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二年後と先生

「……月日が流れんのは早いな」


 そう言いながらクロスは空を見上げた。

 村攫いの事件を解決してから二年が経ってクロスは七歳になった。

 姉のリニスと兄のライドは予定通り九歳から通う冒険者学院に入って六年間の間研鑽を積み成人年齢である十五歳まで学院で勉学に励むのだ。

 しかしクロスの場合はそうするわけにもいかないので家の農家を手伝いつつ、木刀を素振りしたり、魔獣を討伐したり、走って体力をつけるなど地味な鍛錬を積み重ねていた。


「俺も学院に行きたいって言えば良かったかな?」


 学院からの恩恵はすごい。

 冒険者登録をすると五級冒険者からスタートするのだが学院を卒業すれば三級から冒険を始めてそこから自分だけのクランギルドを作る事が出来る。

 ちなみにクランギルドとは普通のパーティ人数は最大四名だが四名以上の所属してると言われるパーティの名称だ。

 ソロやコンビで活躍する人もいるらしいがその数は少ない。

 ちなみにギルドにはギルドランクというものが存在しているらしくEからSで階級を表す。

 まぁ一人でのんびり農作しているクロスには関係ない事だ。


「だー!! オレも強くなりてぇ!」


 そう言ってさっきまで振っていた木刀を放り投げてクロスは駄々をこねた。


「まぁしょうがねぇ! 地道に鍛錬だ!」


 そう言ってクロスはヤケクソになって村を一日中走りまくった。


「ぜぇ、はぁぜぇ」


「……クロス大丈夫? だいぶ疲れているけど?」


「だ、大丈夫だよ母さん。 お、オレ体力つけているだけだから」


「……なぁ本当に大丈夫か? クロス何かあれば母さんと俺に言うんだぞ?」


「だ、大丈夫だよ父さん!」


 そう言いながらクロスは学院に行けない悔しさを飲み込んでシチュー食べた。


「……俺だって学院に行きてぇよ」


 そう言いながらベットに寝転ぶ。

 クロスは最初冒険者になる事を諦めていた。

 だがレクラニアとの出会いと村攫いの事件を得てその認識が変わり冒険者になってみたいという思いが芽生え始めていたが農家である我が家では姉であるリニスと兄のライドの学院代で精一杯である為クロスはわがままを言えずにいた。


「オレだって先生が見つかれば強くなれんのによ」


 手を伸ばして手の平を開いたり閉じたりする。


「寝よう」


 そう言ってクロスは不貞腐れながら眠りについた。



「母さん、父さん猪狩ってくるわ」


 そう言ってクロスは木刀を片手に狩りに出た。



「あれ? 迷ったかな?」


 そう言いながら二年で慣れた森を歩く。

 すると黒い毛色をした狼が倒れていた。


「ま、魔獣か!?」


 クロスは驚いて木刀を向けた。

 すると声が聞こえた。


「……腹が減った」


「……えっ? もしかして狼の獣人?」


 これがクロスの魔剣士の先生であるマクロウの出会いだった。


「いやぁすまねぇな。 お前の弁当貰っちまってよ!」


「……いや別に空腹で倒れてるだけだったなんてびっくりだ」


 ゲラゲラ笑うマクロウに対してドン引きながらクロスは苦笑いを浮かべた。


「しっかしお前見た感じ剣士か?」


「……剣士ってわけじゃないけど姉が剣が強くってただそれで剣を持ってるだけだ」


 自信なさげにクロスはそう呟いた。


「……お前僅かだが魔力あんな? もしかしたらお前魔剣士の才能あるかもな」


「……魔剣士?」


 クロスは聞き慣れない単語に首を傾げた。


「あーそいや名乗りがまだだったな。 俺はマクロウ。 お前は?」


「……クロス」


「クロスかぁいい名前だ。 飯を食わせて貰ったお礼だ。 お前に魔法の剣を教えてやるよ! 六年間面倒見てやるよ」


「えっ! いいの? ありがとうマクロウ。 すごい!」


「おうそうだぜ! ああそれとこれからは俺の事は先生と呼びな!」


「わ、分かりました! 先生!」


 こうしてクロスは冒険者学院に行かず狩りと農家にマクロウの元で修行と忙しい日々を送った。

 最初の一年はとりあえず体力をつけるべく走ったり、マクロウと隠れんぼと鬼ごっこをした。

 その間に魔獣が現れた際は自力で討伐してその肉はクロスと家族そしてマクロウの胃の中へと入っていった。

 二年目は互いに剣の打ち合いをして経験を積んだ。

 マクロウはとても力が強く俊敏で何度もクロスは鍔迫り合いを演じたが何度も押し負けた。

 三年は精神を鍛えるべく瞑想を行なって自身の魔力を感じるトレーニングをしながら魔法を覚えそこから拳の使い方を教わったりもしたが魔法も、拳も、剣も全てクロスはマクロウに勝てず負けた続けた。

 たまにサリシャとラードから最近傷だらけだがどうしたと聞かれた際は自己鍛錬のし過ぎと誤魔化しておいた。

 そして残りの三年はそれをひたすら繰り返して実力をつけていった。

 十三歳になったある日だ。

 クロスの村に騎士団がやって来た。


「すまないここにマクロウという獣人を知らないか?」


「……えっ? し、知りませんけど」


「知らないわね?」


「お、オレも知りません」


 クロスはシラを切ってそのまま騎士団が村の外へ出て行ったのを確認するとそのまま外に飛び出してマクロウの元へと急いだ。


「せ、先生! 先生!」


 すると信じられない光景を目にした。


「ぐっ!?」


「大人しくしろ! 罪人マクロウ!」


「……えっ? 先生?」


 クロスが見た光景はマクロウが騎士団によって取り押さえられている光景だった。


 

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