贖罪
「……ここは?」
クロスが目を覚ますと牢が見えた。
「……えっ? 何ここ」
クロスは立ち上がると自身の手に腕輪がされている事に気づいた。
「魔力を感じねぇ」
自身の魔力を感じると全く体全体を巡っていない事に気づいた。
「お、俺捕まったのか?」
辺りを見回しても岩と牢しか見えない。
するとコツコツと音がした。
「だ、誰だ?」
クロスは臆病風に吹かれながら牢を見つめていると男女二組がクロスの牢の前に止まった。
「はぁい? クロス目が覚めたかしら?」
「ふふ、私の幻術に掛かってくれて本当にありがたいですねぇ」
女は剣士でオレンジ色の髪に褐色の肌をしており、男は魔術師で緑の髪をした痩せすぎの男だった。
「……リニスとライドはどうした?」
クロスは男女二組を睨みながら質問をした。
「まぁ。 先に聞く事が姉と兄の事なの? まぁそれは私達よ」
「私達?」
「ふふ、この白い仮面をつけるとね魔法が無くても変身出来ちゃうのほら!」
女が白い仮面をポケットから取り出して仮面を被るとリニスに変身した。
「……なんでオレの事を知っていたんだ?」
クロスはリニスに変身した女に驚きながらも質問を続けた。
それよりも何故クロスの事をリニスとライドの弟だと知っているのか分からなかった。
「まぁそれはね。 私達一回リニスとライドと戦った事があるのよ三年前にね? その時にリニスとライドの事を殺そうとしてあの子達が持っている武器を売ろうとしたんだけど返り討ちにあっちゃてぇ。 その時二人から弟の話を聞いて思ったのよ。 あぁこの二人の弟も殺そうって!」
女がそう言うと自虐な笑みでクロスを見た。
「うっ!」
その殺気の悍ましさにクロスは吐き気と悪寒を覚えたがどうにかとどまった。
「まぁ私達の計画じゃあ、あなたを殺した後に絶望する二人をなぶり殺すって言う計画立ててたけど気が変わっちゃった! あなたを魔獣に改造して二人に刺客として送り込む事に決めたわ!」
そう言いながら女が光悦とした表情を浮かべて舌なめずりする。
「ふふふ、それとあなたにサプライズですよ。 クロス」
男が笑うとさらに男女二人組が現れた。
「うぁぁ」
「あぁぁぁぁ!!」
「……ゼグ……リターナ」
それはゼグとリターナであった。
二人共肌灰色で唸り声しか上げていなかった。
「お前……死霊使いか」
「おや? 死霊使いを知っているのですか? 嬉しいですねぇ!」
すると男が笑ってクロスを見てくる。
「実はあの黒い鎧は騎士団の死体でしてね! 一万はいるんですよ! 素晴らしいですよね!」
「うわぁ出た。 ディレックの死霊自慢!」
「アナンシーさんの加虐趣味よりいいですよ?」
知りたくもなかったが男がディレック、女がアナンシーというらしい。
クロスは檻と腕輪がなければ今すぐ蹴破って二人を殺してやりたかったがそれは出来ない。
体力がないのもあるが拘束されていては何も出来るはずなかった。
「よくも! よくも! オレらを罠に嵌めて殺し! 身包みを剥いで! 死霊にしてたのかよ!」
「ええそうよ? いいじゃない弱者は強者に従うものよ坊や? 後、もう少しでいい素材が見つかりそうだから待っててね? ここに錬金術師を呼んであなたをキメラにする予定だからよろしく! じゃあねー」
「あなたの死を楽しみにしていますよ? あぁリターナとゼグ君は見張りとしておいておきますね? ふふ、あなた達はパーティなのですから!」
そう言ってアナンシーとディレックはクロスの目の前から消えた。
「……オレ死ぬのか」
クロスは絶望した。
仲間は死に、再開した姉と兄は変装した極悪人でそして自身の最後はキメラになる為の材料だとは思ってみなかった。
「……あぁ終わるんだオレ」
膝から崩れ落ちてクロスは精神的に追い詰められていた。
「……ゼグ……リターナ」
「うぅぅぅ」
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
仲間の二人に声をかけても何か起こる事はなかった。
「……ごめん。 ごめんな二人共オレのせいでうぅぅぅぅぅあぁぁぁぁぁぁ!!」
クロスは泣いた自分の喉が枯れるまで泣いた。
それがたとえ贖罪にならなくても。