5月6日 機械少女と影
僕の毎日は同じ事の繰り返しだった。
寝て起きて、高校へ行き2人と会って、アパートへ帰る。
2人との時間は確かに楽しかった。
が、いつの間にか、
ガムのように、
噛み続けているうちに味がしなくなってしまった。
同じような日々を繰り返し続けると、
いつか人は生きる意欲を失ってしまう。
今ある幸福に飽きてしまう。
だから僕は、病気になったのだ。
「じゃあな」
「ばいばい」
と手を振る2人に「またね」と言って手を振り返した。
自転車に跨る。
僕は今日も1日分の高校生活を処理して、
アパートへと帰っていく。
帰り道は、やけに早く到着するように感じた。
鍵を開けて、乱雑に靴を脱いで玄関に散らかし、
リュックをぶん投げて寝室のベットに倒れ込む。
いつものこの一連の流れを
僕は何度だって繰り返してきた。
でも、今日からは違う。
鍵を開けて、乱雑に靴を脱いで玄関に散らかし、
リュックをぶん投げた直後、
「おかえり、楓君」僕を呼ぶ声がした。
「ただいま、薺」と返すと、薺は
「疲れた顔してるね。膝枕でもしようか?」
と言って悪戯な笑みを浮かべた。
薺との毎日は、悪くないかもしれない。
疲れきった僕を労わってくれる存在は
少しうざったく感じるが、案外癒しになった。
「じゃあ、お願いしようかな」
と言ってみる。
「お、2日目にしてようやく
私の魅力に気づいたね?」
「冗談なんだけど」と笑ってやった。