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指輪

 私は鑑定を終え、自室にて多くのゴツゴツとした石に囲まれ上機嫌であった。


 「ふっふっふっ、はっはっはーー!」


 何故かと言うと、ミスリルを手に入れました!

 しかし、錬成前の、しかも少量ミスリルを含んだ混合鉱石。

 純ミスリルは思いの外、高価だった、高価過ぎた……、まあ、私のお金を使えば余裕だったが、さすがに……。


◆◇


 「おいおい、ヴァン! 予算5万じゃ、ミスリル端材すら買えねぇぞ!

 コレで20万ガルドだ」


 そう言うと店員は小指の先ほどの緑色に光る金属の様な物を見せる。


 「ちょ、ちょっと待て! いくら何でも高すぎるだろ! そんな端材、前は1万出せば買えただろ!」


 「錬成士がいねぇんだよ、お前、純ミスリルの産地知ってんだろ、どう言う経緯(経緯)で作られているのかも……」


 父様の問いに怒りの様な表情を浮かべ答える店員、純ミスリルの生産は曰く付きであった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 純ミスリル生産地、バウンセン公国、別名『奴隷の国』

 デゼルト大陸、ローゼンマルク教国支配下にある鉱山大国である。 


 奴隷の国と称されるには理由があった。


 昔、聖クリッド教がとある教えを広めた。


 『神の眷属は人間族のみである』


 これを機に、聖教の影響力が強かったデゼルト大陸全土では、人間族以外を亜人呼び迫害の対象となった。

 しかし、彼らは国々とって無くてはならぬ存在。

 獣人族による採取、採掘。

 エルフ族が行う錬成術や錬金術。

 ドワーフ族の作る金属加工品。

 リンク族が施す魔法付与、全てが生活の一部となっていた。


 権力を求める人間族、争いを好まない亜人たち、今にも争いが始まるのではないかと言う歪な関係は長きに渡った。

 

 理由は亜人たちの技術力、それに亜人たちと良き関係を結んでいた国々の存在だった。


 しかし、その均衡が破られる。


 アルカーナ大陸から突如として流れてきたミュラーハルト・フォン・ローゼンマルク率いる落武者たち数百名。

 彼らはデゼルト大陸に上陸すると、他の街や村には目もくれず内陸の、ある場所目指した。


 前聖クリッド教聖地、コル・カロッカ。


 ミュラーハルトがコル・カロッカに入るとそこからデゼルト大陸に激動の世が始まる。

 ローゼンマルク教国の建国、ミュラーハルトの教皇就任。


 そして……、侵略。


 ローゼンマルク教国は多くの国々を傘下に置き、亜人の国、それに組みする国々に進行を開始する。


 アンゴラカークランド滅亡……。


 ブラド公国滅亡……。


 スタージェン王国滅亡……。


 ハイデルン滅亡……。


 ミスカ滅亡……。


 そして、それらの残党が集結し、最後の戦いに挑んだ地がドワーフの国、山々に囲まれた自然の要塞バウンセン。


 当時の最先端であった技術力誇ったバウンセンであったが、古代技術力を用いたミュラーハルトの武具により、敢えなく陥落。

 ドワーフ王含め、全ての国民が奴隷となった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 

 現在も当時と変わらず、この陸の孤島にて強制労働が課せられていた。

 しかし、数年前、このバウンセンにて原因不明の感染病が流行、現在は収まったものの実に国民の半数が死亡。

 バウンセンでの産業は一気にその数を減らし、その余波は全国に広がってる。



 そんな事情がある事など知らぬリラは、手に入れた安物のミスリル混合鉱石を前に、ニヤついていた。


 ——やはり私のマナ属性は土だった、水属性の事は触れられなかった……。

 第一属性までしか鑑定出来ないのか、そもそも精度が低いのか……。

 まあ、いいや、今は錬成! 錬成ってアレでしょ? 成分を分離したり、少し再生出来たり。

 うん、私には出来る! しかも何だか得意分野な気がする、いや! それが土属性の得意分野だ!!


