17バンジー
俺が行くとか言っちまったのものの、なかなかいい感じの人が見つからない。
これ以上時間をかけていたらまたメリアから文句を言われることになってしまう。というかダサい。いつまでこんなしょうもないことを気にして時間をかけてるんだよ俺は。こんなもんは勢いだ、おっしゃ!! 行ったるぞ!!
「すいません。身分証の再発行をしたいんですけどどこに行けばいいですか?」
ほんとに無心で何も見ずに、前を歩いていた人に話しかける。
「いきなり何ですか? 新手のナンパですか?」
やべぇ、同い年くらいの女の子に話しかけちゃってた……。なんで、さっきまで話しかけやすそうなおじさんを見繕ってたのに、女の子に話しかけてんだよ俺は。勢いで行ったせいだこれも。最悪だぁ。
「あの、ちょっと身分証をなくしてしまって。それで、こいつと一緒に再発行に行かなくちゃいけなくなったんです。この町に着いたのもついさっきでどこに行けばいいかわからなくて困ってるんです。教えてもらえないでしょうか?」
「すごく怪しいですね。身分証をなくすなんてそうそうありえないですよ。それも二人ともなんて、見るからにそちらの方は怪しいですし、何か隠してませんか?」
「こいつは持病で顔が腫れてて、ものすごい不細工なんです。だから、こうやって顔はいつも隠してます。気にしないでやってください。イッテェェーー!!」
足を思いっきり踏みつけられた。
あまりの痛さに女の子の目の前で叫んでしまう。
「突然叫ばないでくださいよ。ビックリするじゃないですかぁ……女の子に不細工なんていうからですよ。怒るのも無理ありません」
「悪い、俺の気が聞かなかったな。すまん、メリア。それと、いきなり叫んでごめんなさい」
「私まで変な人だと思われるので、もう行ってもいいですか?」
叫んでしまったことで、印象が悪化してしまっているな。このままじゃ、本当にどこかへ行ってしまいそうだ。せっかく話しかけたって言うのに、ここで場所の情報を手に入れておきたい。
「謝ってるんだから許してくれよ。俺だって悪気はなかったんだ」
「敬語が崩れてますよ。そんなに動揺しないでください。怪しさが増してますよ」
何なんだよこの子は。適当に選んだら、なんか癖の強い子に話しかけちゃったんだけど……。
普通の子だったら、困ってる人に道くらいすぐに教えてくれたはずだ。まあ、俺たちが見るからに怪しいって言うのは考慮しておかないといけないことではあったんだが、怪しいって言ってもメリアだけだし、少し離れてもらってればよかったかもな。いまさら、思いついたところで取り返しは付かないから何とか言い訳しようか。
「ああもう、喋りずらいからもうこっちで話してもいいか?」
「構いませんよ。別に敬語だろうが敬語じゃなかろうが影響はありませんからね。それで? なんで身分証をなくしたりしたんですか?」
「さっき森でモンスターに襲われたんだよ。身分証どころじゃなくて、荷物も全部おいてきちまったんだぞ。もう最悪だよ」
一応、俺たちはモンスターに襲われた体なので、この子にも門番のお兄さんに説明したことと同じことを説明しておく。食い違っていくと
後々面倒なことになる可能性があるからな。とてつもなく低い可能性だろうが、万全を期しておくに越したことはない。
「それは災難ですね。でも、見たところ怪我どころか服の汚れも見当たらないんですけどどうしてですか? 荷物をおいてきてしまうほど焦っていておかしくないですか?」
痛いところをついてくるな。
この子のいう通りだ、モンスターに襲われて命からがら逃げてきた人間が怪我一つ追っていないのは不自然なことだろう。
これに関しては言い訳することもできなさそうだな。洗濯して風呂に入ったからって言うのは論外だしなぁ。
「うまい具合にモンスターの注意が俺たちからそれたんだよ。あれは何だったんだろうな? その隙をついて逃げたからな、よく覚えてないんだ」
「都合のいい話もあったものですね。それを私に信じろというんですか? 私はこれでもBランク冒険者何ですよ。あなた方よりもモンスターについては詳しいつもりです。モンスターに襲われて無傷で逃げ切ることの難しさくらいわかりますよ」
なんだよ冒険者って、当然のことのように言ってきているのを見ると、突っ込んだら不自然なんだろうな。よくわからないがモンスターの専門家的な人ってことなのか? よくわからないが適当にそれっぽい感じで話に乗っておくしかない。
「凄いな、Bランク冒険者って。見かけに寄らずモンスター好きなんだな」
「私がモンスターが好き? 一体どうしてそう思うんですか? もしや、冒険者はモンスターが好きでやってるとでも思っているのですか?」
くそ、ミスったか。モンスターの専門家ならモンスターのこと好きに決まってるじゃないか。冒険者はモンスターの専門家って言う解釈自体が間違っていたと見るべきだな。異世界はめんどくさいな。こんなことになるんだったら、勢いで話しかけないでもう少し時間がかかっていたとしてもしっかり話しかける相手は選ぶべきだったな。




