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拳聖の拳

 「「「はちょーっ、はっ、はっ、ははっ」」」


 王城にあるいつもの鍛錬場、メアリーも合流し、3人は格闘術の鍛錬をしていた。


 「拳の才が無くとも拳は作れる! 剣の才が無くとも剣を握れる!

 槍も斧も短剣も弓も、他、全ての物を才が無くとも扱う事が出来る、魔法も錬金も薬の調合だって同じだ。

 しかし! (かた)を覚え、何度も反復し、マスターしたとしても才ある者が繰り出す、作り出す物はそれとは違う。

 では、才とは何か! その秘密は動きにある。

 単に身体の動きの事ではない! 骨、腱、筋肉、マナなどそれに適した動きがあり、それに適した力の伝達方法がある。

 それらをマスターする事が出来れば、才が無くとも才がある者と変わらぬ力となる!

 まずは、打撃技、投げ技、関節技、素手での戦闘術をマスターしてもらう! 理由は簡単、就寝中、入浴中、武器を身に付けていない時は多々ある、戦闘中、武器が手から離れてしまう状況もあるだろう! どの様な状況でも使える武器となる、そしてもう1つ、間合いの把握。

 戦闘において素手の状況が一番、間合いが狭い、剣士が槍士に勝つには3倍の実力が必要と言うがアレは嘘だ、時間制限があり、ルールがある試合ならばそうかも知れない、しかし、槍は重い、攻撃を交わ続ければ先に体力が切れるのは槍士、森の中や、屋内などで槍を使う事なども出来ない。

 要は、有利な状況に持ち込むのが重要であり、それを多彩にするのが間合いの把握!

 相手の間合いで戦うな! 自分の間合いに入ったならば、一撃で仕留めろ!!

 大地を踏込み、風を読み、その力を余す事なく拳に伝え、敵を粉砕しろ! こぉーーっ、はちょー!!」


 「「こぉーーっ、はちょー!!」」


 メアリーとティファは恐ろしい上達を見せていた。

 特に格闘の才を持っているメアリーの上達は私の指導も相まって異次元の領域に達していた。

 その理由の1つがマナコントロール。

 メアリーはマナコントロール5つある極意うちの2つ、自然界のマナを体内に取り入れる『マナ吸収』、全身に循環される『マナ循環』をマスターするまでになっていた。

 マナ吸収は上記の通りだが他にも、体内に溜め込めるマナの器を少しづつ増やす事が出来る。

 そして、マナ循環は全ての身体能力が上昇すると言う物、強化魔法に似ているが、かなり異なる。

 循環させているだけなので、マナの消費がなく、全ての身体能力が上がっている為、オーバーパワーによる身体の負担やそれによる怪我もはない。

 更に強化魔法を覚えれば、その威力は……。


 実はティファもマナ循環を意識的に使える様にはなっている、そう、メアリーはマスターしている。

 意識しなくとも使えると言う事だ、睡眠時も例外ではない。

 この世界ではマナ循環と言う概念はないが、オーラや気、などの名称で不思議な力として認識されている様だ。


 「はい! 武術はここまで! それじゃあ30分の瞑想後、マナコントロールをやって行こう!」


 「「はい!」」


 「その前に、ティファもマナ循環をマスターしつつあるし、ちょっと早いけど、次の段階、『マナ放出』を見せておくね、メアリーには瞑想後、コレを鍛錬してもらうから」


 「はい!」


 「じゃ、あの木に向かって打つからね」


 私は立ちながら瞑想状態に入り、集中する。


 「マナの流れ、風の流れ、大地の匂い……、自然と一体化し瞑想状態に……、そして、マナを拳から吸収し、それをとどめる……。

 循環させているマナを拳に集め、吸収したマナと融合させる……」


 私の拳にマナが集まり、それは次第にマナの渦となって行く。


 ——周囲は、トトに防音結界を頼んである、才能ある2人が、超優秀な師である私が教えれば、すぐにマナ放出も出来てしまうだろう……、ここは師匠として大きめの壁を用意してやらねば。


 「そしてコレを自身のマナを爆発させ……、放つ! はちょおぉぉーー!!」


 角度は上方30度、周囲に被害を及ぼさない為の私の配慮だ……。


 ドゴォン!!


 「「きゃーっ」」


 放たれた大きな拳状の衝撃波は、生い茂る木にあたると、物凄い音と共に大きく揺れ、殆どの葉を落とした。

 木の下に目をやると、先程まで地中にあったであろう太い根の一部が地上に顔を出し、衝撃の大きさが見てとれた。


 ——ふう、まあ、こんなもんだろう。


 目を丸くする2人、そして口を開く。


 「ティ、ティファ様、こ、これは……」


 「は、はい、間違いありません!」


 「拳聖ローガン様の闘技、拳聖の拳……」


 「え、ええ、奥義ゴットマキシム・アトミックパンチ……」


 ——えっ? 拳聖の拳? ちょ、ちょっとまって!


 「ゴ、ゴットマキシム・アトミックパンチ……?」


 ——な、なに?! そのダサいやつー!!


 2人は私に色々説明をはじめる。


 ローガン・ドゥー、聖拳の天職を賜った拳法家であり、カイエン拳法の総師範代にして、代々カイエン拳法に伝わる、風の聖拳ビュンビューンの所有者。

 風の聖拳の威力は凄まじく、それを使うローガンの実力も相まって『世界最強の格闘家』と言う名声は世界で知らぬ者はいないとまで言われている。


 ——私は知らなかったけどね。

 

 カイエン拳法の発祥はデゼルト大陸中央にある国セイドゥン。

 現在は多くの国々に道場が点在し、デゼルト十指流派(じっしりゅうは)の1つに数えられている。

 

 そんなカイエン拳法道場に通う者のごく僅か、選ばれし数名がローガンに教えを乞い、伝授されると言われるのが奥義ゴットマキシム・アトミックパンチ……、と言う事らしい。


 ——ん?


 「そう言えば、何でさっきのがその奥義だって2人共知ってるの? 見た事あるの?」


 「いいえ、リラお姉様、見た事はありません、ですが、奥義ゴットマキシム・アトミックパンチは拳状の何かを放出する奥義と言うのは周知の事です」


 「私も見た事はありませんが、リラ様は放出された、それは書物の挿絵と類似している物でした」


 ——2人共、見た事ないんかい! んー、話を聞く限り、マナ放出……、この世界でもマナを使った技あるだ……。

 まあ、そりゃそうだよね、マナを探求していけば、必然だよ。

 ただ、コレを奥義って……、いや、今はやめよう、考えてもしゃあない!


 「まっ、どこかの奥義だろうが、2人にはコレを覚えてもらうからね。

 じゃっ、瞑想を始めよう!」


 「「はい!」」


 私たちは鍛錬に戻った。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 「待たせたな婆さん」


 ヴァンがモモンジャの家を叩く。

 複数の者たちが物々しい空気を漂わせ集まっていた。


 「遅かったね、首尾は?」


 開いた扉の奥に目をやると、複数の者たちが物々しい空気を漂わせ集まっていた。


 「ああ、バッチリだ」


 そう言うとヴァンは後ろに目線を送る。

 そこにはグラードとドヤ顔を見せるパト、チャウシーがいた。


 「ご苦労だったね、入っな、早速、儀式の準備に取り掛かるよ」


 


 

 

 読んで頂きありがとうございます。


 次回投稿は11月8日(月)の予定です。

 

 多くの皆様に読んで頂ける様、精進して参ります。


 応援宜しくお願いします。

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