生命の石
「……時間がどれだけ経ったんだろう」
クロスはそう言いながら壁に背中を預けてため息を吐いた。
「うう」
「あぁ」
「……ゼグ、リターナ」
クロスは考える。
どうしたら二人を蘇生する事が可能なのか。
もしくはいっそこのまま二人に殺された方がいいのか。
「……どうしたらいいんだ? あれ?」
急にズキンと頭痛がしてそのまま意識が遠くなりそのまま眠りについた。
「起きろ。 起きろよ」
「……あ?」
クロスが目覚めるとそこは草原だった。
「……せ、先生!?」
いきなり目の前にクロスの先生であるマクロウが現れて驚いた。
「お、俺し、死んだのか!?」
クロスは驚いて飛び起きてそのまま後ずさる。
「まぁ待てよクロスまだお前は死んじゃいねぇ。 強いて言うなら死霊使いの作った空間にいたせいで生死の境目が曖昧になっているんだ」
「……わ、分かりません先生! お、オレどうしたらリターナとゼグを取り戻せる事が出来るんですか!」
そう言いながらクロスは頭を下げて懇願した。
「……いいかクロスこの世に死者を残留させる事なんざ限られてんだよ。 既にあの二人の魂はもうねぇ。 それをお前は分かってるはずだ」
「で、でもせ、先生はお、オレの目の前にいるじゃないですか!」
「……俺はお前の記憶の中にいる俺であって、俺が言いそうな事をただ脳内で再生してるだけだ」
そう言いながらマクロウは険しい顔をしながらクロスを見る。
「で、でもお、オレはオレを許せない!」
「……だったら生きろ。 生きて色んな土産話を作れそうして死んだらそいつらに色んな話をしてやれ」
「……先生が言いそうな事だ」
「そうだろう? だから夢から目を覚ませ」
マクロウに頭を撫でられてクロスは涙を流した。
「……オレはまだ冒険者出来ますかね? 先生」
「……お前次第だ」
クロスの泣き言にマクロウはただ真剣な表情でクロスを見てくる。
どこか安堵の様な顔をしており、それが不思議に感じた。
「先生?」
「言っただろう? これは夢ださぁ行け!」
マクロウはそう言うと辺りに霧が立ち込めて来てマクロウの姿が朧げになる。
「せ、先生! ま、待って下さい先生! せんせー!!」
そう叫びながらクロスは目を覚ました。
「はっ!」
クロスは目を覚ますと何故か腕輪が外れている事に気づいた。
「えっ? な、なんで腕輪が取れているんだ? そ、それにせ、先生の剣がなんでここに?」
クロスは起きた不思議な現象に驚きながらも先生から譲り受けた剣を持ってそのまま檻を真っ二つに斬って壊した。
「うう」
「ああ」
「ごめんリターナ。 ゼグ。 待っててくれ」
そう言ってクロスは廊下を走ってディレックとアナンシーの元へ向かった。
「あらぁ? あなた脱出したの? よくだしゅぐぁ?」
すると廊下を歩いていたアナンシーを見つけてクロスは先生直伝の気配を殺す技を使い接近し、アナンシーの喉を斬ってそのまま胸を貫いた。
「……レクラニアの技見ててよかったな」
クロスはそう思いながらディレックを探し始めた。
「……おやおやぁ? よく来ましたねぇ。 この軍勢を相手に戦うつもりですか? クロス君?」
「……馴れ馴れしくしてんじゃねぇよ」
「ふふ、あなたも殺して私のコレクションにしてあげましょう! 行きなさい! 私の軍勢よ!」
すると黒い鎧の集団がクロスを囲む。
「……先生よりも温いぜ」
そう言ってからクロスはそのまま加速そして一瞬にして一万の軍勢を斬り捨てた。
「えっ? ど、どうしてそんな動きが出来るのです!? あ、あなたの冒険者の等級は五級なはず! な、何故! そ、それに腕輪も何故外れて! し、しかも何故その剣を持っているのです!? そ、それは闇市で売ったはず! な、なのに何故!」
「うるせぇよ」
そう言ってクロスはディレックの体を袈裟斬りして黙らした。
「……終わったか」
「いやはやこんな化け物がいるとはのぉ」
「……誰だお前」
「わしは錬金術師のガーガニ。 よろしく頼むのぉ」
クロスの背後にいきなり白髭を生やした老人がいた。
「……お前も闇の人間か?」
「そうじゃよクロス君よくわかったのぉ?」
「オレをキメラにする為に呼ばれた錬金術師か?」
「正解じゃ。 わしの不老不死の研究の為に死んでくれ」
そう言ってガーガニが大量のゴーレムを作り出して襲いかかってきたがクロスは問題なく一刀両断し、そのままガーガニの首を刎ねた。
「……めんどくさい。 もう帰りた……い?」
「はっはは! 無駄じゃよクロス君言ったじゃろ? わしは不滅の体じゃて!」
「……生命の石か」
自分の首を治すガーガニを見てそうクロスは気づいた。
マクロウから聞いた所によると自然の魔力と薬草そしてたくさんの魔獣の素材を使って作るのが生命の石という蘇生アイテムらしい。
そして錬金術師は長生きの為に自身の心臓を生命の石として代用する事があると聞いた。
「……待てよ?」
クロスの中にアイデアが思い浮かんだ。
「……よし」
「はえ?」
「あばよ錬金術師のジジイ。 おかげでオレの仲間が助かるぜ。 オレは運がいい」
そう言ってクロスはガーガニの間合いに入りそのまま胸にある心臓の代わりとなっている生命の石を抜き取った。
「ま、待て! そ、それはわしの研究の成果だ!」
「知るかフレイム」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
クロスはそのままガーガニを燃やしてそのままゼグとリターナの元へ走った。