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10話

 適当に歩き出したのはいいものの町がどこにあるか見当もつかない。


「なんでこんな森の中に転生させたんだよ。せめて道の上とかにしてくれればもっと楽だったのにな」


「ごめんなさい。でも私が決めてる訳じゃないのよ。ごめんなさい」


「別に攻めてる訳じゃないからさ。そんなに怯えないでくれよ。まるで俺がいじめてる見たいじゃないか」


「ごめんなさい。謝るから置いて行かないで……」


「わかったから、そんなつもりは一切ないからさ。心配しなくていいって」


 出会ったばかりの時の高圧的な態度は完全に影をひそめ、怯え切ってしまってる。これじゃあ、この先が思いやられるな。どうしたもんかな。


 どうやって町を探そうか。適当に歩くとは言ったもののこの調子じゃ道さえ発見できない可能性がある。町につく頃には日が暮れるどころか、日付が変わるんじゃないか? 


「なぁ、俺、お前の名前も知らないんだけどさ。教えてくれよ。俺は大五郎。これからよろしくな」


「ヒェッ、ごめんなさい。名前を名乗らずに……私のことはどうぞゴミと呼んでください」


「ほんと調子狂うな。いつまでしおらしくなってるつもりだよ。それとも素はそっちなのか?」


 なんで自己紹介でゴミって呼んでくださいとか言われるんだよ。ちゃんと名前くらい名乗れよ。ゴミって呼ぶわけにもいかないだろ。


「いや、そういう訳じゃ。でも私は貴方の気分を損ねたら死んじゃうから……」


「そんな簡単に見捨てて置いて行ったりしないからもうそれはやめてくれ。自然に接してくれたほうがこっちも楽だわ」


「本当に? 途中でうざいから置いて行くとか言わない?」


「大丈夫だからそれはやめてくれ」


 態度の差が気持ち悪すぎる。どうやったらこんなことになるんだよ。


 とはいえ、これで元の態度に戻られてもうざいことには変わらないか。流石に少しは柔らかくなっていることを信じよう。さっきまで相当反省している様子だったしな。


「わかったわ。私の名前はメリアよ。一応転生者を案内する女神をしてたわ。今はただの女の子と同じくらいの力しか持ってないから助けてね。それと、ほっぺが痛いわ」


「すまんな。顔面を殴るのはやりすぎだったかもしれないよな。今の喋り方のほうが違和感なくていいな。今度もそれで頼む」


 ついつい忘れてしまっているが、メリアの両頬は腫れあがっている。このまま町に行ったら注目されること間違いなしだな。原因が俺だってバレたりしたら逮捕されそうだし。警察はいるかわからないけどさ。


「謝ってほしくて言ってるわけじゃないから。ただ本当に痛くてつい声に出ちゃっただけよ」


「ずっとそのままって訳にもいかないし、町に着いたら治療してもらうか。この世界にも回復魔法くらい存在するだろ?」


「そうね、私が使えるってことはこの世界の人間にも使えておかしくないと思うわ。この世界には様々な能力が存在しているから、その中に回復魔法と同じようなものがあるはずよ」


 それで俺にも能力を授けてくれた訳か。メリアを殴ることしか考えてなかったからこんな能力にしたが、失敗だったかもしれないな。もっと考えて能力を選んでればいろいろと楽になっていたかもしれないのにな。


「だったら、俺も新しく能力を獲得するとかってあるのか? 一つだけってのも限界があるだろ?」


「どうかしら、私はこの世界に転生者を送り出すときに能力を授けるだけしかしてきてないから。この世界に来てどう生きているかとかは把握してないのよ」


「俺の前に転生した奴らはどんな能力を貰ったんだ? 単純な興味でしかないが教えてくれよ」


 特に今後の生活に関わってくることでもないが、俺以外がどんな能力を得て、この世界を生きているのか聞いておきたい。


「えーと、確か、筋力を10倍にする能力とか授けたような気がするわ。そういうセンスをしてるのかと思ったのを覚えてるわ。ほかには、炎魔法を使いたいとか言われたこともあったわね」


「魔法ってのはちょっとずるくないか? 炎っていうくくりも結構広いし、俺の能力よりも明らかに強い気がするんだけど」


「別にそんなことないわよ。私が授ける能力には一定の上限値のようなものが設定されていて、それを超えるものは授けることができないようになってるの。だから炎魔法って言ってもそこまで強力なものは使えないはずよ。それに比べれば大五郎の能力も負けてないと思うわ」


 魔法の方が確実に強いと思うけどな。俺の攻撃何て防御を無視して、強化された攻撃ができるだけだぞ? 相手の防御力が高くなければ特に意味もないし、でも逆に強い相手には刺さりそうだな。


「まあ、俺の能力の真価はまだわからないからな。モンスターでも出てくれば試せるけど、まだちょっと心の準備ができていないからダメだな」


「そうね。私も今モンスターが出てきたら泣きそうね」


 そこまでか? 普通の女の子がモンスターと出くわしたらそりゃ怖いだろうけどさ。


「モンスターが出て来ないのを祈りながら道を探すとしますか。メリアも周囲の警戒くらいはしておいてくれよ。一応俺も気を付けてるからさ」

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