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私と秘めた思いの物語  作者: ふるたく
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義務と秘めた思い

私の名前はナナミ。


この国の王女として生まれました。


王女、、、とは言っても私には兄がいて、


兄が政をしているので私の役割は兄の代行であったり、その補佐であったり、お飾りであったりその程度。


私は常にそういう存在。


私はこの国に道具のように扱われる覚悟が必要だった。


それがこの国で次女として生まれてきた私の義務だと思う。


------------------------------------------------------------


ところで私には同い年の幼馴染が1人いた。


名前はリオウ。


彼は私の乳母の息子で、私とリオウは兄弟同然に育てられてきた。


ずっと、一緒に時を過ごしてきた。


何をするにしても一緒だった。



------------------------------------------------------------


しかし、歳を取るたび気付いてしまう。


この世界では身分というものがその者の意思を超えて強い力を発揮する。


つまり、彼は私の1従者でしかないのだ。


彼は私を主人として接しなくてはいけないし、私も彼を従者として接しなくてはいけない。


それは物凄い強制力で


例えば、彼が私を名前で呼び捨てにしようものなら、他の家来達がダダダッとやってきてリオウに殴る蹴るの暴行。


制裁を加えてしまう。



そんなものを見てしまえば。


いくら私がリオウと仲良くしたくても、主人と従者という関係を越えた接し方は私には出来なかった。


、、、、そのため彼と話す事は殆ど無くなってしまっていて、



いつしか私の心は乾いてしまっているように感じていた。


------------------------------------------------------------


さて、乾いてしまっていたのだが、


彼との思い出は私を完全に乾く一歩手前で留まらせていた。


今日もそれを考えようと思う。



リオウは幼い頃から行動力の塊だった。


探検とか冒険とかが好きなタイプなのだろう。行ったことの無い場所にはとりあえず行ってみよう、が彼の口癖だった。


何が困る事かと言えば、


それに私もついて行ってしまうことだった。


王女の私が行方不明になったり、とんでもなく高い所にいたり、入ってはいけない場所に入ったり。


そのたびに、私と彼は怒られて、、、


いや、特に彼が怒られていた。



でも、彼はいつも笑っていて


「今回はバレちゃったな。次はバレないようにしような!」


なんて、ペロッと舌を出して全然反省していなかった!


でも私はそれがとても好きだったし、私も「次も付いていこう!」なんて決心をしてしまっていたから人の事は言えない。


そして後もう一つ、特徴を挙げると、彼は人の痛みが分かる人ということだ。



彼は幼い頃に両親を亡くし、親のいない彼は色々な人に目をつけられて危害を加えられる事が多かった。


でも、それが彼を優しく、強くさせたのだと思う。


、、、そんなところかな。


とにかく、はっきりと言えば、私は彼を好きだ、という事だ。


それは人前では絶対に見せるわけにはいかない私の秘めた気持ち。


繰り返しになるが、その秘めた気持ちが私の心を完全に乾く一歩手前で留まらせていた。


しかし。



その秘めた気持ちさえも私から奪い去る出来事が起きてしまう。

------------------------------------------------------------


それは、私に縁談話が持ち上がったのだ。


それは隣国との同盟関係の交渉の場において。


、、、それは、よくある話だった。


他の国と何かを約束した時には信用の証を互いに交換する。それは宝であったり、人であったり。


それがたまたま今回は「私」であったという、ただそれだけのこと。



でも。



隣国といえども嫁げばこの国にはもう戻ってこれまい。それは彼とは二度と会えなくなる事を意味するし、彼以外の人と関係を持つ事になるのも気分を害した。



その想像だけで何度も吐いてしまった。




リオウと、もう、会えない、、、、



リオウ以外の人と、、、、私は、、、、




------------------------------------------------------------


覚悟はしていたつもりだったが、実際にそうなると、それは想像以上に私の心をぐちゃぐちゃにした。


私の人生、が、根幹から崩れ去ってゆく、、、気がした、、、、、。


しかしながら同時に頭では理解していた。


これを拒否する事は許されない。


だって私は恵まれている。


この婚姻が望まないものだとしても、私は衣住食で困っていない。


世の中には食べる物も手に入らず死ぬ人もいる。


その人から見れば、私の婚姻を嫌悪することを単なる我儘だ、と切り捨てるだろう。


人にはそれぞれ立場や義務があり、私はたまたまそれが義務だった。



それだけのこと、、、、。



でも、、、、。



それでも、私は、、、、



私は、、、、、。


------------------------------------------------------------


そして、婚姻の儀の当日。



私は華やかな衣装を纏い



城の最上部の回縁に立ち、民衆に手を振り、婚姻を伝える。


そして下城。牛車に乗り込み、隣国へ、出発する、、、、、。



ガラガラガラガラ


牛車はゆっくりと城の門へと向かって歩く


ガラガラガラガラ


その歩みはゆっくりと。



ふと


牛車の窓から景色を見れば、そのどこもが私がちょこまか歩き回っていた場所。



幼き頃から今日までの、毎日。



様々な、思い出が、あったと、



本当に色々あったと



思い出が走馬灯のように頭を駆け巡る



そして


ぽろり、、と、



一粒の涙を、零した。


私「、、、あれ?」



ぽろり、、、ぽろり、、、、



なんだろう



ぽろり、、、、ぽろり、、、、ぽろり、、、



なんで、、、、



私「うっうっううっうううう」




私は涙が止まらなかった。


この門を出れば、私はここに帰って来る事は二度とないだろう。


ここでの生活は全て思い出に変わる。


ここでの生活は全て幸せであった。


その全てが。




でも。


、、、、私は、やるべき事をやらなくてはいけない。


それが人の定め。


この国で、王女として生まれてきた私の宿命。





、、、、ふと、門の前の近衛兵と目が合った。


、、、、リオウだ。







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