「至高のスタッフ」
「アランか、妾の名前はアリシアだ。妾はここの精霊のようなものだ。これは二人だけの秘密じゃぞ。」
「わかった!」
「それにしても、おぬしは魔力量が多いな。妾が魔術と、魔力操作を教えてやることができるぞ。」
すると、アランは嬉しそうな顔をした。
「ほんと?ありがとう!師匠はいつも、『魔力操作が下手』って言うから、練習したいんだよね。」
「そうか、じゃあ夜になったら、毎日ここに来い。そしたら妾が教えてやる。」
「わかった!今日は、無理だけど明日から来るね!じゃあ!」
そう行って、アランは屋敷に戻っていった。
(アランか。あいつを鍛えたら、妾の目的に叶うかもな...)
1年後アランは6歳になった。
「かなり、上達したな。」
「アリシアのおかげだよ。」
アランは、あれから一年間、毎日アリシアのもとに来て魔力操作の練習をした。
「これからは、魔術も並行してやるぞ。」
「どんな魔術を練習するの?」
すると、アリシアは、指先から白い糸のようなものを出し、アランを捕まえた。
「なにこれ!?」
「これは、妾が最も得意とする魔術の一つだ。魔力を糸のようにして、操るものだ。」
アリシアが、糸を操るとアリシアが空を飛んだようになっていた。
「すごい!この糸、自由自在に操れるの?」
「そうだ。アランだと、奥の手で残したほうが良いだろう。この魔術は妾が独自で作ったものだ。だから、今まで誰にも教えたことはなかった。」
「そんな魔術を僕に教えても良いの?」
「おぬしなら、これを使いこなせるようになるだろう。今まで会ってきたやつは使いこなせないから、教えてこなかった。それだけだ。」
「じゃあ、教えて!」
こうしてアランは、アリシアの作った魔術を教わることになった。
「まずは、魔力を指から出す感じだ。やってみろ。」
アランが指に魔力を込めると、少しだけ糸みたいなものが出てきた。
「あ!でてきた!でも、まだ糸くずみたい...」
「それを長く、細くするんだ。これは、魔力操作の練習にもなる。だから、これからは毎日これを練習するぞ。」
「はい!」
次の日。
アランは、初級魔術を完璧に使いこなせるようになった。魔法は、少しずつではあるが、自分がイメージしたものを作れるようになっていた。
「おいガキ。そろそろ体力がついてきたから、神の加護を解放するぞ。」
「本当ですか!楽しみです!」
「じゃあ、そのネックレスで外してみろ。」
アランが、ネックレスに触れて、身体強化を解除した。
「なにこれ、なんか変わりました?」
「とりあえずジャンプしてみろ。」
アランがジャンプをすると、屋敷の屋根を軽く飛び越えた。
「なんか、軽い!あ、着地どうしよう。」
アランが落ち始めた。
「うーん、縦に着地?回りながら着地?それとも、うつ伏せ?」
アランは結局普通に着地した。
「じゃあ次は、山脈を走って来い。大体5分で良いな?」
「は?いつも5時間とかでしょ!?」
山脈一周は、日没から、早くなり5時間まで短縮できていた。
「ほら、さっさとしないと夕飯は抜きだぞ。」
「は、はい。」
アランはラファエルの言う通り、山脈を走り始めた。
「なにこれ!すごく速い!これだと、5分で一周できるかも!」
5分後...
