お前は別に魔族と戦う義理はないだろう。」
「戦うって楽しいじゃん。魔術を使う時ってすごく楽しんだよ。」
「最高だ。良いだろう。お前にわれの全てを授けよう。この精神世界はお前が寝ているときに使う。良いな?」
「わかったけど、もしかしてこれで君が僕のことを乗っ取るのもやめる?」
「いや、お前はまだ未熟だ。神の力を使えこなせるようになったら変わってやろう。」
「わかった。じゃあ、今日の夜ね。」
すると、アランの周りはもとの現実に戻っていた。
「アラン様、考え事ですか?」
「いや、なんでもないよ。それより、やっぱ魔術を作るのはまた今度にするよ。今は、上級魔術の習得を最優先でするよ。」
「そうですか。では頑張ってください。」
アランはビクトリアと話し終わると、すぐに修行を再開した。
(なにか、少し変わった気がするわ。いや、気のせいか。)
その夜。
「すごい!眠気が全然ない!」
アランは精神世界に来ていた。
「お前の本体は今は眠っている。だから、明日の朝起きても体は正常なはずだ。」
「精神世界って便利ですね。」
「じゃあ、始めるぞ。まずは、神の力がなにか教える。」
「お願いします。」
「まず、神の力は魔術とは違う。だが、原理は同じだ。」
「つまり、魔力を使うんですか?」
「そうだ。われが本気を出せば、この世界なんて3秒で滅ぼせるのだが、他の神との契約でそれができないんだ。」
「どうしてですか?」
「お前の体に入る代償として、われの持っている魔力を天界においてこないといけなかったんだ。だが、この精神世界だと、われの魔力も復活するらしい。」
ラファエルは黒炎を作り出した。
「本当ですね。てか、サラリと黒炎を作るの、やめてくれます?」
「こんなん、ただの炎だ。それで、神の力は魔術とは違うが似ているものだ。魔術を使うために魔術式を使うように、神の力にも術式が必要だ。とりあえず、われの技を見せてやろう。」
すると、空に無数の隕石が現れた。
「彗星の雨。」
ディンスターがそう唱えると、空に会った隕石が落ちてきた。
「ディンスターさん!?僕、死にますよ!?」
「大丈夫だ。われが守ってやる。」
そう言うと、ディンスターがアランの近くに来て、手を掲げると防御結界が現れた。
「すごい!ディンスターさんって、魔術も使えるんですね!」
アランが話しかけるが、答える余裕がない速さで隕石が落ちてきた。アランとディンスターは防御結界によって守られているが、他の場所は穴だらけになっていた。
「何この威力。どうしたらこうなるの。」
「これでも、かなり加減をしているぞ。今見せたのは、彗星の雨という神術だ。空に無数の隕石を作り、それを地上に落とす。今のは一度きりだったが、最大で一分ぐらい落としずつけることができる。こういう神の力を神術と言う。覚えておけ。」
「わかりました。他にはどんな神術があるんですか?」
「そうだな。じゃあ、われにお前が出せる一番強力な魔術を打ってみろ。」
「え?一番強力ですか?うーん、あれですかね。」
すると、アランは稲妻を手からだし、それを弓矢のように引っ張った。
「サンダーボルト!」
サンダーボルトはアランが最近覚えた上級魔術の一つだ。ちなみに、上級魔術や古代魔法になると、宮廷魔術師や、魔術師四天王、ラファエルなども詠唱が必要になる。理由は、魔術式がかなり難しく、頭の中で作るのが難しく、無詠唱で作れないからだ。
そもそも、詠唱とは魔術式を言葉にするようなもので、頭で考えるより遥かに簡単だ。だが、相手にどんな魔術を打つかバレたり、そもそもの詠唱が長いのでかなり隙ができてしまう。そのため、短縮詠唱があり、今回のアランも短縮詠唱を使っている。
アランが稲妻の矢を放つと、ディンスターは稲妻の矢の方向に右手をだした。
すると、術式が現れ、その術式と稲妻の矢が当たる瞬間に、ディンスターが詠唱をした。
「鏡返し。」
その瞬間、ディンスターに放った矢がアランに向けて放たれたように戻ってきた。
「嘘でしょ!?」
