「努力と天才と休暇」
「アラン様!今日は休まないと...うそ、でしょ、」
「あのガキはな、確かに最高の才能を持っている。だからといって、修行を怠った日はなかった。あいつは努力の天才だ。」
アランは宙を待っていた。だが、ビクトリアには雷が走っている様にしか見えなかった。ビクトリアはアランの速さについていけていないのだ。
「ビクトリア、あれを見て正直に感想を言ってみろ。」
「は、はい。あれは、ラファエル様よりも速いです。ラファエル様の全力よりも遥かに速いです。ラファエル様のも十分速いですが、まだ目で追えます。ですが、アラン様は次元が違います。アラン様の通ったあとの光しか見えません。」
アランの通ったあとには青い光が残っていた。
「ビクトリア、俺の時代はもうすぐ終わる。あと5年もしないうちに俺を超えるだろう。その時は、約束を守れよ。」
「はい。私は、このめで伝説を見届けます。」
すると、青い光が止まり、空から降りてきた。
「師匠!できましたよ!空を飛ぶって楽しいですね!」
「今日から一週間、俺は出かける。その間休暇を楽しめ。休暇が終わったらまた修行だ。良いな?」
「良いんですか!?ありがとうございます!」
「アラン様、まだお体の調子が悪そうなので休んでください。」
アランは、嫌そうな顔をし、駄々をこねた。
「えー、やだ。まだ、飛びたい!だって、まだ本気じゃないんだもん。もっと速くできそうだからあと少し待って!」
「駄目です。お体が悪いのに、今日はだめですよ。ほら、さっさと部屋に戻りますよ。」
ビクトリアはアランを無理やり引きずりながら屋敷に戻っていった。
(あのガキは俺を超えれる。伝説になる。これからが楽しみだ。)
ラファエルは笑った。その顔には、少年が楽しそうに笑う顔に似ていた。
その夜。
「アランか。すまなかった。妾がなにかしたのだったら、謝る。」
「え?ドユコト?」
「え?アランは妾がアランの気に触ったから、昨日来なかったのだと思ったのだが、違ったか?」
「えっと、ちょっと熱出しただけだから大丈夫だよ!それより、昨日の分も服を作らないといけないから、早くやろう!」
「そうじゃな。妾は酒でも飲んで待っておるぞ。できたら、お前の新しく覚えた魔術を見せろ。」
「え?どうして、新しい魔術を覚えたってわかるの?」
「そりゃわかるさ。お前は新しい魔術を覚えると、機嫌が良い。今日はその中でも一番機嫌が良い。なにか、覚えたのだろう?」
「うん!後で見せるね!」
3時間後。
「できたよ!」
「ほう、かなり良い出来じゃ。70点と言ったところか。」
「まあ、最初よりは良くなったね。」
「じゃあ、妾に新しい魔術を見せてくれ。」
「そうだね、良いよ。」
アランが空中に浮いた。
「飛行魔術か。だが、それだけじゃなさそうだな。」
その瞬間、アランがアリシアの目の前に現れた。
「どう?すごいでしょ!」
(速いな。この妾が、この目で追えなかった。これはますます楽しくなりそうじゃ!)
