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全力でBのLしたい攻め達とノンケすぎる悪役令息受け  作者: せりもも
Ⅰ 悪役令息

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16/30

凱旋


ヴィクトリー号が大きく揺れた。


「ご無事でしたか、サハル殿下!」

ラシャド提督だった。傍らに戦艦アルシノエの艦長もいる。

「貴方の作戦のお陰で、わが軍は大勝利ですぞ。ささ、メラウィーの軍港へと凱旋致しましょう」


「お、おう……」


胸が熱くなった。俺の土魔法が悉く打ち負かされていった陰で(というか、発動さえできないでいた間)、ラシャド提督は粘り強く戦い、海戦の勝利を勝ち取ってくれたのだ。


「お急ぎください、殿下。ヴィクトリー号が錨を上げましたぞ」


くそっ、ヴィットーリア。せっかちな女。

俺は、下を覗き込んだ。相変わらず黒い波が、底知れず広がっている。


「殿下?」


提督は、全てを察したようだった。両腕を広げる。


「殿下。いらっしゃい。僭越ながら、私めがお抱き留め申し上げまする」

「え?」

「さあ、この腕の中へ」

「及ばずながらわたくしも」


ラシャド提督の隣で、アルシノエ号の艦長も両手を広げた。


「艦長、あんたはいいよ……」


そうだ。

俺はやればできる子。こんな狭い距離を跳梁するなんて、朝飯前のはずだ。

ヴィクトリー号の舷側を軽々と飛び越えた。

そしてなぜか、ラシャド提督の腕の中ではなく、アルシノエ号の艦長を真上から踏みつけて着地した。





勝利の報を携え、敵艦の旗をたくさん捕獲したラシャド提督を従え、俺は首都に凱旋した。

そこに、愛しいエルナの姿はなかった。わが息子、ルーワンの姿も。


ただダレイオ(国王)だけが、満面の笑顔で出迎えた。


「おおお、よく帰った、サハル。わが愛しの弟よ」

「愛しの弟じゃねえよ。エルナはどうした? ルーワンは!?」

「よい。お前さえいれば、それでよい」

「全然良くない! ダレイオ(兄貴)の嫁は? なぜ出迎えにこない?」

「構わぬ!」


話にならない。


「おじちゃま!」

暑苦しい塊が空から降ってきた。

甥のホライヨンだ。

「おじちゃまっ!」


俺の腕の中に着地した彼は、勝ち誇った顔をして笑いやがった。うまく畳めなかった羽が暑苦しい。


「女官長!」

「はいはいはい!」

「早くこいつを俺の目に映らないところへ連れて行け!」

「はいぃぃぃーーーっ!」


女官等が飛び上がって近寄って来た。


「さあさ、まいりましょう、ホライヨン様」

「いやっ! おじちゃまーーーーーっ!」

「駄々をおこねなさりますな。さあ、参りましょう」

「いっやーーーっ! おじちゃま~~~ぁん!」


「これはどうしたことだ! 何でホライヨンは、こんなに嬉しそうなんだ?」


うるさい喚き声の合間を縫って、女官長に尋ねる。彼女の目が宙を泳いだ。


「恐らくでございます。恐らく、けんか相手の従弟(ルーワン)様とご一緒でないので、喜んでいるのでございましょう」


言葉を選びながら言う。俺は何も気がつかなかった。


「なんだ。そういうことか……って! おいこら、ホライヨン! ルーワン(俺の息子)がいないからって喜ぶな!」

「あいつ、きらい。あいつ、おじちゃまを、父上っていう」

「そりゃ、俺はあの子の父親だからな!」

「嫌い! ルーワン、大嫌い!」

「こらっ!」


反射的に俺はホライヨンを地面にたたきつけた。なに、羽があるから大丈夫だ。


「あらっ! あらあらまあまあ」

慌てて女官長が拾い上げる。そして、泣きわめくチビを抱えたまま部屋を出て行った。

大方、王妃(タビサ)のところへ連れて行ったのだろう。母親だからといって、ホライヨンをおとなしくさせることなどできるわけがないのだが。


そこへ冷たい声が降って来た。

「私もルーワンが嫌いだ」


思わずぞっとした。


「何を言うんだ、ダレイオ……」

「お前の愛を独占するルーワンが憎い。ルーワンと、そしてエルナと」

「当たり前だろ。俺の息子と、妻になる女性だぞ?」

ダレイオの目が、暗く燃えた。

「ルーワンはいずれ、私を殺す。それが、あの子の宿命だ」

「殺す!?」


思わず息を飲んだ。頭が考えることを拒否する。何を……なにを、(ダレイオ)は言っているのだ?

反射的に思い浮かんだのは、王の世襲のしきたりだ。


「無理だろ。だって、緑の肌の王を殺すことができるのは、王の血を引く子どもだけだ。それも、同じ緑の肌をした子どもに限られる。王妃(タビサ)が緑色の肌をした子どもを産まない限り、あんたが殺されることはない」


ルーワンは俺の子だからな。俺とエリナの間に生まれた子だ。

緑色の肌でなんか、あるわけがない。


ほの暗い笑みが、ダレイオの顔に浮かんだ。

「私を殺すことのないように、あの子(ルーワン)わが王国(エメドラード)から追い出した。淫乱なその母親(エリナ)と共に」


……淫乱?

前にもダレイオはエリナのことをそう呼んでいなかったか。


ルーワンは、通常より小さかったことを思い出す。つまりエリナは、俺がこの国(エメドラード)を出てから懐妊した可能性が……?


……ルーワンは、ダレイオを殺す。

……ダレイオを殺せるのは、ダレイオの子どもだけ。緑色の肌の。


そして肌の色の変化は、生まれてから起こることもある。


……エリナの産んだルーワンの肌の色が、緑色に変わった?


俺は、ダレイオを見つめた。

見つめ続けた。

……。






おわかりの方にはおわかりでしょうが、このお話は、MOJITO先生の「ENNEAD」のローカライズです。なんだか違う話になっているような気もしますが、先生に敬意をこめて、BL部分だけは死守します。

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