4バンジー
死んだという現実も受け入れられないっていうのに今度は転生だって? ついていけない……。
「ちょっと話を整理させてもらっても……」
「はい? 私は今説明したわよね? 転生させてあげるって、これ以上何を説明すればいいのかしら? 貴方は自分で考えることもできないの? 少しは自分で考えることを覚えたほうが今後のためになるわよ」
「なんかごめん。俺もこの状況の整理ができてないんだ」
いきなりのことに頭がついて行かないのは決して俺の頭が悪いからだけじゃないだろ。そこまで言わなくてもいいんじゃないか? 確かにくそ女って言っちゃったのは悪いと思ってるけどさ。でもヒールで頭を踏んできたこいつも悪いと思うんだが……。
「はぁ……そこまで私が面倒を見なくちゃいけないの? 私だって暇じゃないのよ。この後も友達とショッピングに行く予定なの。早くしてくれない?」
なんだこの横暴な態度は。そろそろ温厚な俺でも腹が立ってきたぞ。一発パンチをかましてやりたいところだが、それは転生させてもらう直前にしておこう。今、パンチをくらわして転生させて貰えなくなったら俺のセカンドライフはジ・エンドだ。
「ごめんなさい。とにかく俺は死んで、よくわからないけど転生できることになったって解釈であってるか?」
「大筋はあってるわ。私は貴方なんてあほで無礼なやつを転生させるのは気が進まないけど上の連中が指定した来たのよね。それでも私が本気で拒否すれば貴方の転生の取り消しくらいはできるんだから。そこのところはしっかりわきまえて置くのよ」
「いやいや、俺は感謝しかないって。最初の言動も状況を把握できてなくてついでちゃっただけだから。ほんとに思ってる訳じゃないからな」
「まあ、いいわ。私にとって貴方なんてとてつもない数いるダニの一匹のようなものよ。いちいち気を取られていても仕方ないわね」
このくそ女下手に出てれば調子に乗りやがって。こいつには絶対に一発ぶちかまさないと気が収まらないな。俺の正拳がこの女の顔面に吸い込まれていくのも近いな。俺の我慢にも限界があるからな。
「うん? なに? もしかして怒ってる? 顔に出てるわよ」
「怒ってないって。なんで転生させてくれるっていうのに俺が怒ることがあるんだよ。感謝こそすれ怒るなんてもってのほかだろ? ありがとうございます!!」
「そう? 不満がありそうな顔をしていた気がしたから。そうじゃなかったら別にいいのよ」
無駄に勘のいいやつだ。今度は表情にも出さないようにしないと。
こいつも転生する直前になればキャンセルなんてできないだろう。もう、キャンセルされた時は暴れるしかないな。こいつにやり返せるなら……いや流石に命の方が重いわ。
「貴方が転生するにあたって、一つだけ能力を授けることになるのだけど。私は優しいからできるだけ希望に沿ってあげるわ。何か希望の能力はあるかしら? もちろん、制限もあるからあまり変な能力は無理よ」
能力だと? ……よっしゃーー!! この能力でこの女に制裁を与えてから気持ちよく転生していこう。
そうと決まればどんな能力にすればいいのかな。ぶん殴る系の能力でもいいが、あまり強すぎるものだと殺してしまうかもしれないか。うーん……こいつから貰う能力でこいつに対抗できるものなのか?
「どのくらいの強さのものなら大丈夫なんだ?」
「説明するのは難しいわね。とりあえず希望の能力をいってみてちょうだい。それで判断してあげるから」
それじゃあ、まずはとんでもない能力を試しに言ってみるか。
「宇宙を破壊することができるほどの魔法を使えるようになるってのはどうだ?」
「貴方はあほね。無理に決まっているでしょう。そんな能力を貴方に授けてしまったら世界が滅んでしまうじゃない。どうしてその能力がいけると思ったかしら」
「言ってみろって言われたからどのくらいのラインまでいけるのか挑戦してみただけだ。俺もこれが通るとは思ってなかったけど、一応試しておくべきだろう?」
こいつが試してみろって自分で言ったんだから、これでイライラするのはおかしいだろ。
「そんなことを言うの? 私は早くしてって言ったわよね?」
「悪かったって。それじゃあ、防御を無視して大ダメージを与えられるパンチなんてどうだ? 能力としては防御無視の強化攻撃ってところか?」
「それくらいなら別にいいかしら? 一撃必殺でもないし……オッケーそれでいいわ。それじゃあ、能力を授けるわ」
女が俺に向かって手を差し出し、淡い光が俺に降り注いだ。
よくわからないがこれで俺は能力を手にしたんだろう。
この能力ならこの女がどんな防御魔法で身を守っていようが貫通してダメージを与えてやることができる。
見てやがれよ。目にものを見せてやるからな。
「これで能力は授けたわ。詳しい世界の説明だけど……まあ、別に必要ないわね。勝手に何とかしなさい。それじゃあ、転生を開始するわ」
え? 説明を省く? どこまで適当なんだよ。
俺の足元に魔方陣のようなものが現れ、光が立ち上る。
きた!! 今しかない。