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1バンジー

「うわぁ、マジで高ぇなぁ。ここから飛ぶなんて何かの冗談だろ……やっぱり俺はやめとくわ」


「ここまで来ておいて怖気ずくのは流石に許さないって健五郎。おい、あいつ見てみろよ。テンション爆上がりではしゃいでるんだぞ」


「うひょーーー!!! これがマジもんのバンジージャンプか。テレビで見るよりも迫力がすげぇ!! お前ら何立ち止まってんだよ。早く行こうぜ」


 初めてのバンジージャンプに胸の高鳴りがおさまらない。昨日からワクワクで睡眠不足なんだよ。もっと言えば寝てない。今日は思いっきり飛んでやるぜ!!


 

 

 ここ、須呉井高井大橋は全国でも有数のバンジージャンプスポットだ。渓谷にかけられた橋の真ん中からというかなり大胆な設計で人気を呼んでいる。詳しくは知らないが高度もかなりのもので人気に人役買っているようだ。


「行ったぞ!! 絶対やばいってこれ。本気で勘弁してくれよぉ」


 来るまでの車の中ではノリノリだった健五郎は一番ビビってしまっている。この調子じゃ飛び降りる寸前までぐずりそうだな。まあ、そうなったら俺が後ろから蹴とばしてフォーリンバンジーさせてやるがな。


「そんなにビビるなよ。俺まで怖くなってくるって、大五郎はよく平気な面してられるよな。その心臓が羨ましいったらない。はあ、誰がこんなところに来ようって言い出したんだよ」


「新五郎だっただろ。自分で言い出しておいて忘れたとか言わせねぇよ。おかげさまで俺たちは仲良くバンジーだ……帰らせてくれぇ」


「いいじゃねぇか。人生初体験のバンジージャンプだぞ? 飛ぶ前から怖がるなんてどうかしてるぜ」


 健五郎も新五郎もビビり散らかしやがって。そんなんじゃ俺たちファイブトリオの名が泣くぜ。

 俺たちは全員名前に数字の5が入っているファイブ仲間だ。全員が大家族の五男坊で、この名前になったとか。ちなみに俺は末っ子だが、二人は弟と妹がいるらしい。テレビに出れそうな大家族だよな。


「それじゃあ、誰から行くか決めようぜ。俺は一番でも構わないが、公平に行くためにじゃんけんにしとくか」


「大五郎、後生だ、先に行ってくれ。俺も後で絶対にやるから」


「その通りだ大五郎。一番槍はお前に譲る。安心して飛んでくれ、後ろに俺たちがついてる」


「許されませーーーーん!! どうせお前らが飛ばないなんて俺にでもわかるわ。蹴落とされたくなかったらじゃんけんするんだな」


 こいつらの魂胆なんて丸わかりだ。先に飛ばせて満足した俺に、自分たちはやっぱりいいとか言うつもりだ。俺も自分さえ、終えてしまえばどうでもよくなっているかもしれない。ここでこいつらの意見を通すわけにいかない。こんなビビってるやつらを飛ばさせないなんて選択肢はない。見てて絶対に面白いからな。


「お前らは今日、ここに来た時点で詰んでるんだ。諦めて、右手を前に出せ」


 そういい、俺は自分の右手をグーの形で前に出す。


 昔から何かを決まる時はじゃんけんと俺たちの中では決まっている。泣いても笑っても男の一発勝負!! ここですべてが決まる。


「ううぅぅ、嫌だぁ……今回ばかりは無理だ……」


「そうだよな。健五郎。こいつがおかしいだけだ。あの光景を見て、怖がるどころか喜ぶなんて狂人だ!! 普通の人間じゃねぇ!!」


 ひどい言われようだな。俺は純粋に初めての体験を楽しもうとしているだけで、ここまで言われる筋合いはない。


「ったく、しょうがねぇなぁ。俺が先に飛んでやろうか? 俺が飛ぶのを見れば少しは恐怖もおさまるだろ。その代わり、お前らが飛ぶまで車は出さないからな。家に返しませーーーーん!!」


 何を隠そうここまでは俺のマイカーで来ている。つまり、俺が運転しなければ帰れない。さっきは忘れてて無駄に反論してしまったが最初からこうしてしまえばよかったんだ。山奥だから電車も通ってないし、歩いて帰れる距離でもない、王手だ。


「この悪魔め!! 俺たちが大五郎の嫌がることをしたことがあるか?」


「あれれ、おかしいなぁこの前俺が買ってきた食堂のスペシャルカレーパンを二人で食った奴らがいなかったかなぁ?」


 つい先日、食堂へ買出しに行かされた俺は即完売のスペシャルカレーパンを二つも入手して教室へ戻ったのだが、仁義なき戦いに敗れ、カレーパンを食すことはできなかった。ついでにこの恨みも晴らしておこう。


「あれは!! ……しょうがないだろ……」


 俺のほうを見ている目が泳いでいる。流石に少しは罪悪感を抱いているようだ。


「わかった。俺も腹を決める。大五郎がとんだ後は二人でじゃんけんして順番に飛ぶって約束する。男と男の約束だ」


「新五郎だったそう言ってくれると思ったぜ。だそうだが、健五郎はどうするんだ? まさかまだごねたりしないよな?」


「わわわわわ……わかったよ、俺も飛ぶからせめて先に頼む」


「どうせ飛ぶことになるんだから無駄に粘るんじゃねぇよ。そりゃ、行くぞぉーー!!」


 俺は二人の背中を押しながら、バンジージャンプの受付へと向かった。

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