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機械少女と怪物  作者: 九頭
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5月6日 機械少女と影

時刻は朝の五時、私は眠りから目が覚めた。

壁にかけられているカレンダーによると

今日は5月6日らしい。

昨日はあの男の子、青木 楓と沢山話をした。

その中で、機械の体と傷を見せるために、

彼にありのままの姿を見せた。

私は見てくれは完璧な美少女のはずなのに、

結局、特に何をされることも無かった。

少し不満だ。

別にそういう事をされたかった訳ではないが、

まるで私に魅力が無いみたいじゃないか。

機械なのが、駄目だったのか。

傷が、痛ましかったのか。

「とりあえずここで寝といてよ」

彼はそれだけ言って

部屋の電気を消してしまったのを思い出した。

私は可愛いはずなんだけどな、

そういう風に作られてるはずなんだけどな。

ベッドから起き上がり、辺りを見渡す。

窓を見つけ、景色を見てみると綺麗な朝日が登っていた。

鏡みたいに私の顔が窓に反射して見える。

「うん、寝起きも可愛い。私」

愛らしい唇、高い鼻、

ハッキリとした二重に宝石みたいな瞳。

計算されつくした可愛さだ。

可愛いの究極、結論と言ってもいいだろう。

私の顔には傷が無かった。

彼は意図的に、顔は避けていたらしかった。

窓から少し離れてみる。

体中の傷が思っていたよりグロテスクで、

私は目を背けてしまった。

機械人形は再生能力を持たない。

破れた皮膚も勝手には治らない。

しばらくは、このままだ。

「さて」

まだ朝も早い。

私は二度寝をする気分にもならず、

面白半分に彼の素性を調べる事にした。

そこに制服がかかっているのがみえる。

近くにリュックも置いてあった。

恐らく、彼の学校用のものだろう。

やる気が出てきた。

ここは一男子学生の部屋だ。

探せば、恥ずかしいポエムなんかが

どこかに隠してあるかもしれない。

早速私は寝室の角にあった学習机に取り付いた。

引き出しから出てきたのは

大量の教科書、ノート、テスト。

テストの点数は

今に近づくほどに低くなっている。

特に最近のは覚える気すら

無いように思えてしまう。

次に先程見つけたリュックに手をつけた。

生徒手帳を発見し、中身を確認する。

名前は「青木 楓」

彼は高校二年生らしい。

高校へはここから歩いて行ける距離にある。

夢中でやっていると、

辺りにあるものは全て漁ってしまった。

結局、ポエムやそれに近いものが

見つからなかった事に落胆する。

お腹が鳴って、空腹に気づいた。

彼に朝ごはんをねだらなければ。

私は立ち上がった。

彼との朝は、

かつて私がここへ来る前に過ごした

楽しかった日々を思い出させた。

それと同時に、日に日に変わっていった

以前の主人の記憶も蘇る。

彼は死ねて幸せだったのかもしれない。

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