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第5話「港南区児童連続誘拐事件」

遅くなりました。不定期更新って書いたけど暫くは毎日更新頑張るつもりです。


 探偵事務所(うち)に着いて、ドアを開けたら楓さんと玲旺が既に部屋の中にいた。


 「茉莉、ちょうど良いところに来た。任務だ」

 「っ!分かった」


 うちでは、表向きの探偵の仕事を依頼、異能犯罪に関する仕事を任務という。つまり、今回の仕事は待ちに待った異能犯罪絡みの仕事。もしかしたらお姉の仇に一歩近づけるかもしれない。あたしと玲旺の視線が集まったのを見て、楓さんが話始める。


 「今回の事件は、隣の港南区で起きている児童連続失踪事件だ。被害者の親が気づいた時には子供がいなくなっていた、と証言していることから何かしらの認識阻害能力か人を連れ攫える能力か。兎も角厄介である事に違いはない。くれぐれも油断しないように。あぁそれと、言い忘れていたがお前たちは二人で行動しなさい」 

 「えぇー!なんでよ!あたしは一人でも出来る!」

 「寝言は寝てから言え馬鹿娘。これは遊びじゃないんだよ。この条件を飲めないのならお前は捜査に参加するな」

 「むぅ……」


 そう楓さんに戒められてしまった。でも馬鹿娘はちょっと酷いんじゃないだろうか……。それに、これが遊びじゃないなんてことは身に染みて分かっている。


 「まぁまぁ、茉莉の好きなようにやって良いからさ」

 「そういっていつもあんたが足引っ張るんでしょうが!」

 「うっ言い返せねぇ……」


 大体、毎度毎度玲旺が余計なことをして、仕事を増やすのがあたしは嫌なのだ。この前の銀行強盗の時だって、玲旺が口を挟まなければ犯人を激昂させることはなかったろうに。


 「私は何件か被害者の家をあたってみるから、三人も頼んだぞ」

 「「はい!」」


 楓さんはそう話を締めて、早々に珈琲を飲み干すと出かけて行った。玲旺と一緒なのは不本意だけれど、仕方がない。玲旺は玲旺で使えるのも確かだ。




 あたしたちの異能について振り返ってみる。今回の捜査のヒントが思い浮かぶかもしれない。


 まず、楓さんの異能は【転移】。楓さんがマークしてある場所、又は視認出来る範囲なら何処へでもノータイムで移動できるという能力。マーク出来る数は限られていて、移動距離に応じて消耗が激しくなるから、何度でも使えるというわけではないけど、自分と同質量以下のものなら触れたものを自分と同じ要領で転移させることもでき、使い勝手の良い能力だと思う。

 

 次に、玲旺の異能は【糸操作】。文字通り糸を操ることのできる能力。太さや硬さや粘性を自由自在に変えることができて、糸電話の応用で盗聴したり、粘着質にして罠を張ったり、犯罪者を拘束したりと汎用性の高い能力だ。糸を作り出すことが出来ないのが唯一の弱点か。けど捜査に最も使える能力なのは間違いない。


 最後に、あたしの能力は【風魔法】とでも言うのだろうか、風を生成し、意のままに操ることができる能力だ。恐らく戦闘能力で言えばあたしが1番強い。高速移動から風の斬撃や弾を飛ばしての攻撃まで、やれる事は多い。一応盗聴もできなくはないけど、繊細な操作は苦手だからそういうのは玲旺に任せている。


 でも捜査をするといっても、今回の事件は犯人の手がかりが一切ない。このままでは何も出来ないので、望み薄だが何か新しい情報はないか被害者の保護者に話を聞きに行くことにした。




 着いたのはついさっき三人の児童が行方不明になったという孤児院。近くで異能の出力の残滓が感知できる事から、児童失踪事件の犯人が異能力者である事は、間違いないようだ。


 「あれ?あの人……鳴月さん?」

 「っ!」


 孤児院に着くと、見覚えのある背の低い、栗色のショートボブの少女――鳴月志乃が丁度孤児院から出てきたところだった。この前に病院で会った時とは雰囲気がまるで違って、一瞬、抜き身の刀の様な刺々しい殺気を感じて身構えてしまった。


 「ん?あぁ、茉莉さんに玲旺くんですか。どうしたんですか?こんな朝早くに」

 「私達は探偵としての仕事で……。あ、貴女こそどうして此処に?」

 「知人を訪ねに来ただけです。私はやることがあるので。それでは」

 

 そう告げると、彼女は何か余裕のない様子で走り去っていった。ここで起こった失踪事件と何か関係があるのだろうか。気になったが呼び止めようとしたときにはもう行ってしまった。


