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機械少女と怪物  作者: 九頭
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5月6日 機械少女と影

「行ってきます」

薺との朝の時間を過ごし終え、僕は言った。

すると、「行ってらっしゃい、学校頑張ってね」

薺はそう言って笑顔を見せた。

その笑顔に励まされて、

身体が軽くなったように感じる。

彼女の笑顔には人を元気付ける力があるらしい。

流石は機械人形だ。

その笑顔も、計算され尽くされたものなのだろう。

ドアを開けると、

眩しい朝日が僕を出迎えた。

自転車に跨り、高校へと向かう。

僕は無事に始業のチャイムまでに教室に滑り込んだ。

これから、苦痛な学校生活が始まる。

気が重くなり睡魔が僕を襲う。

僕はあと1年の命なのだ。

勉強なんて意味も必要もない。

本来ならこんな所に用は無いのだが、

「よお楓!今日も眠そうだな、隈すごいぞ」

「おはよう楓。夜、何してたの?」

僕は2人の問題児を抱えていた。

彼らの名前はそれぞれ水仙 秋斗と、竜胆 秋奈。

秋斗は茶髪で背が高く、

明るい性格で演劇部に入っている男だ。

パッと見の印象は良く話しやすいのだが、

不思議と友達は少ないらしい。

一方、秋奈は腰までの長い綺麗な黒髪が特徴の女の子だ。

いつも穏やかで、部活はやっていない。

彼女は僕や秋斗とは違い、友達も多く、

順風満帆な学校生活を送っているイメージがある。

2人は、数少ない僕の友達だ。

高校に入ってしばらくして、

ろくに友達も出来ず一人だった

僕に近づいてきた変わり者達でもある。

あれは昼休み、教室で一人弁当を食べていた時の事だった。

「ねえ、楓君。お昼一緒に食べようよ」

声をかけられた。長髪の女の子だった。

第一に、何故僕なんかと昼食を共にしようとするのか、

という疑問で頭がいっぱいになった。

とりあえずOKしてみるか、と思い、

「いいよ」とそう答えようとすると、

「あー!竜胆ズルいぞ。青木を独り占めか?」

とやけに迫力のある声が飛んできた。

見ると、長身の男が立っている。

女の子はその声に答えた。

「ふふ、良いでしょ」

「ズルい!俺にも青木君くれよ」

「半分こしちゃおっか?」

僕はたまらず言った。

「いや、死んじゃうから」

2人が笑った。

笑顔が見られて、嬉しくなった。

これが僕と彼らとの出会いだった。

それから彼らはよく僕の席へ話をしに来るようになって、段々と距離が近くなっていった。

いつの間にか僕は楓、と

呼ばれるようになり、

僕も彼らを名前で呼ぶようになった。

そして、僕らは沢山の思い出を作った。

遊園地へ行ったこと。

夏祭りで花火を見たこと。

クリスマスパーティーをしたこと。

沢山、遊んだこと。

三人で過ごした1年間は楽しかった。

今現在、2人は僕の病気の事を知らない。

もし、あと1年でお別れだと伝えたら

どんな反応をするだろうか。

面白そうではある。

だが、僕はそれを話すことは無い。

決めているのだ。

最期までこのままの関係性で、

いつも通りの2人と

一緒に生きていたいと思っているから。

だから僕は、明日もここへ来なければいけない。

少し修正しました

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