沙門の声を聞かせ給へ
そもそも………猫又に手伝って貰うような部活とはなんなのじゃ………?
「おい。晴、明」
「お主らは、なんの部活に入っておるのじゃ?」
沙門を撫でながら2人に問う。案の定、晴ではなく明が口を開く。
「…僕らは「退魔師課外活動部」っていう部活に…」
………随分と奇天烈な名前の部活じゃな………普通、高校生の部活動って、剣道部とかサッカー部とやらでは無いのか…??
「どんな活動をしておるのじゃ?」
「…その名の通りだよ。人を喰らう悪い妖怪や、妖怪を使役して悪行を働く集団を祓うんだよ…」
………高校生のすることでは無いと思うがな…………
「ふむ…では、他の部員もみな、見鬼之才や陰陽之力があるのか?」
陰陽之力と、見鬼之才………陰陽師のように妖怪を祓う特殊能力と、妖怪を視ることができる能力の名称………
我は、好奇心には負ける。流石に高校生で陰陽師の活動をしている者など、二度と会える代物ではなかろう。
「…1人を除いてね………」
「1人?」
「うん。その子は僕達の同級生なんだけど…見鬼之才は無いから、僕があげた眼鏡越しじゃないと妖怪は視えないし、陰陽之力は無いけど、彼女の笛の音は特殊で、その音に陰陽之力を乗せると結界が張りやすい…というか、まぁ…僕らが未熟すぎて、彼女が居ないと壊れやすい結界しか張れないんだよね………」
………そりゃそうじゃ。不思議な力を持っておるとはいえ、まだ高校生じゃからのぉ………
「で、沙門を飼っているという部長とやらもそこに所属しておるのか?」
「そ…そうだよ…!」
さっきまで口を開く気配すらしなかった晴がようやく口を開いた。
「ふーん………」
我は沙門と目を合わせる。
「………2人、ちと目を瞑っておれ」
我の声に、2人は疑問を隠せないような顔をした後、目を瞑る。
我はそんな2人の額に指を当て
「………《弐人ニ沙門ノ声ヲ聞カセ給へ》」
小さく《呪》を唱えた後に
「もう、目を開けてもよいぞ」
我は晴と明に向かって言う。2人が目を開け
「…か…輝夜丸、今、僕達に何を…」
晴の言葉を遮るように、沙門が言う。
「今、輝夜様は御二人に私の声が聞こえるようにしてくださったのです。」
流暢に人間の言葉を喋る沙門に、2人は一瞬固まる。
「…驚いたよ」
数秒固まった後、明が輝夜丸を見て小さく声を上げた。
「大したことはしておらん。お主らと沙門の意思疎通を可能にしたわけであって、他の人間には沙門の声は届かぬ。」
我は小さく笑い、そして2人を見る。
「教えよ。その部長とやらの名を」
すると、暫くして明が声を上げる。
「………部長の名前は………」
「「賀茂 保乃香」先輩…だよ………」
………………
………いや、こっちも苗字変わっとらんのか………
次回!初の女性キャラ登場!(させるつもり)