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全力でBのLしたい攻め達とノンケすぎる悪役令息受け  作者: せりもも
Ⅲ ヒーロー大会

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1.布告

お待たせしました! 3章再開です!

「ハムシーンの過ぎ去りし朝、英雄トーナメントを決起する。優勝者への賞品は望みのまま。我こそはと思わん者は、奮って参加せよ。

 王 サハル=カフラー・デ・エメドラード」


 エメドラード国王から布告が出された。

 優勝すれば、豪華な賞品がもらえる。馬車でも土地でも官位でも、望みのままだ。

 国内からだけでなく、外国からも、続々と挑戦者が訪れた。




 「ホライヨン、聞いた?」

 母タビサが言うと、ホライヨンが目を輝かせる。

「ええ、母上。英雄トーナメントの話ですね?」

 英雄大会(英雄トーナメント)。胸がわくわくする。ホライヨンは、自分より強い者を知らない。


「チャンスだわ」

タビサの目が輝いている。

「はい。是非ともトーナメントに優勝して、たくさんの鋤や鎌、それに牛と馬を貰いましょう。あと、穀物の苗も。ハムシーンの後には、雨の季節が訪れます。水が引いたら、いよいよ、農業の季節です。芋の苗も貰いましょう。それからベリーの苗も」


「ホライヨン」

母が呼ぶ。改まった声だった。

「お前はこの国の王になるべき者なのよ。そのお前が、芋? ベリー?」


「芋は貯蔵が効き、昔から幾多の民の飢えを救ってきました。芋は救世主ですから、どうしても褒美に貰わなければ」

「はあ」

滔々とホライヨンが述べ立て、タビサは呆気にとられた。なおもホライヨンが続ける。

「またベリーは、生活に喜びを添えてくれます。赤いいちごは大変甘く、キイチゴには肌を刺す棘がありますが、熟すまで我慢できれば、酸っぱさがなくなります。ほんの少しの辛抱です」


「お黙り!」

たまりかねたように母が叫んだ。

「ああ、私は育て方を間違えた。村の子ども達に混じっているうちに、この子は、王者としての誇りを失ってしまったのね」

「王者の誇り? それは、食べられるのですか?」


 「この、タワケ者!」

母はいきなりホライヨンをぶったたき、ホライヨンは目を白黒させた。

「民のかまどを心配することが、王者の資質でしょう? 大概の時代劇のオープニングではそうです」

「そこじゃない!」


 いつの間にかタビサは、葦の束を手に持っている。ホライヨンは逃げ腰になった。葦は水草だが、束でぶたれると、結構痛いのだ。


「そもそも褒美などというものを当てにする根性が許せない! それも、王位簒奪者サハルの出す褒美など!」

「たとえ誰からのものであっても、ご褒美は欲しいです」

「この物欲オバケのバカ息子が!」


 襲ってくる葦の束を、両手をクロスして防ぎながらホライヨンは悲鳴をあげた。


「物が欲しいわけではありません。いえ、嘘はいけません。芋やベリーは喰いたいです。でも、第一番は、誰かによしよししてもらいたいだけなんです!」


 厳しい母にひたすら怒られて育ったホライヨンは、とりあえず誰かに褒めて欲しいのだ。


「それじゃまるで、私が毒親みたいじゃないの!?」

「違うんですか?」

「私はただ、帝王教育を施しただけ。感謝してほしいものだわ」


 ぎろりと母は我が子を見据えた。褐色の肌の子を。


「肌の色なんか関係ないって言ったじゃないですか!」

 素早く母の目線を辿り、ホライヨンが叫ぶ。

 確かに以前、タビサはそう言った。

「私がそう思っても、民や諸外国の為政者がどう思うかよ! お前は通常以上に王者の器を示さなければならないの!」

「人の目なんか気にしなければいい!」

「あまり気にしなさすぎるのも問題よ!」


 すばしこく逃げるホライヨンを、タビサは、一回も打ち据えることができない。完全に手を読まれている。


「ふん。長く親子をやっているのも問題ね!」

憎々し気にタビサが言い放つ。

「はい。母上の薫陶のタマモノです」


 息も切らさず、ホライヨンがまじめ腐って答える。

 なおも打ち据えようと踏み込み、やはり今一歩のところで取り逃がしたタビサは、葦の束を放り投げた。


「この国が貧しいのは、サハルのせいだということはわかっているわよね?」


 かつてエメドラードは、山と海の国だった。決して豊かではないが、風景から食べ物、生活の糧に至るまで、山はあらゆる恵みをもたらした。

 しかし、親王サハルが即位してからというもの、国は荒れ果ててしまった。


 サハルは、自分の兄ダレイオを殺して、王座を奪った。殺されたダレイオは、タビサの夫で、ホライヨンの父でもある。本来なら、ダレイオの後を継いで王になるべきはホライヨンだったというのが、タビサの主張だ。


 兄王を殺した後、サハルは、人が変わったように狂暴になった。些末な粗相を理由に従者を殺し、大臣達は悉く首を切られた。比喩ではなく、本当に首を刎ねられたのだ。

 誰も、軍さえも王を諫めることができない。王家の魔法を使われたら、この国一番の剣の遣い手でさえ、サハルには叶わない。


 彼の怒りは、無辜の民にまで及んだ。火災、水没、噴火……あらゆる災厄が、各地の集落を襲った。どれも面白半分にサハルが起こした災害だ。


 王による無差別な殺戮に怯え、人々は国を捨てて逃げ出した。


 生命を司る兄ダレイオと違い、土属性のサハルは水を嫌い、さらには山や密林を嫌った。山間部にまで広がる熱帯雨林には、不気味な虫や、蛇が多いからだ。周囲に人がいなくなると、王の憤怒は、国土そのものに向けられた。


 原生林の木々を薙ぎ倒したのは、一瞬だった。サハルの唱えた僅か数語の呪文で、木々は一斉に消え去り、山は崩落した。以前はこんこんと湧き出ていた清水は、地中深くに封じ込められてしまった。

 平らになった大地に草木は茂らず、国土は荒れて砂漠化していった。





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