 孤児院の院長である椿さんという女性にそのことを聞いてみると、志乃さんはこの孤児院で生活していたことがあり、行方不明になった子供たちと仲が良かったのだという。そういわれると納得がいく。きっと家族が行方不明になって気が気でなかったのだろう。以前とは違って口調も刺々しかったし、さっき一瞬感じた殺気はきっと気のせいだ。


 「それで、椿さん。何か事件について、気づいたことはありますか?」


 椿さんによると、彼女は失踪した子供たちが遊びに行ったことには気づいていなくて、影山美津子さんというスタッフさんから聞いたという。その彼女は今日は非番で、孤児院にはいないらしい。ということは、鳴月さんは彼女のことを探しに行ったのだろう。


 それと、昨日は一つ不自然なことがあったという。失踪した三人は、いつも外に出かけるときは決まって椿さんに報告するが、昨日はされなかったのだ。それだけならまだあり得るが、問題なのは、影山美津子さん以外そのことについて把握していなかったことだ。孤児院の性質上、いくら音を消しても、周囲には沢山の子供たちがいる。その子たちに聞いても、何もわからなかったのは不自然だ。


 これだけならまだあり得ないとは言えないが、この場に残留している異能の残滓によって、これが異能によってもたらされた状況だということが分かる。もし影山美津子が犯人なら、鳴月さんが危ない。


 でも何か引っかかる。さっき会った時の殺気があたしの思い違いじゃないとしたら……彼女はその殺気を誰に向けていたのだろうか?


 もし影山美津子に対しての殺気なら、それは単なる決めつけなのかそれとも確証があったのか……。そう考えてみると一つの結論に至る。


ーーもしかして鳴月志乃はあたしたちと同じ異能力者なのだろうか。



   *



 孤児院に着いて、椿さんに事情を伺った。

 椿さんも、子供たちも、近所の人たちも、誰一人遊びに行く杏子たちの姿を見ていなく、私が杏子たちが遊びに行かないように因果律を操作したのにも関わらず、事件は起こったとなると、犯人は孤児院の近く、もっと言えば孤児院の中に居た、と考えると辻褄が合う。


 だとすると犯人は1人しかいない。唯一杏子たちが遊びに行くことを()()()()()美津子さんしか。


 きっと彼女が犯人だ。そう思って、椿さんに彼女が今どこに居るかを聞くと、今日はもう帰ったという。あまりのタイミングの悪さに、疑惑が深まる。美津子さんの住所を聞いて、そこに向かおうとすると、

 

 「あれ…あの人…鳴月さん?」

 「っ!」


 自分を呼ぶ声が聴こえて、その方向に反射的に目を向ける。何故ここにいるのか分からないが、茉莉さんと玲旺くんがそこにいた。何やら茉莉さんはこちらを見て震えていた様だが、なぜだろう。


 早く杏子たちを助けに行きたいから、早々に話を切る。


 「ん?あぁ、茉莉さんに玲旺くんですか。どうしたんですか?こんな所で」

 「あたし達は探偵としての仕事で…。あ、貴女こそどうして此処に?」

 「知人を訪ねに来ただけです。私はやることがあるので。それでは」


 少し不自然だったかもしれないけど、仕方がない。事態は一刻を争うのだ。それに茉莉さん達に犯人が分かったと伝えても理由が説明出来ないのだから、時間の無駄だ。


 二十分ほど走って、美津子さんの住んでいる所に着く。

美津子さんは、少し古めのアパートの三階に住んでいるようだった。階段を駆け上って、ドアを開けたら後ろから茉莉さんの声が聞こえた。


 「鳴月さんっ!開けちゃダメっ!!」

 「えっ?」


 振り向くと、茉莉さんがこちらに手を伸ばしていた。急に何を、と思ったのもつかの間、悪寒が走って反射的に異能を使おうとしたけど、遅かったみたいだ。次の瞬間、目の前が真っ暗になって、何かに引きずり込まれていく。


 (やばっ、敵の……い、のう……!?焦りすぎたっ!)


 悔やんでももう遅い。段々と意識が遠のいて、最後に見えた、暗い闇の中で唯一存在感を主張している月が、今日はなんだか恐ろしく思えた。

この世界では、異能を使うと消耗するので、無限に使えるなんてことはありません。後、出力が感知されて他の異能力者にバレます。それに異能の残滓も1日ぐらいは残るので追跡は意外と簡単かも。


因みにこれ、志乃は知りません。能力者と関わる機会がほぼ無かったので。

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