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魔法使いの家出  作者: 羽良 凪都輝
第2章 修行
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「夢」

「じゃあ、一つ聞く。お前の夢は何だ?」

「夢?」

(考えたこともなかった。家出する前は、父上や大人からは失望されて、何にもできない僕はただ生きることだけを考えてきた。でも今は...)

「世界を旅したい。今まで、自由がない生活をしてきたから、この広い世界を見てみたい!」

「ほう、面白い。それには、力が必要だろう?」

「たしかに!そのためなら、頑張れる!」

「じゃあ、明日もサボらず来い。待っておるぞ。」

「うん、バイバイ!」

(少しだが、あやつの目が変わったな。これからが楽しみじゃ。妾の期待に応えてくれるだろう?)

それからというもの、アランは目標を見つけてから成長が早くなった。

「最近のお前は成長速度が異常だな。何かあったのか?」

「夢を見つけたんです。そのためなら、修行も楽しくなってきて、すごくはかどるんです!」

「そうか、じゃあ修行のペースを上げるぞ。」

「はい!」

(心の変化でここまで成長するのか。人間とはなんと面白い生き物だろうか。)

それから何日かたった。

「今日は魔術の練習ですか?」

「そうだ。基礎ができたから、これからは中級と上級、古代魔法を身につけるぞ。」

「わかりました。では、最初は中級魔術ですか?」

「いや、先に上級魔術だ。ここで問題だ。魔術戦で一番使われてる魔術はなんだ?」

アランは少し考え、こう答えた。

「防御結界でしょうか。相手の魔術を防ぐために使いますし、自分の遮蔽物にすることもできますから。」

「不正解だ。」

「え!?結構自信、あったのに。」

「正解は飛行魔術だ。」

「え?でも、飛行魔術は最近だと使われないって聞いてるんですけど。」

すると、ラファエルはため息をつきながら言った。

「それは、現代の魔術師が貧弱だからだ。たしかに飛行魔術の魔力消費量は大きい。だが、それは現代の魔術式だからだ。今の魔術式は、誰にでもわかりやすいようになっている。だから、無駄な部分を除けば初級魔術と同じくらいの魔力消費量になる。」

「そうなんですか!?でも、飛行魔術って魔術戦でそんなに使うんですか。」

「今の魔術師たちは、魔族たちとほとんど戦ったことはないだろう。千年前は、上級魔族だけで国を作れるほどいたからな。」

「え!?それじゃあ、人間が簡単に滅ぶじゃないですか!」

「今の魔術師と、千年前の魔術師は違う。今の魔術師は、後方から魔術を放つだけだ。だが、千年前の魔術師は前線に立つ。」

「え!?それって、かなり危険じゃないですか?だって、魔術師ってあまり武術が得意な人たちではないじゃないですか。」

「現代だとな。千年前は今の騎士と同じ役割を果たしていた。魔族は空を飛ぶからな。」

「そうなんですか!?だったら、今魔族が攻めてきたらおしまいじゃないですか。」

「そうだ。今は魔族も数を減らしているから攻めれないだけだ。まあ、そんなわけで今日は飛行魔術の練習をする。」

「魔術式はどういうものですか?」

「これだ。」

ラファエルがアランに魔術式を見せると、アランは絶望した。

「なにこれ、いじめですか?こんなん、暗号解読のほうがマシじゃないですか!」

「お前ならできるだろう?」

「まあ、頑張ればできますけど、飛行魔術を使えるようになるまで2,3日はかかります。」

「1日だ。今日中にできるようにしろ。良いな?」

ラファエルの圧はすごかった。

「が、頑張ります。」

それから、アランは飛行魔術の魔術式と格闘していた。

「なにこれ!?まじで、意味がわからないんだけど。」

そこに、ビクトリアがやってきた。

「飛行魔術の術式ですか。難しいですよね。しかも、子供にやらせるとかラファエル様も鬼畜ですね。紅茶が入りましたよ。砂糖を入れましょうか?」

「そうだね。今の僕には糖分が必要だ。たくさん入れて!」

「承知しました。」

アランは紅茶を飲みながら休憩していた。

「あの魔術式は師匠が考えたの?」

「はい。私もやらされましたが、私は1週間ぐらいかかりました。ですが、それを一日でやらせるとは流石に難しいでしょう。」

「ビクトリアはなんでそこまでやらされてるの?ビクトリアはただのメイドでしょ?」

「少し事情がありまして...」

「そうなんだ。じゃあさ、なんかコツとかない?なんか規則性がありそうな気がするんだよね。それさえ掴めば直ぐにできると思うんだけど。」

「そうですね、この術式は何個かのパターンに分かれていたと思います。必ずパターンの最後には、同じ術式が来ますからわかると思います。」

「ほんと!?ありがとう!もうちょっと頑張ってみるよ!」

「頑張ってください!」

日没前...

