日ノ本の未來に勝利亡くして───
とりあえず、晴明に言われた通りに神社にやってきたのじゃ!
もう話はつけてあるのか、神主らしき人物が湧き水に大幣を振って何かを唱えておった。
神主が唱え終わり、水場を離れる。不思議なことに、その水の周りには淡い光が舞っているように見えた。
我は、早速その水を手で掬って、一口飲んだ。
「!」
すると、我の躰に何か変化が現れたような気がした。
我の周りには、先ほどの光が舞い、我の躰はいつにも増して軽いように感じたのじゃ!
その時、竹藪から晴明が現れた。
「やぁ、輝夜丸。もう禊は済んだみたいだね?」
「あぁ…じゃが、これは一体なんなのじゃ?」
「君は天人から神様になったんだよ。」
…我は、晴明の言うことが判らずに、暫くの間唖然としていたと思う。
天人である我が神に?そんなこと、ある筈が無いのじゃ。
「人間だって、素晴らしい功績を遺していたりしたら、死後、神になることはあるよ。君の場合は天人だし、不老不死の薬を飲んでいたから、死んでなくても神になれたんだ。」
ほぅ…興味深いのぅ…ん?待て待て、何故、此奴は我が考えていたことが判るのじゃ?それに…薬を飲んだことまでは言っていないはず………
「じゃあ、今日から君の神名は………」
いやいやいや怖いのじゃ此奴。
「迦具夜比売命、だね。」
………????
「ひ…ひめ…?」
「うん。」
いや、何事も無いかのように穏やかに微笑むな!
「姫とは無礼な!我は男じゃぞ?!」
「あはは。判ってるよ〜」
判っていてつけたのか!貴様は!!
「俺がつけたんじゃないよ〜。上が勝手に名付けたから俺は君に伝えただけだよ〜」
「う、上…?」
我は晴明の言っている意味が、いまいちよく判っておらん。
「うん。この国でいう神の国「高天原」のこと。この国のすべての神は最高神様が名付けるんだ。神力が人に宿らば「現人神」。物に宿らば「付喪神」としてね。」
「な…成程…?」
「姫って言われるのが嫌なら、今までどおり名乗ればいいんじゃない?」
「………じゃあ、そうさせてもらうのじゃ!」
と、いうわけで我は天人から神様になった。
それから1000年間…色々なことがあったのぉ………
狛龍が天龍と地龍の2人になって、
黄金色の耳飾を貰ったり………
「───だから、だから貴方には持っていて欲しいのです………」
戦災孤児となり、
差別されていた赤毛の子供を助けたり………
「………どうして………どうして………俺達ばかりこんな目に………!!」
………………………………………………
伏見神宝神社が、一度朽ち果て………
1937年に再建された………
その時ばかりは、我も悦びを得た。
だが、それもすぐに終わり………
時は"大東亜戦争"
「………もし独りが辛ければ、戦争を否定しろ」
「国の為に散った人間を否定してはならない」
「………それでも尚、誰かを恨みたいのならば──」
"我ら神を恨め。憎んで憎んで、責め立てよ"
………………………
赤毛の孤児に言った言葉じゃ。
何故、今思い出されるのか─────
そして、大東亜戦争に「日ノ本の勝利」の筋書きは存在しない。
ただ、敗戦があるのみじゃ………………
「そうか………では…………」
「いつかその、"滝夜叉姫"の妖術とやらで…」
我を助けに来てみよ
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時は現代………
我は、今も伏見神宝神社にいる。
我の1000年間は…また今度、詳しくお聞かせしようではないか!
狛龍の2人は、今はもう
"居ないけれど"な
「あ、明………!そんなに急がないで………!」
「…晴、遅いよ。せっかく遠出してここまで来たのに………」
………若人の声………
また参拝客か………
よかろう。お主らの願い………
「叶えてしんぜよう」
我が無意識に2人の目の前に降り立つ。すると………
彼ら2人は、"驚いたように目を見開いた"。