表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/72

師匠と弟子

 私の目の前には、昨日作成した指輪が5つ。

 3つは純ミスリルで作られた魔法の指輪。

 そしてもう2つはオリハルコンを混ぜ合わせ作られた魔法の指輪、どれも下級魔法の媒体としては問題はない。

 オリハルコン入りの指輪は火、水、風、土の基本四属性の他に光、闇、無、全属性のマナ融合が可能で、融合比率最大は1:6、自身のマナ1に対して6の自然界のマナを吸収し融合する事が出来る、つまり7倍と言う事だ!


 まあ、実際、7倍と言うのは大した事ではない……、1:9、10倍は欲しかった。

 

 魔術とは違い魔法はイメージ力が物を言う、使うマナ量に属性、威力や射出スピード、様々な物事をイメージし放つ。

 10のマナを使い、15のマナが必要な魔法を放とうとすると、不発に終わる。

 10のマナを使い、5のマナが必要な魔法を放とうとすると、放つ事は出来るが威力、効果は激減してしまう。

 しかし、それは下級魔法であるならばだ。

 それが中級魔法、上級魔法あるならば、不発どころか暴発する事も少なくなく、威力、効果が激減するどころか発動する事すら叶わない。

 

 魔法と言えど万能ではない、成功させる許容範囲狭く、マナを最大限活かす事はかなり難しい。

 故に魔法を呼吸するか如く扱える者の事を賢者と呼んだ。


 

 指輪の出来としては……、私なりに頑張ったのだが、完成したのを見ると、どうもしっくり来ない。


 ——素材ありきの出来になってしまったが、それはご愛嬌、下級魔法の媒体としては合格と言う事にしておこう。


 そうそう、オリハルコン無しの方は……、基本四属性のマナ融合が可能で、融合比率は1:1……、オモチャ以下だ。

 物が悪い訳では無く……、私の集中力が切れ、惰性(だせい)で作ってしまったから……。


 ——まあ、腐っても純ミスリル、売れん事はないだろう。




◆◇◆◇




 「リラお姉様、明日は戦場に向かわれるのですね、私も微力ながら応援に馳せ参じます!」


 ——ああ確か……、さすらい踊り子だったか。


 「ティファ様、ご安心下さい。

 リラ様の拳はまさに聖拳の如く、奴らなど一撃で粉砕されてしまうでしょう」


 不敵な笑みを浮かべ、ティファに目線を送るメアリー。


 「それもそうですわね、メアリーお姉様。

 明日、彼の地は奴らの血で染まる事でしょう」


 「「ふふふふっ」」


 2人は不敵に笑う。


 ——ん? この子たちはどんどん馬鹿になって行くタイプかな? 

 授業だからね? それに奴らって……、あのババァ1人だし。


 明日は試験当日、想定される事は多々あるが、見届け人のメンバーを見る限りゴリ押して来るのは明白、しかし、それも想定内、抜かりは無い!


 それよりも今日は……。


 「ティファ、メアリー、これを」


 それは私が作ったオリハルコン入りの2つの指輪。


 「コ、コレは!!」


 ティファは指輪を見るや否や驚きに似た歓喜の表情を見せた。


 そう、これは魔法の媒体、下級魔法に制限してある安全かつ実用性のある物である。

 

 「はい! ティファ間違いありません! ではリラ様、遂に!!」


 メアリーもまた歓喜の表情を見せる。


 そう、遂に真なる魔法を教える時が来たのだ。

 まずはマナ属性にあった魔法と回復魔法、ゆくゆくは他の属性や強化魔法を……。


 ——ん?


 「や、やりました! メアリーお姉様! 遂に私たちの願いが!」


 「は、はい、ティファ様! 遂に私たちがリラ様の弟子として認められました!」


 ——はい?


 「師匠は弟子と認めた者に証を授けると言います、コレがリラお姉様の、いえ、リラ師匠の弟子の証! し、し、しかも! ミ、ミスリルではありませんか!!」


 「ミ、ミ、ミスリルですか?! ミスリルの加工が出来る者など国に数人しか!

 しかも、こんなにも小さな指輪に加工する事なんて!!」


 ——え? れ、錬成しただけの指輪なんだけど……。


 「忙しい中、この様な物を用意していただけるなんて、感激です!」


 「これで私たちはリラ様の弟子となれたと言う訳ですね」


 ——えっと……。


 2人のキラキラした眼差しが私に向けられる。


 ——はい無理! 


 「ま、まあね、2人とも頑張ってるしね……」


 「リラ師匠が教えてくださっている闘技の名は! 名は何というのでしょう!」


 ——え? 名?


 ティファが目をギラギラさせ聞いて来るが、当然、名などある訳もなく……。


 「と、特に無いかなぁ〜」


 「それはいけません! リラ師匠の闘技はいずれ世界に轟く闘技! 絶対に名を付けるべきです!

 でも安心して下さい、こんな事もあろうかと私とメアリーお姉様でいくつか用意してあります」


 ——よ、用意?! 


 安心と言う言葉が出た瞬間に不安しか無かったが、私の心配は的中する。

 痛々しい名が次々とティファの口から出てきたのだ……。


 そして……。


 「ではでは、天をも超えると言う願いを込め、逆天、無双流と言うのはいかがでしょう!」


 「必ず入る究極とか超とか無双とか、止めるつもりは……」


 「当然ありません!」


 ——ですよねぇ〜、まあさっきのが一番マシではあるか……。


 「じゃあ、今ので行こうか……」


 この時の私はどうかしていました、次から次へと出てくる痛々しい名に、不覚にも少し良い名だと思ってしまったのだ。


 「逆天、無双流ですね! 私としては神聖リラ超滅殺流の方がオススメだったのですが……」


 ——私の名前を入れるのは勘弁してー!! しかも神聖に滅殺なんて痛い所の騒ぎじゃない……。


 「い、いや、逆天、無双流! うん! それが良いよ!」

 

 ここに武術に魔法、その他、総合闘技術『逆天、無双流』が誕生した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その頃ローレンス国王に急な知らせが飛び込んで来た。


 「オスディアとノートザムルが停戦? 急な話だな」


 ローレンス王は静かに呟く。

 

 「はっ、停戦とは言ってもノートザムルが一方的に宣言を行い、オスディア大陸から軍の撤退を始めた様です」


 ロンフェロー公国から遠く離れた地の出来事、しかし、それは衝撃的な知らせだった。

 ファストーロにも匹敵する軍事力を誇る2国間での戦争は長きにわたった戦争。


 そんな膠着状態にあった戦争が何の前触れも無く、停戦へと向かった。


 「ノートザムルが一方的に始めた戦争を一方的に停戦? オスディアが黙っている訳ないだろ」


 「はい……、しかし、何故かオスディアに主だった動きは無く、不気味としか言いようがありません」

  

 「……」


 報告に考え込むローレンス、そして重い口を開く。


 「遠い地の出来事だが、我々としても無関係では無いか……、ローゼンマルクの動向も気になる。

 我々ではデゼルトに干渉は出来ん、仕方あるまい、彼らを呼べ」


 「はっ! 直ちに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 読んで頂きありがとうございます。


 次回投稿は11月19日(金)の予定です。

 

 多くの皆様に読んで頂ける様、精進して参ります。


 応援宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