「ほう、有言実行じゃないか。さすがは、俺が見込んだ弟子だな。」

アランは空を飛んでいた。

「これ、ほぼ魔力消費がないんですけど。どういうことですか?」

「魔物である竜や、精霊は空を飛ぶだろう。あいつらは、俺らが歩くことと同じように空を飛ぶんだ。だから、この術式にはそれと限りなく近くしている。」

「なるほど。だから、こんなに魔力を消費しないんですね。」

「そうだ。明日からは、飛行魔術を基本として魔術や魔法を練習していくぞ。」

「はい!」

次の日。

「昨日は飛行魔術の術式を解いただろう。この魔術の特徴を言ってみろ。」

「えっと、魔力の消費が少なくて燃費が良いと思います。術式さえ理解できれば、かなり強いです。多分、この術式だと魔力を込める量を増やすと、すごく速く移動できると思います。」

「そうだ。今日やるのは、高速で飛行する練習だ。お前は、雷属性だろう。だから、かなり簡単にできると思うぞ。」

「具体的にどうするんですか?」

「飛行魔術と、雷の魔術を組み合わせて、複合魔術を使うんだ。」

「は?これにまだ術式を加えるんですか!?」

「当たり前だ。それぐらいしないと、俺には勝てないぞ。」

「そうですか...」

「まずは、雷属性の特徴を言ってみろ。」

「雷属性は、まず属性持ちが少ないです。なので、雷の魔術を使う魔術師は重宝されます。次に、雷属性の特徴はどの属性よりも発動から着弾までが速いです。また、威力も強いので、魔術戦では自然属性の中で最強だと思います。」

自然属性とは、火、水、風、土、氷、雷のことを言う。光と闇は、かなり貴重であり国に数人程度しかいない。魔術の強さでは光と闇が強いが、使用者がほぼいないので、実質雷が最強だろう。まあ、その雷属性も少ないから、あまり意味はないが。

「そうだ。雷属性はとにかく速い。それを、飛行魔術に組み合わせるとどうなるかわかるか?」

「つまり、めちゃくちゃ速くなるということですよね。でも、雷魔術って他の魔術に比べて使用する魔力が多いと思うんですけど。どうするんですか?」

「そこで登場するのが光属性だ。光属性は単体でも強いが、他の魔術と組み合わせると化ける。」

「どういうことですか?」

「光属性は、他の属性を補助する特徴がある。光属性は魔力の消費を抑え、その上威力を上げる。かなり理不尽な力だ。」

「なんか、この世って理不尽ですね...」

「まあ、簡単に言うと飛行魔術に雷属性と光属性を加えるということだ。」

「つまり、僕に3つの魔術を複合しろと。」

「そういうことだ。」

「僕を殺す気ですか?こんなん、一ヶ月かかりますよ。」

「一週間待ってやる。頑張れよ。」

そう言って、ラファエルは去っていった。

「終わった。絶対に無理。一週間!?鬼畜にもほどがあるよ...」

それから、アランの修行が始まった。

一日目。

「まずは、光と雷を複合するところから始めよう。まずは、屋敷にある図書室で、複合魔術について調べよう。なんで師匠は、こういうことを自分で調べさせるのかな。さっさと教えてくれれば良いのに。」

アランは図書室に入った。

「まずは、これと、これ。あとは、これも見たほうが良いな。」

すると、一人の男がやってきた。髪は銀髪で、身長はラファエルより少し低かった。かなり若い男性だ。執事服を着ている。

「こんにちはアラン様、なにかお探しですか?」

「やあ、エドモンド。今は複合魔術の本を探してるんだ。」

「そうなりますと、これらの本が役立つと思います。」

エドモンドは、屋敷の図書室を管理していて、図書室にある本はすべてどこにあるか記憶し、魔術でそれを持ってくることができる。ちなみに、ラファエルやビクトリアと同じエルフだ。

「ありがとう!これは結構役立ちそうだ。」

「では、私は図書室の中にいるので、なにか探し物がありましたら声をかけてください。」

3時間後。

「なるほど。もとの術式をそのまま加えるだけじゃだめなのか。術式を途中から変えて、術式同士を組み合わせやすくするのか。外で試してみよう。」

アランは外に出てきた。

「これをこうして、こうすれば!」

そこには何も出なかった。

「あれ?この本の通りにやったんだけどな。おかしい。どこが違うんだろう。」

5時間後。

「無理だー!今日はやめにしよう。明日、どこが違うか一つずつ検証していこう。」

二日目。

「今日は術式を一から検証しよう。ビクトリア、よろしくね。」

「はい。複合魔術を見せれば良いのですね?」

「そうだよ。よろしく。」

すると、ビクトリアは火の嵐を作った。

「私の属性である、火と風をあわせました。」

「術式を見せてくれない?」

「これです。」

ビクトリアが術式を見せると、アランは驚いた。

「これって、上級魔術?かなり術式が難しいね。時間がかかりそうだ。」

「私はお茶を入れてきますね。」

30分後。

「これ、2日はかかるぞ。頑張ろう...」

「お茶が入りましたよ。置いときますね。」

「ありがとう。」

(すごい集中力。魔力のオーラが漏れ出ている。)

4日目。

「ラファエル様、アラン様が!」

「すぐに行く。」

ラファエルとビクトリアがアランの部屋に入ると、アランはベッドの上で寝ていた。

「アラン様はこの2日間、寝ずに魔術の修行をしていて、倒れてしまったんです。」

「ガキに無理させすぎたか。一週間休ませるか。」

すると、アランが起き上がった。

「し、しょう、ちょ、っと、たいちょ、う、くずし、ました、ごめ、なさい。」

「無理するな。俺も無理させすぎた。今日は寝てろ。」

「はい...」

(このガキは、家出する前はどんな境遇だったのだろう。じゃないと、体調を崩してここまで謝るのはおかしい。少し気をつけるか。)

* * *

「アランが来ないとは珍しいのう。妾はなにかしただろうか?」

* * *

5日目。

「アラン様、朝ごは...いない!」

アランは外で、魔術の練習をしていた。

「よし!できた!」

「アラン様!今日は休まないと...うそ、でしょ、」

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