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4思いがけない場所

いつもありがとうございます。

 翌年、ユウは北国にいた。

あれから必死で勉強して、受かった中で家から一番遠い大学で学生生活を送っていた。

正直、秋の終わりから春先まで、大雪のせいで長靴を履かなければならないのは、苦痛だったけれど、それ以外は特に不満もなく、四年間を過ごした。

 その間、リエに会うことは一度も無かった。近くに住んでいたら誰かがリエと会う機会を作ってくれたり、偶然会うこともあったかもしれないけれど、飛行機でしか行き来できないこの遠方の北国にいる間は、ユウが思った通り、一度も会うことなく過ごすことができた。

何となく、トオル達とも疎遠になり、実家に帰省することもなく過ごしてしまったが、流石に四年も過ぎたら大丈夫だろうと、卒業後は地元へ戻って就職した。やりたい仕事があったのと、北国の寒さに辟易していたのが理由だ。 

 営業マンとして働き始めて一年、仕事はすこぶる順調で、元々人当たりの良い、スマートな振る舞いや気遣いが得意なユウは、めきめきと会社で頭角を現した。が、そんなある日、会社の健康診断で、要検査の通知を受け取り、びっくりする。

まさか、風邪くらいしか病気をしたことのない俺が…何かの間違いだろう?と最初は思った。

入社以来ずっと仕事も忙しいし、疲れると色々数値もおかしい場合があると、先輩から聞いたこともある。しかし、不安な気持ちを誤魔化して受けた再検査は、思わぬ結果となった。

何と、腹部に癌が見つかったのだ。

ステージはⅡ。体力があったことから、医師から治療を勧められた。

「というわけで、しばらく仕事を休ませて頂きますが、必ず戻って来ますので、すみません」と、ユウが頭を下げると、上司は当たり前と言わんばかりに承諾してくれた。

「お前はきっと元気になるから。また戻って来たら、活躍してくれよ。皆、待ってるから」

温かい上司の言葉と先輩達からの励ましを胸に、ユウは再起を誓って入院した。


 入院先は、地元の総合病院だった。

癌の患者はそれぞれの担当の科目以外に、放射線科のお世話になることが頻繁にある。CTの順番待ちで、緊張しながら待合の椅子に腰かけていると、目の前を通り過ぎたパジャマ姿の女性に、思わず目を見開いた。

リエさん?!

薄い桃色の水玉のパジャマに、白いカーディガンを羽織り、頭にはグレーのニット帽を被っている。ニット帽の下の髪の毛が少ないことから、事情を察してユウは心臓が止まりそうになった。勇気を出して立ち上がると、何とか後ろから声をかける。するとリエは、びっくりしたらしく、一瞬びくっと肩を竦めて、振り返った。

「…もしかして、ユウくん?」

忘れるはずのない、心地よい声にユウは咄嗟にいつもの笑みを浮かべた。

「やっぱり、リエさんだ。お久しぶり。リエさんもしかして入院中?」

「えっ…もしかして、ユウくんも?」

びっくりするリエに、ユウもいたずらっぽく微笑む。

「うん、俺は今日からだよ。これからしばらくずっとかな?」

 それから、お互いのCTを終えてから、病院のカフェテリアで数年ぶりに話をした。どうやらリエは末期の胃癌らしい。今度のCTの結果次第では、最後の治療になるとのことだった。

「俺も胃癌、ステージⅡだから、一応治療するみたい」

ユウが言うと、リエはちょっとほっとしたように優しい笑みを浮かべた。

「じゃあ、病院にいる間、仲良くしようよ。同じ病気なんだし、これも何かのご縁だよね」

「そうだね、よろしく。じゃあ、毎日ここでデートしようか?」

冗談ぽく提案してみると、リエは嬉しそうに頷いた。

「うん、楽しみにしてる!」

良かった、男が怖いの今の俺なら大丈夫なんだ!そう思うと、ちょっぴり悲しいような、嬉しいような複雑な気持ちになった。










お話を読んでくださり、ありがとうございます。

これからもよろしくお願い致します!

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