「すごいですね!身体強化って人間が人間じゃなくなるみたいです!」
「お前がおかしいだけだろ。まあ、とりあえずこれでちゃんとした修行ができるようになったな。」
すると、ラファエルはアランを連れて屋敷に戻っていった。
「え?修行するんじゃないんですか?」
「今日はお前の武器を決める。」
「それって、もしかして神器を決めるんですか!?」
「そうだ。ついたぞ。」
そこには、大きな扉があった。
「ここは?」
「ここは、宝物庫だ。ここに神器がある。」
ラファエルが扉を開けると、そこには剣や弓などが乱雑に置かれていた。
「もしかして、これが神器ですか?雑すぎません?」
「別に、使わないから良いんだよ。じゃあ、お前の神器を選ぶぞ。」
「どうやって選ぶんですか?」
すると、ラファエルが手を広げるとそこに一つの剣が飛んできた。
「ここは遺跡の一部で、自分に使える神器を、遺跡の中から選んでくれる場所だ。俺の場合だと、聖剣ペンチャーだ。聞いたことあるだろ?」
「はい。いつ聞いても面白い名前ですよね。」
すると、ラファエルはアランのことをにらんだ。
「あのな、そう言う奴もいるけど、こいつはこの世界で一番と言われている神器だ。こいつの力は、人間に対しても強いが、こいつは魔物や魔族に対して特効を持つ。だから、魔族との戦争で、最強と呼ばれるんだ。」
「そうなんですね。確かに、魔王討伐にはすごく役立ちそうですね。」
「次はお前が選ぶ番だ。手を掲げてみろ。」
「わかりました。」
アランが手を掲げると、屋敷が揺れ始めた。
「師匠!?なんで揺れてるんですか!?」
「わからない。とりあえず、続けろ。」
アランが続けると、宝物庫の地面が割れ、一つの杖が出てきた。
その杖は、真ん中は赤く、両端は金色で装飾がされていた。
「それは!」
出てきた杖が、アランの手に収まった。
「お前が俺様の初めての持ち主か。ただの子供じゃないか。つまんねー。」
その瞬間、アランは杖を放り捨てた。
「師匠、これいらない。うるさい。」
「お前!俺様を放り捨てるとはどういうことだ!」
アランは杖を睨んだ。
「師匠、こいつ喋るんだけど。折って良い?」
すると、ラファエルが怒った。
「お前!それは、至高のスタッフだぞ!」
「至高のスタッフ?なにそれ。」
「お前は如意棒を知ってるか?」
「如意棒!」
如意棒。大昔に東洋にいたとされる妖怪が使っていたとされる、伝説の武器。
「至高のスタッフは、クリシオル帝国が如意棒を見つけ、それを魔術にも耐えうるように改造した。それが、至高のスタッフだ。」
魔術師がよく杖を持っているのは、杖が自分の魔術を強化するためである。杖は、基本的に魔力を強化したり、魔術の操作を簡単にする。また、詠唱を短縮できることもある。神器の中にも、杖があり、それは魔術を大幅に強化するものだ。
「え?でも、こいつ喋るんだけど。師匠には聞こえないの?」
「それは、俺様がお前に話しかけているからだ。その気になれば、そこのジジイにも話すことはできるぞ。」
「おい!今誰が喋った!」
「師匠、こいつです。」
アランは、至高のスタッフに指を指した。
「武器が喋る?神器でも聞いたことがないぞ。お前は誰だ!」
「俺様はクリシオル帝国の初代皇帝だぞ。頭が高いぞ、このクソジジイ。」
「アラン、そいつは捨てておけ。」
「も、もうちょっとだけ話してやる。俺様たちは、如意棒を見つけて、それに魔術も使えるように改良したんだ。だが、めんどくさいことにこいつは人を選ぶんだ。俺様が使おうと思っていたんだが、持てなくてな。それで、めんどくさくなったから、俺様がそのまま、武器に入ったってことだ。」
「は?その『めんどくさい』の工程を聞きたいんだけど。」
「まあ、簡単に言うと永遠の命がほしかったから、至高のスタッフの中に入ったんだ。だが、一向に俺様を持てるやつが現れなくてな。それで、何千年も待っていたんだが、なんか急にビビっと来てこいつだと思って、呼びかけていたんだが気づかずに通り過ぎたんだ。」
