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7話

 ゴロゴロゴロ。


 消し炭にされるはずだった俺はこぶしを振りぬいた状態で立っていた。


「ど、どういうことだ? なんで俺のパンチが当たって……え? 俺生きてる?」


 覚悟を決めて、殴りに行ったのに俺のパンチは普通にヒットしていて俺は何事もなく生きている。

 もしかして、こいつ怒りでグランドファイアとかいう技をミスったのか? 間抜けな話だな。


 流石に二回も殴られたらそれなりにダメージが入っているのか女はすぐには起きてこない。

 さっきなんて一瞬でこっちにとびかかってきたからな。今回も注意しておかないと。


 こいつが起きてくる前にどこかへ逃げてしまうか。そうすれば、時間稼ぎくらいにはなるんじゃないか?


「いったぁぁーーい!! なんでなのよ。貴方は私の魔法で消し炭になるはずでしょ!? おかしいじゃない。私が魔法の発動を失敗するわけもない……あれ? ここもしかして神界じゃない?」


 女は地面に転がったまま何かを叫んでいる。

 痛みに嘆いているのを見ると、覚悟を決めて殴ってよかったなと心底思う。これから俺はこいつに殺されるんだろうが一矢報いたんだという達成感で満ち足りていた。


 逃げ出そうと考えていたが、今度は両方の頬が腫れあがっている無様な姿を見ないといけないという任務が発生してしまたので、逃げずにとどまることを決意する。

 また、死ぬ前に大笑いしてやろう。


「……まずいわ。私、カッとなっちゃって転生についてきちゃった……。確かこっちの世界では私も普通の人間と変わらない状態になるってあいつらが言ってたような……」


 今後は何やらぶつぶつと言っているが、よく聞こえない。

 この声の大きさからして俺に向かって言っている訳ではなさそうなので放っておいてもいいか。


 早く起き上がってきて、腫れあがった顔を見せてくれないかな。ほとんど同じ強さで殴っているので頬が左右対称に腫れていることだろう。そのあたりの芸術性も確認しなければ。


「おーい、早く起きろよ。俺のことを消し炭にするんじゃなかったのか?」


「うるさいわね。今それどころじゃないの。少し静かにしてなさい!!」


 なんだよつれないな。さっきまでの怒りがどこへ行ったのやら。

 何か問題でも起きたのか? もしかして俺こいつに殺されなくても済むんじゃないのか?


「私がこっちの世界に来ちゃったってことは誰も気が付いてないわよね。となると、救出が来るまではこの世界で生きていかなくちゃいけない……どうするのよ。魔法も何も使えない状態で生き抜くなんて不可能だわ」


 少し近づいて話を聞いてみれば、なにやらこいつの力が使えないっていう独り言をぶつぶつと言っている。

 これは、俺の勝ちだな。一緒に転生してきたときは終わったと思っていたがまさか逆にこいつのほうが終わっていたとはな。そのくらいは考えて行動したほうがいいぞ。


「間抜けな奴だな。一気に立場が逆転じゃないか。自分の態度を見直してそこでおとなしくしてるんだな」


 女は近づいてきた俺に気が付いたのか上半身を起こし、地面に座り込んだ。


「何盗み聞きしてるのよ。気持ち悪いわね。これも全部貴方のせいなのよ。責任を持って私を助けなさい」


 視界に入った顔は綺麗に頬が腫れあがっている。頬を膨らませたリスのみたいだな。


「ハハハ!! ぶっさいくな顔だな。てかどの口が言ってるんだよ。俺の知ったこっちゃないね。自分で蒔いた種だ、勝手にどうにかしやがれ。どうせ、すぐに助けが来るんだろ? それまで頬の痛みに耐えながらここにいればいいじゃないか」


「はぁ? そんなすぐに助けが来るわけがないでしょ? そもそも、神界とこの世界では時間の流れる早さも違うのよ。私は歳を取らないからいいけど、助けが来るのが何年先になるかもわからないわ。前聞いた話だと100年は世界をさまよった何て話よ。それまで貴方が私の面倒を見るのは当然でしょ?」


 ざまぁないな。100年もこの世界で生きていかないといけなくなった女神様って滑稽すぎる。しかも自分のせい。俺の仕返しは相当盛大に決まってしまったみたいだ。


「精々死なないように頑張ってくれ。それじゃあ俺はもう行くからな。ただの人間がこんな森の中で生きていくのはしんどいかと思うがお前の図太さなら生きていけるさ。じゃあな」


「ちょっと待ちなさいよ。そんなこと認められないわ。私は今も貴方に殴られたほっぺが痛いのよ。いくら私の態度が気に入らなかったといっても殴るのはおかしいじゃない」


「未遂に終わってるけど、お前だって俺のこと殺そうとしたよな? どっちのほうが罪が重いと思うか? とにかく、俺はお前みたいなくそ女の面倒を見るつもりは微塵もない。あとは勝手にしてくれ。もう俺たちは二度と会うこともないだろう。じゃあな」


 後ろを振り返り、この場を後にしようとしたがまた服を掴まれた。


「待ちなさい。落ち着くのよ。私をここに放置していけば、おそらく私は死ぬわ。そうなれば貴方は女神である私を殺した神殺しの大罪人になるのよ」


 話にならないな。この期に及んで謝るのでもなく、脅してくるなんて。振り払って置いていこう。

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