「かなり速いのう。これは、磨けばすごいことになるぞ。頑張れよ、アラン。」
「うん!」
それから一週間、アランの休暇が始まった。
「ビクトリア!どっか出かけようよ!」
「そうですね。少し街に出てみましょうか。」
アランとビクトリアは街に出てきた。
「王都よりは栄えてないけど、静かで良いね。」
「そうですね。ここからもう少し歩くと、もっと大きな街に出ますが、私達は静かな方が良いでしょう。そろそろ、お昼時なのでレストランに入りましょう。行きつけのお店があるので、そこで良いでしょうか?」
「うん。早く行こう!お腹すいた!」
アランとビクトリアはレストランに着いた。
「あらビクトリア、今日はラファエル様と一緒じゃないのね。」
ビクトリアに声をかけたのは、40代くらいの女性で、料理を運んでいた。
「はい。今日は、アラン様にこの街を案内しようと思いまして。」
「はじめまして。アランと申します。」
「私はエリナよ。ラファエル様のお弟子さんかしら。いつも世話になっているからサービスするよ。とりあえず、空いてる席に座って。」
アランとビクトリアは、カウンターの近くの椅子に座った。
「ここは肉料理が美味しいです。アラン様は何にしますか?」
アランはメニューを見ると、指を指してビクトリアに言った。
「これが良い!美味しそう!」
「それは、この店おすすめですね。私もそれにします。エリナさん、おすすめ2つ。」
ビクトリアがエリナに呼びかけると、エリナは元気よく応えた。
「ちょっと待っててね!」
「エリナさんは、師匠のこと知ってるの?」
「はい。一度この街が魔族に襲われたことがあって、その時ラファエル様が助けたんです。それで、この街の人達はだいたい知ってるんです。」
「なるほどね。てか、ビクトリアはなんでメイド服なの?」
ビクトリアはいつもと変わらずメイド服だった。
「メイドですから。」
「今日は良かったんじゃない?街に出るんだし。」
「いえ、街の人達は私達が何者かわかっているので、大丈夫です。」
アランとビクトリアが話しているとエリナが料理を持ってきた。
「当店のおすすめ料理、特製ビーフシチューだよ!」
アランは目を輝かせていた。
「美味しそう!いただきます!」
「いただきます。」
アランとビクトリアは食べ始めた。
「美味しいね!ビクトリアの料理もなかなかだけど、外で食べるのも良いね!」
「そうですね。普段は屋敷にこもりっぱなしですからね。」
すると、レストランの外が騒がしくなった。
「おい、あれってマリア様じゃないか?」
「ほんとだ。魔術師の期待の星なんだろう?」
「すんげー美人!大人になったらもっと可愛くなるのか?」
アランが震えだした。
「び、ビクトリア。隠れる場所ない?」
「もしかして、追手ですか?」
「マリアは僕のお姉ちゃんだよ!見つかったら連れ戻されちゃう!どうしよう!」
アランはビクトリアを左右に揺さぶった。
「エリナさん、ちょっと匿ってくれませんか。」
「わかったわ。厨房の中に階段があるから、そこを上って二階に行きな。」
「ありがとうございます。アラン様、行きましょう。」
アランとビクトリアはレストランの二階に上がった。
「みんな!ラファエル様のお弟子さんを今から匿うから、わかるね?」
「おうよ!みんなラファエル様に恩があるんだから、あったりまえだ!」
「みんな、頼んだよ!」
レストランにいた客たちはアランたちを匿うことにした。
「すみません、私はマリア・フォン・ウォードと申します。この紙に書いてある顔に見覚えはありませんか?」
「さあね、うちのレストランでは見なかったね。その子は、迷子の子かい?」
エリナがマリアに聞くと、マリアは暗い表情をした。
「はい。少し込み入った事情がありまして、名前はエドワードと言うんです。見かけたら、ここの領主の館に来てください。そこに私は数日滞在しているので。」
「わかったよ。見かけたら、すぐに連絡するよ。じゃあ、お気をつけて。」
「はい。お忙しい中、ありがとうございます。」
そう言って、マリアは護衛を連れて去って行こうとした。
その時だった。二階から物音がしたのだ。
「大丈夫ですか?二階から物音がしましたが。」
「え、ええ...二階においておいた荷物が倒れたんでしょう。」
すると、二階から話し声が聞こえた。
「アラン様!静かにしてください!聞こえてしましますよ!」
「だって、扉の角に小指ぶつけたんだもん!」
アランたちの声を聞くと、マリアは不審に思った。
「二階に誰かいるのですか?」
「は、はい。うちの息子が遊んでて、なんかトラブルでも起こしたんでしょう。」
そこにタイミング悪く、一人の子供がやってきた。
「母ちゃん!おつかいに行ってきたよ!」
「こんの、バカ息子。なんで今帰ってくるんだよ。」
マリアはますます不審に思った。
「もしかして、誰か匿っているのですか?すこし、失礼しますね。」
そう言って、マリアは二階に登っていった。
「あ!だ、だめです!今二階は、ちょっと汚くて、貴族様に見せれるような場所じゃありません!」
「大丈夫よ。失礼するわね。」
マリアが扉を開けると、そこには...
