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2バンジー

「橋の上から下を見てたら、生きた心地がしないんだけど……うわぁ、やっぱりこえぇ」


 ついさっき覚悟を決めたはずの健五郎が恐怖におののいている。


 俺も橋の端から下を見たときは流石に怖かったもんな。

 普段なら何気ない光景……いや、むしろ絶景の部類に入るのだが、今回ばかりはここから飛び降りるというバンジージャンプが待機している。この高さから飛び降りなければならないという考えが頭をよぎるのだ。


「下ばっかり見てないで早く行こうぜ。俺の雄姿を見せてやるんだからな。お前らちゃんと見てろよ」


「わかってるって、ここまで余裕をかましてる大五郎が、絶叫するのをこの目で見届けてやるよ」


「そりゃ面白いな。大五郎が叫んで落ちてくのを想像したらちょっと恐怖が薄れたわ。ありがとな」


「それはお役にたててようござんした。無様な真似をさらすと思ってたら大間違いだぞ」


 いくら怖くても絶対に叫んでやらないと心に誓った。


 しかしまあ、バンジージャンプの名所なだけあって受付には数人並んでいる。


 バンジージャンプなんてノータイムでやらせてもらえると思っていたがこれじゃ難しそうだ。1バンジー5分くらいはかかると計算して30分くらいは待ちそうだな。

 でも、どういう風に落ちていくのかが間近で見れるのはいいかもしれない。事前に見ておくのとそうじゃないのとの差はでかいだろう。


「あれ? 列ができてないか? くそ、残念だがこれじゃ今日中にバンジージャンプはできそうもないな。諦めて飯でも食って帰るか」


「奇遇だな健五郎、俺もちょうど腹が減ってたところなんだよ。せっかくここまで来たのに残念だ。またの機会にしよう」


 二人がしょうもない三文芝居を繰り広げているがお構いなしに引っ張って連れていく。


「は、離せぇ!! あれじゃ無駄ろうが!!」


「いったん落ち着くんだ。時間がかかるようだったら諦めるのも一つの手だと思っただけだ。そうだ、一回受付で待ち時間を確認してみよう」


「ほんとにさっきまでの覚悟はどこへやったんだよ。ちょっと飛ばなくてよさそうな理由を見つけた途端これなんだからな。この手は死んでも離さん!!」


 自慢の怪力とまでは行かないが、ずるずると二人を引っ張って受付へと到着した。


 並んでいる人たちは、皆偏に青ざめた顔で心底やりたくなさそうなオーラを漂わせている。


 なんなんだよ、全員罰ゲームでバンジージャンプに連れてこられたのか? 自分から並んでるんだったらもう少し楽しみそうな顔して並んどけよ。これじゃ、新たに来た人たちはやっぱりやめとこうってなりそうだ。


 橋の横っちょに設置されたステージのような場所にバンジージャンプがある。ここから飛び降りていくのだろうが、改めて考えると、とんでもない遊びだよな。最初に考えたやつはどういう発想力をしてるんだよ。俺なんて精々学校の階段を三段飛ばして飛び降りてたくらいだぞ。


「はあ、みんな怖そうだな」


 健五郎がつぶやく。

 この場所の異質なオーラに気が付いたみたいだ。


「見てみろよあれ。飛び降りた後もビヨンビヨンするんだぞ。やばいって、せめて一回で許してくれよ」


「そんな事したら体にとんでもない力がかかって即死するだろうな」


 目の前で飛んで行った人を見た新五郎が無駄な願いをつぶやく。

 俺だって何回も怖いのは嫌だが、まじかで見てもまだ好奇心が勝っている。これは俺が異常なだけなんだろうか。


「すいません。今って何分待ちくらいですか?」


「はい。えー……ここに並んでいる方たちはまだ心の準備ができていないそうなのですぐにご案内できますがどうしますか?」


 ああ、それで全員こんな怯えた表情な訳か。純粋に楽しみな人たちは先にやってるんだな。それじゃあ、ほんとにこの人たちは罰ゲームで来たのかよ。それか、この二人みたいに誰か先に飛んで後から飛ぶことになってるかだな。


「大五郎どうする? すぐ行けるらしいぞ」


「もちろん、行くさ。いざ、レッツバンジー!!」


「お客様は怖くなさそうですね。わかりました、こちらへどうぞ。お一人ずつしか入れませんのでお二人はここでお待ちください」


 係の人に案内され、受付からステージの方へ移動する。


「それでは、器具の方を取り付けます」


 体に器具をつけられていく。なんか変な気分だな。


 俺はもうすぐ大空へと飛び立つのか。感慨深いな。今は何もかも忘れて飛んで行こう。


「はい、これで……」


 よし、終わったみたいだ。こういうのは勢いが肝心だ。下を見てしまったら足がすくむかもしれない。行ってやる!!


「こちらを取り付ければ、え? お客様!?」


「オラァァァァーーー!! レッツバンジー!! アイキャンフライ!!!」


 何か後ろから声がした気がしたが、ふっ気にすることない。

 俺は勢いよく飛んだ。


 その際に、一瞬後ろを振り向き二人の様子を確認する。


 あいつら何て顔してるんだよ。それになんか叫んでるか? どう考えても叫ぶなら俺だろ。


 すぐに自由落下が始まり、ぐんぐん加速して落ちていく。


 やべぇ、舐めてたけどこえぇよこれ。


 近づく地面に恐怖しながらも戻る際の衝撃に備える。当然かなりの衝撃が来るだろうからな。


 どれだけ地面に近づいても衝撃はやってこない。


 え? ぶつかる?


 グシャ!!

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