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時間経過の異常

我が家の日常会話をアレンジしました。

 あと五分、アト十分。

 休日の朝、私は暖かい毛布にくるまれたまま、ベッドでつぶやく。

 何度かつぶやくが、せいぜい三十分のこと。

 が、ベッドから出ると、外界の時計は八時ではなく、十時を示している。


 休日のマンション三階で発生する、謎な現象。

 時間の流れが場所によって変化するなんて、あるのだろうか?




 パジャマのままダイニングテーブルに着くと、同居人が無表情にハムエッグトーストとサラダを並べていた。

 私は、食器棚からマグカップを二つ取り出し、冷やしたハーブティーを入れる。

 トーストもサラダもスープも同居人の手によるものだが、このハーブティーは私のオリジナルブレンドだ。

 いつもの通り、静かな食卓がはじまる。


「なんか、私は五分のつもりなんだけど、外ではいつのまにか二時間経つんだよね」


「それ、相対性理論みたいだね」


 同居人はシレっと謎な返しをする。

 ソウタイセイリロン? 昔の偉い人が考えた難しい理屈らしい。

 と、これまた無表情に、チラシをテーブルにパサッと置いた。


「これ、行ったら」


 そのチラシには、『講演 新しい時計による高度測定』と、謎な単語が散りばめてあった。

 同居人はナントカ研究所の広報担当だ。研究所が講演会を主催するたびに、私にチラシを見せる。


「今回は、この講演を聴いて感想文を書けばいいんだ」


 無表情に目の前の人はうなずいた。



 私の唯一の仕事。それは、研究所が仕切るイベントや講演会のレポートを書くこと。レポートは研究所のホームページに載るらしい。

 素人レポーターの声なんか載せて意味があるかわからないが、それぐらいはしないと目の前の人に申し訳ない、少しだけ。


 この数年、こんな生活だ。


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