潜入と焼き討ち
「……んでレクラニアは何か情報持っているのか?」
クロスはレクラニアの顔を見ながら話す。
「こっちに人の血の匂いがする」
そう言いながらレクラニアは指を指して歩く。
「なんでそんなのが分かるんだよ?」
「私の血筋の力としか言いようがない」
「そうか」
クロスは興味なさそうに淡々と首を縦に振った。
「着いた」
クロスとレクラニアの前にはボロボロの屋敷があった。
「おいこんな所に村攫いがいんのか?」
「しっ! 隠れて!」
そう言ってレクラニアはいきなりクロスを抱き抱えてそのまま茂みへと押し倒した。
「いてぇ! なにすんだよ!」
「黙って!」
「んごごぁ!?」
焦った表情を浮かべてレクラニアはクロスの口を塞いだ。
クロスは何故無理やり口を塞がられいるのかが分からず逆に声を出そうとしたがしたくても出来なかった。
「それでさーあいつしくじって腕無くしたんだぜ!」
「まじかよ! ウケるなぁ!」
すると男達が喋っている声が聞こえた。
どうやらレクラニアが自身の口を塞いだのは男達に見つからないようにする為だったらしい。
「……悪い足引っ張ったな」
「別になんとも思ってない」
クロスが素直に謝るとレクラニアの表情は険しく眉を寄せて不機嫌に声を出しながら馬乗りの体勢からそのまま立ち上がった。
「……これ食べて機嫌直してくれよ」
そう言ってクロスは夜の非常食として持っていたビスケットを手渡した。
「……ビスケット?」
「おっ! ビスケット好きなのか! よかったぁ! やるよ」
「……ありがとう」
「へへよかったぜ!」
「じゃあ私からもこれあげる」
「えっ? 何これ?」
「ダガーナイフ。 子供用でとても軽くて投げやすい」
何故かビスケットのお礼に暗殺者が使いそうなダガーナイフを貰ってクロスは戦慄したがせっかくなので貰っておく事にする。
「あ、ありがとう大事に使うよ」
「かっこいいよ?」
「何がかっこいいんだ!?」
そんなコントを繰り広げてから二人はそのまま屋敷に忍び込む事に成功した。
「……暗くて怖いな」
「黙って」
「わ、分かったよ! すまねぇなもうすぐで姉と兄を救出出来ると思うと思わず口が緩んでよ」
「……気を引き締めて」
「分かったよ」
そんな軽く口を叩きながらクロスとレクラニアは廃墟の屋敷を歩いて村攫いを探し始めた。
「んっ?」
リニスが目覚めると暗い地下だった。
「えっ? ここどこ?」
頭がふわふわする。
手足も少し痺れて動かない。
「んっ?」
「ライド!」
するとライドが目を覚ました。
「お姉ちゃんここは?」
「……恐らく村攫いの奴らに攫われたのねチッ!」
リニスは思いっきり舌打ちをして目の前にある鉄格子を見る。
「……斬りたいわねこの檻」
年頃の女の子が言うべきではない言葉を文字通り殺気を込めて言い出した。
「お、お姉ちゃんこ、怖いよ?」
「大丈夫よライドもしもの時があったらお姉ちゃんが村攫いをボコボコにしてやるから」
思いっきりの笑みをライドに浮かべてやるとライドの顔が真っ青になった。
「ん? 大丈夫ライド顔が真っ青よ?」
「だ、大丈夫だから!」
そう言ってライドは首を振って自分が無事である事をアピールして来た。
「そう。 ならいいわねライド? 私のこれからしたい事分かるわよね?」
「えっ? ま、まさか!」
ライドが驚愕の表情を浮かべる。
「焼き討ちよ!」
リニスは暴君のように覇者の笑みを浮かべた。
だが彼女は知らないこの行動がクロスの大きな助けになるとは微塵も知らない。