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10話.[やらせておいた]

「航、起きてください」

「……おいおい、今日は休みなんだぞ?」


 体を起こしてみたら何故か梓が部屋にいた。

 こうなったらもう寝ることはできないから布団から出て彼女を見下ろす。


「で?」

「次の本を持ってきました」

「それなら連絡してくれれば取りに、あ」

「誰かさんは解約してしまいましたからね、不便ですよまったく」


 いやでもいまだって変わらないからいいんだ。

 それに文字を打つのが面倒くさいと思っているのはなにも雄太だけじゃない。

 いつでも会える距離にいるのにちまちまこれで会話するというのも馬鹿らしいしな。


「あ、ちょっとじっとしてろ」

「なんですか?」

「なんかついてると思ったけどついてなかった」

「なんですかそれ、早く下りてご飯を食べてください」

「そうだな、顔も洗いたいし」


 これから食べるわけだがその前に歯もちゃんと磨いておく。

 歯を磨くというか口内をすっきりさせたいというところか。


「あれ、母さんは?」

「先程お買い物に行きましたよ」

「そうか」


 で、食べようとしたときのことだった。


「あ、これ、梓が作ってくれたんだろ」


 これまたなにを目論んでの行動だろうか?

 調理技術をいまからでも高めたいということだろうか?

 十分綺麗で、食欲とかも唆る感じではあるけども。


「なんで分かったんですか?」

「なんか違う気がしたんだよ、いただきます」


 普通に美味しい、やっぱり俺のとは全然違う。

 味は調味料頼りだからそんなに変わらないが、食材の切り方とかが丁寧だ。

 夏休みは一生懸命頑張ったんだけどな、これまでかけてきた時間の違いが分かりやすく出てしまったことになる。


「これからはあなたを利用させてもらおうと思いまして」

「そういえば俺がしたいことはしたのにあれだったよな」

「はい、私はあなたになにもしてもらっていませんでしたから」


 これが利用されていることになるなら随分ありがたいことだ。

 ただで美味しいご飯が食べられるとか幸せすぎだろそれ。


「ただし条件があります。それは、一冊読むごとに一食!」

「結局それは俺にとって得しかないってことだろ」

「いいんですよ、責めたくてしているわけではないんですから」


 うわ、しかもここで過去一番にいい笑顔とか策士だな。

 やっぱり冷たくなんかない、それどころか他人に甘すぎる人間だ。

 とりあえずは食器を洗って戻ってきた。


「あと、私のことも避けないでください」

「もうしてないだろ……」

「はい、それを守ってくださいねっ」


 勝てないから言うことを聞いておくことにする。

 だけどなんか上手くいかなすぎてむかつくから前みたいに頭を撫でておいた。

 撫でやすい位置にあるから仕方がない。


「あなたそれセクハラですからね!」

「降参だ降参」

「そこに座りなさい!」


 なんか楽しそうだから自由にやらせておいたのだった。

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