「誰もいないわね。確かに声が聞こえんだけど。」
そこには、誰もいなかった。
「すみません、私の勘違いでした。大変ご迷惑をおかけしました。あと、窓を開けっ放しにするのは危ないですよ。もしかしたら、空き巣が入るかもしれません。気をつけてくださいね。」
「は、はい。では、人探しをがんばってください。」
マリアは去って行った。
「それにしても、あの子達はどこに行ったのかしら。」
* * *
マリアが二階に来る少し前...
「!痛い!小指ぶつけた!」
「アラン様!声を抑えてください!気づかれてしまいますよ。」
すると、マリアの声が近づいてきた。
「アラン様、まずいです。人が近づいてきています。どうしましょう。」
ビクトリアがアランに聞くとそこに、アランの姿はなかった。
「ほら、ビクトリアもこっち来て。逃げるよ!」
アランは窓の外におり、空を飛んでいた。
「アラン様は考えが早いですね。」
ビクトリアはそう言いながら、窓から外に飛び出した。
「少し遠くに行きましょう。時間が経ちましたら、レストランに戻ってきましょう。」
「そうだね。じゃあ、行くよ!」
アランがそう言うと、アランから青い稲妻のようなものが出ていた。
「アラ...行ってしまった。追いつけるでしょうか。」
ビクトリアもアランを追って、移動した。
数分後...
「アラン様、私がいる時は質力を落としてもらえませんか?その速さだと追いつけません。」
すると、アランは嬉しそうに言った。
「飛ぶのが楽しくてさ。もう少しでソニックブームが起きそうだったんだけどね。」
「やめてください。逃げた意味がないじゃないですか。」
ソニックブームとは、音速を超えて飛行するときに起こる衝撃波のようなものだ。
「でも、ここまで来て良かったね。お姉ちゃんが街にしばらくいるから、明日からはまた屋敷にこもりっぱなしだからね。」
「そうですね。」
そこに広がっていたのは、今さっきいた街が見渡せる場所にいた。
「すごくきれいだね。王都より静かだけど、こういうのが良いよね。」
「そうですね。ここだと、夜来ても良いと思います。また来ましょうね。」
「うん!じゃあ、そろそろ戻ろっか。」
「そうですね。まだ、ビーフシチューを食べ終えてないですからね。」
* * *
「あら、どこに行ってたの?」
アランとビクトリアはレストランに戻ってきた。
「少し山の上に行ってました。エリナさん、ビーフシチューを温め直してくれますか?温かいほうが美味しいですからね。」
アランがそう言うと、エリナは嬉しそうにした。
「子供にそう言ってもらえると、私は嬉しいよ。あんたのことは詮索するつもりはないけど、マリア様はまだもう少しこの街にいるらしいから、気をつけな。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「アラン様、お昼ご飯を食べましょう。」
「そうだね。」
二人はご飯を食べ終わると、街の広場に来た。
「これからどうする?」
「そうですね。一日ぐらいは街を歩いても大丈夫でしょう。そしたら、服を買いに行きましょう。」
アランは不思議に思った。
「服?なんで?」
「アラン様は外出用の服を一枚ぐらい買ったほうが良いです。今も、修行をするための服じゃないですか。」
アラン服は、とても外出用の服に見えなかった。至るところに、穴が空いてあったり、剣で切られた傷があった。
「じゃあ行こうか!」