アランは咄嗟に防御結界を作ったが、稲妻の矢の威力はすごく、防御結界を破壊してアランを吹き飛ばした。
「あれ?痛くない。どうして?」
「それは、この世界はわれが作ったからだ。この世界の痛みを一時的になくしている。だから、痛みを感じないのだ。だが、あまりに威力が強すぎると、それを貫通して痛みが来る。さっき、われが使った彗星の雨などがそうだ。あれは威力が高すぎて、貫通してしまう。」
「なるほど。彗星の雨はディンスターさんが使える最も強い神術なんですか?」
「いや、あれも強いが、まだ他にもたくさんある。今使った、鏡返しもそうだ。」
「あれはどういうことなんですか?」
「あれは相手の最高火力”だけ”を跳ね返す術式だ。」
「最高火力ってことは、それ以外は跳ね返えすことができないんですか?」
「そうだ。神術には条件があるんだ。われの場合だと破壊神だから破壊を目的にしないと使えない。鏡返しだと、相手の心を破壊するために使うものとなっている。」
「どういうことですか?」
「相手が絶対に勝てると思った攻撃を跳ね返して自分が食らうのは、かなり心に来るだろう?もし、相手がそれでわれのことを殺せると思っていても、それが自分に跳ね返されるんだ。さぞ屈辱的だろう。」
ディンスターは邪悪な笑みを浮かべた。
「ディンスターさんって性格悪いですね。」
「それほどでも。」
「いやほめてないです。」
「まあそれでだな、神術はその神にあったものしか使えないのだよ。例えば、お前の師匠とかいうやつは光の神の子だろう。だから、神術を使うときは善良な行いの時しか使えないのだ。」
「つまり、悪事には使えないんですか?」
「そういうことだ。まあ、それはあのジジイが考えた善良だがな。だから、お前を育てるために戦うんだったら、善良な行いとみなされ、神術も使えるだろう。」
「なるほど。そしたら、今からディンスターさんの使える神術を全て見せてもらっても良いですか?すべて見たうえで、優先順位をつけて練習していきたいです。」
「そうか。良いぞ。じゃあ、とくと見るが良い。」
数時間後...
「今のは全て攻撃ですよね。防御の神術はないんですか?」
「彗星の雨に使った防御結界だ。」
「え?あれは魔術じゃないんですか?」
「あれは簡易神術だ。あの防御結界は触れたものを全て破壊して中にいるものを守るものだ。」
アランは不思議に思った。
「簡易神術と神術は何が違うんですか?」
「まず、神術には詠唱が必ず必要だ。神術は神の力を使う。だから、神の力を借りる礼儀として詠唱が必要だ。だが、簡易神術は少しちがう。確かに、神の力を使うが神術ほど協力なものではない。だから、神への礼儀も必要ないのだ。」
「なるほど。つまり、簡易神術は頭の中で術式を作れば、すぐに発動させることができるってことですね。」
「そういうことだ。さっき使った防御結界は触れたものを全て破壊すると言った。だが、それには条件がある。あれは魔術式を破壊するものであり、魔術ではない単純な物理攻撃は防げない。」
「どうしてですか?それだと、防御結界のほうが優秀じゃないですか。」
「さっき、簡易神術の説明をしたな。もし、この防御結界に物理攻撃も防ぐ術式を加えると、神術になるんだ。そうすると詠唱が必要になるから、神術にならないギリギリの簡易神術を使っているんだ。」
「なるほど。じゃあ、対物理攻撃の防御結界もあるってことですか?」
「そうだ。だから、防御結界は少し使い分けないといけない。あとは、簡易神術だと、斬撃を送るとこができる。」
ディンスターがなにもないところを殴ると、アランが吹き飛ばされた。
「え!?どういう原理なんですか?」
「これは、周りの抵抗を破壊する術式だ。力は抵抗がないと、力の大きさは変わらないだろう。だから、殴った瞬間、力の周りの抵抗を全て無くし、斬撃を送くっているんだ。」
「面白いですね。すごく役に立ちそうです。」
「そうだな。そろそろ、時間か。じゃあ、今日の夜も来いよ。」
「はい!」
アランが返事をすると、周りは現実世界に戻っていた。
「よし!修行を頑張るぞ。」