 私が上機嫌な理由、それは錬成が出来るからだけではない。

 この混合鉱石には……、オリハルコンも少量だが入っているのだ。

 私には分かる、だって私のマナ、土属性のマナが教えてくれる。

 より多くのミスリルやオリハルコンの入った鉱石を選んで買ってきたのだ。


 ——ニヤニヤが止まらな〜い。


 魔法の媒体とは、目に見えない特殊な文字を刻む事により完成する。

 当然それには莫大なマナ、技術が必要だ。

 一流ではないが私にはそれが出来る……え?


 ——な、なんか思い出しそう……、誰かと、一緒に……。


 私は……、意識を失った。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 「リリス、ほら! 最高傑作の完成だ! 神器にだって劣らないぞ、コレ!!」


 鉱物に木材、魔物の素材や薬草、様々な素材が乱雑に置かれた古屋の中。

 額に傷のある黒髪に黒い瞳の少年が満遍の笑みを浮かべ、黒髪に赤い瞳を持つ少女に向かい言った。


 「はあ?! なに自分だけで作りました的な感じで言ってんの?! 普通プレゼントを送る人に、それを作るのを手伝わせる?」


 少年は大人びた貴族が着る様な服を見に纏い、少女は黒いワンピースを着ていた。


 「え?」


 リリス?!


 「え? じゃねぇーよ! 指輪くれるって言ったじゃん! 私にくれる為に作ったんでしょ?!!」


 様々な素材の匂いが混ざる室内。


 「い、いや、コレはちょっと……」


 懐かしい空間……。


 「はあ?!」


 ここは、何処?


 「だ、だって、僕が何百回とチャレンジしてやっと完成させた賢者の石を使って……」


 私はここを知っている……。


 「あぁん?! テメー1回死ぬか?!」


 前世の記憶?


 「い、いや、だから……」


 あの男の子……。


 「だから、くれるのよね?」


 私と共鳴してる……?


 「……」


 ……。


 ……。


 少女は少年から赤い指輪を奪い取り、満遍の笑みを浮かべ指に付けた。


 「ありがとう……、魔王、大事にする……」

 

 ま、魔王?!


 「う、うん」


 少年は困った様に笑った。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 「ま、魔王?!」


 気を失いどれ程の時が過ぎたのだろう、私は自身の声で目覚めると目の前にはルークの姿があった。


 「うたた寝を邪魔されたら魔王呼ばわりですか……、御夕飯のお時間ですよ」

 

 呆れた様子のルーク、私はこの上なく恥ずかしくなった。


 しかし、あの夢? は何だったのだろう。


 リリスと言うのは私? 前世の記憶? 


 ——でしょうね……、って事は、あの男の子が魔王?!

 こう言う時に出て来いよ、()()()! あっ! 手紙……また忘れやがったな!


 

 夕食を終え、少しの団欒後、私は自室に戻った。


 ——冷静に考えれば、おままごとって事も……、いや、アレは間違いなくヤバイ力を持った指輪だった。 きっとあの子が魔王なんだ……、だったら私との関係は?

 ……。

 あぁぁぁ!! 無理! 次、()()()が出て来た時の為に質問リストでも作っておこ……。

 取り敢えず錬成終わらしちまお……。


 目の前には27個の混合鉱石、1つが大人のこぶし大ほどの大きさがあり、色はまちまちである。

 1個2000ガルドで2個はオマケ、お店のオッさんありがとう!


 私は1つ1つ成分を分析、錬成して行く。


 鉄、黒曜鉄(こくようてつ)赤熊鉄(しゃぐまてつ)、銀にミスリル、そしてオリハルコン……。

 目的のミスリルは小ぶりの卵程だったが、オッさんが言っていた金額が基準ならば、500万程はするだろう、オリハルコンは流石に豆粒程だったが……。


 ——この豆粒を二等分して〜、うひひひ。

 

 私はいくつかの指輪を作成した。

 

 読んで頂きありがとうございます。


 次回投稿は11月15日(月)の予定です。

 

 多くの皆様に読んで頂ける様、精進して参ります。


 応援宜しくお願いします。

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