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村攫い

「あーあ本当にクロスって腑抜けねライド!」


 リニスは口を尖らせながらライドに向かって愚痴を吐いた。


「まぁまぁお姉ちゃん。 クロスにはクロスのやり方があるんだよ」


「さぁ? 私はクロスのいい所がさっぱりだわ」


 ライドのフォローにリニスは呆れたようにため息を吐いた。


「早くしないとみんな待ってるよ」


「そうね。 さぁぱあっと遊んで後でクロスに構ってやろうっと!」


 そう言いながらリニスが歩いていた時だった。


「えっ?」


「リニス! ライド逃げろ!」


「「お、お父さん!?」」


 目の前にリニスとライドの父親であるラードが見知らぬ男達にボコボコにされていた。


「オラァ! さっさとガキがいる家を教えろや!」


「そうだ! そうだ!」


「あっ!? がぐっ!?」


 そう言いながら男達が地面に転がっているラードの顔面と腹を蹴りまくってある姿を見てリニスはすぐさま腰に身につけた木刀を抜刀してそのまま男達二人を打ちのめした。


「ぎゃ!?」


「ぐげぇ!?」


「お父さんをいじめるなぁ!」


 リニスはガキ大将な所はあれどしっかりと家族を愛しているいい子なのでどうしても家族がいじめられている場面に遭遇するとすぐさま手を出してしまう正義感を持った子供だったがそれが今回裏目に出てしまった。


「がっ!?」


 いきなり死角である背中から電流を受けてリニスは意識を失った。


「お、お姉ちゃん!」


「うるせぇよガキっ!」


「うっ!?」


 ライドが気絶したリニスを心配して駆け寄るが木刀を受けても正気を保っていた男に鳩尾を殴られて気絶した。


「ち、ただのガキだと思って油断したぜ」


「まぁこれで十二人くらいはガキ共を攫う事が出来たなぁ」


「ヒュウよく見たらこの女のガキ別嬪だなぁけれど性格がじゃじゃ馬なのが残念だな」


「いやいやそれを調教するのがいいんだろ?」


「そりゃそうだな」


 そう言って男達はリニスとライドを担いで村を出て行った。

 こうして場面はラードが妻のサリシャとクロスの所へやってきた場面へと戻る。


「……ま、まさか村攫い!?」


「……ああそうだ」


「……お母さん村攫いってなに?」


 クロスはいきなり出た単語の意味が分からずに首を傾げた。


「……クロス私達が村人として生きていく上で気をつけなければいけない事が三つあるの」


「三つも?」


「ええ」


 そう言いながらサリシャがクロスの肩を掴みながら目線を合わせた。


「まず一つは災害。 災害が起きたら農家で食いぶちを稼ぐ村人達は生きていけないから常に災害に備えているわ。 次に魔獣。 これも家の畑や人命を守る為に村全体で討伐する。 そして三つ目が村攫い」


「……それがどうしたの?」


「いい? 村攫いっていうのは文字通り村を襲い、人を攫う連中の事よ。 特に奴らは女子供を攫って金にするクズな連中。 まさかうちの子達が攫われるなんて思っても見なかったわ」


 するとサリシャの顔がみるみると青くなりその場で崩れ落ちた。


「サリシャ!」


「あぁ貴方! リニスとライドは無事かしら!? あ、あの子達わ、私の幼少期に似て意外と繊細でやんちゃだから今頃村攫いの連中に殺されるかもしれないわ!」


「サリシャ! しっかりしろ!」


 うわごとのようにサリシャが呟くとそのまま気絶してしまった。


「……悪いクロス。 家で大人しくしてくれるか?」


「……分かったよ。 父さん」


 クロスはそのまま家に戻り、自分のベットで昼寝をした。




「あなたごめんなさい。 気を失ってしまって」


「別構わないさ。 さぁもう寝よう」


「……悪いな母さん、父さん。 オレ待つなんて出来ねぇわ」


 その日の夜クロスは右ポケットにビスケットを入れて、サリシャとラードが寝たのを確認するとそのまま外へ飛び出してリニスとライドの探索を開始した。



「……しかしどうしよう」


 クロスは外に出たはいいものの手がかりがなかった。


「……誰?」


「ひゅう!?」


 いきなり首に刃物が当たった感触がしてクロスは思いっきり肩を跳ねた。


「……村攫い? あなた?」


「ち、ちげえーよ! お、オレはクロス! ただの村の子供だ!」


「そう」


 すると首に当たっていた刃物がなくなりクロスはそのまま背後を見た。


「……き、君は?」


 クロスの目の前にはフードを被った人物が現れていた。


「おい顔見せろよ!」


 そう言ってクロスが無理やりフードを脱がすと目が合った。

 綺麗な青い瞳をした少女だった。

 無機質で神秘的な顔をしていると思った。


「や、やめて!」


 すると目の前の女の子はまたフードを被り直した。


「……す、すまねぇ悪かった」


 クロスは無理やりフードを脱がした事を謝った。


「そ、それよりもさ! 君の名前は?」


「レクラニア」


「へー綺麗な名前だな」


 呑気な声を上げてレクラニアを褒めた。


「それより村攫いがここにいるって聞いたから来たんだけど知ってる?」


「オレはこれから探そうとしていたんだけど一緒に村攫いを壊滅させようぜ!」


「いいよけれど私の指示に従って」


「おう分かったぜ!」


 こうしてクロスとレクラニアはコンビを組んで村攫いを探す事にした。

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