「ああ!あの時の声って、君だったんだ。」
「あの時の声?いつの話だ?」
「前に、アランさんが来てその時に、遺跡の中に入ったじゃないですか。その行く途中に誰かが呼んでる気がしたんですけど、気のせいかと思って通り過ぎたんですよね。」
「まったく、俺様の呼びかけを無視してどっか行くし、やっと見つけたら見つけたで、放り捨てるし。こんな奴が俺様の主で大丈夫なのか?」
「まあ、至高のスタッフよ。こいつはポンコツだが才能はある。もう少し様子を見てやってくれ。」
「ほう、少しは礼儀があるようだな。」
アランが、至高のスタッフを手に取った。
「なにこれ、軽い!師匠、振ってみても良い?」
「だめだ。外でやれ。」
二人は、外に出てきた。
「俺様の能力は、伸び縮みするのと魔術を強化することだ。」
「それだけ?」
「他にもあるわ!だが、多すぎて全部説明するのは疲れる。必要になったときに答える。」
「そう。じゃあ、とりあえず使わせてもらうね。」
アランが一振りすると、近くにあった気が一瞬で粉々になった。
「流石だな。伝説の神器と言われただけある。」
「伝説の神器?僕は、至高のスタッフなんて聞いたことないですよ。」
「それは、至高のスタッフについての文献がほぼないからだ。なにせ、今まで持ったことがあるのは歴史上、お前だけだからな。」
「師匠は持てないの?」
そう言って、アランがラファエルに至高のスタッフを渡すと、ラファエルの手が地面に叩きつけられた。
「ほらな。持ち上げようとしても、持てないんだ。しかも、無理やり持とうとすると魔術が発動して、対象を攻撃するんだ。」
「師匠はよくそんなことまで知っていますね。」
「そりゃ、見つけたのは俺だからな。」
「は?」
「この遺跡を探索したときに見つけたんだが、持とうとしたら攻撃され、痛い目にあった。だから、無理やり持とうとはしない。」
「なるほど。でも、剣じゃなくて棒って、どうやって修行するんですか?」
すると、至高のスタッフが喋り始めた。
「俺様を舐めるでない。俺様は、どの神器を使っても傷一つつかないぞ。剣だろうが、なんだろうがこの世界で一番強いのは俺様だからな。」
「まあ、基本は変わらないが、上達すると俺は教えられなくなる。だから、それは至高のスタッフに聞いたほうが良いだろう。」
「あったりまえだ。俺様が一番わかってるに決まっているだろう。そうだ、小僧とジジイの名前を聞いてなかったな。」
「俺はラファエルだ。こいつの師匠だ。」
「僕はアラン。よろしくね。」
「俺様はセシルとでも呼べ。あと、俺様はどこにいても持ち主が望めば戻って来る事ができる。試しに、空中に投げて、少し時間がたったら、『戻ってこい』と望め。そしたら、戻って来る。」
「わかった。」
アランは空高くに投げた。
「は!?ちょっと高すぎるぞ!」
「なんか言った?遠くなると、声が聞こえなくなるのか。静かになって良いな。でも、今はあれが必要だからな。」
アランが、手を掲げると至高のスタッフは勢いよく戻ってきた。
「師匠!これ、戦いに使えそうじゃないですか?」
「そうだな。まあ、明日からそいつを使って修行をするぞ。くれぐれも、屋敷を壊すんじゃねえぞ。」
「は、はい。」
アランが返事をすると、至高のスタッフは耳飾りになった。
「すごい!これなら、いつ何が起きてもすぐに使える!あ、でもいつもうるさいのは困るな。」
「俺様は優しいから、普段は静かにしといてやるよ。でも、戦いになったら喋るからな。」
「まじで!?ありがとう!じゃないと、捨てるところだったよ。」
「は?この俺様を捨てる?冗談はそこまでにしておけ。」
「え?冗談じゃないよ?だって、うるさいの嫌だから。」
「セシルよ、あいつには逆らわないのほうが身のためだ。」
「その忠告、肝に銘じるよ。」
「じゃあセシル、よろしくね!」
「頼むぞ、お前一様俺様の御主人様だからな。」
それから、アランは至高のスタッフ(セシル)という最強の神器を手に入れ、新たなる修行が始まった。




