何気ない事件簿
サスペンス物は得てして曝す事の出来ない事ばかり。あえて言うなら致る所に謎解きのヒントとフラグがたっております。途中経過で事件の纏めを作り読者様へ結果を想像してもらいたいと思っております。
「カチカチッ…」
「ピーポー、ピーポー……」
……
「はい、被害者は天海裕子、歳は24歳、外傷は首の後ろを…刃物と思われますが一突きです。争った形跡はありません、通報から駆け付けた時には既に呼吸はありませんでした。第一発見者はいません。連絡を受け近くに居た私が現場へ駆け付けました。」
…
「北條君は現場で鑑識が来るまで待機、詳しい話は調書を取るから。」
「了解です。」
「あぁそれと遠山さんがそちらに向かってるから、彼にも状況を詳しく説明しといてくれ。」
「了解しました。」
しかし酷いな、そこそこ見慣れて来たとはいえ、若い女性の遺体には目を覆ってしまいそうになる。
何時もは遠山さんと動いているので現場に一人で踏み込む事はないのだが、通報から1番近くで別件の捜査をしていた私が通報の状況が状況なだけに単独踏み込む事になった。
状況を分析し、後ろからもしくは前から手を回し首の後ろを一突きといった所か、得てしてこういった状況を推測すれば、身内関係筋が先ず疑われる。何故か?物取り、強盗類いの線でいけば、一突きでの急所は先ず無理である事、つまりホトケが“知っている顔”でなければ…近距離からの犯行は無理といっても良い。更に言うなら、相当に油断させる事の出来る状況をつくり出せ犯行に及ぶ事の出来る人物。
痴情の縺れ、怨恨、まぁ大概はそういった線で捜査も入って行くであろう。
……
「バタン…」
ドアを開ける音に気付き目を向ける…
「あっ、山さん。鑑識より早い、流石現場第一主義ですね。」
「…馬鹿言ってねぇで先ず現場の状況を教えろ!」
「はい は〜い。」
遠山 巌 西新宿署 捜査係2課の刑事 61歳 後数年もすれば退職だか現場一筋の偏屈親父のせいか出世を自ら放棄しベテランとして活躍している。もちろん経験と裏付けされた知識と鋭い勘で解決した事件は数々。普段は温厚で言葉少なめな性格のせいか“ホトケの山さん”等と呼ばれている…
「某ドラマの影響は20年以上経っても凄いものだ。」私は3年程前からこの山さんこと遠山さんに付き刑事としての“教え”をよろしくご指導して貰っている。
「ガイシャは24歳 天海裕子 独身
通報時刻が7時13分
私が駆け付けたのが7時18分
予想犯行時刻は通報時刻の前後3分程
凶器は刃物と思われます。 後部から首の頚椎辺りを一突き。出血多量によるショック死とみられます。 現場が荒らされてない事、財布、宝石等金銭が取られてない事、刺し後等からガイシャの顔見知りの可能性が高いと思われます……後…
前から刺したと思われます。
「…何故そう思う?」
「血が噴き出し床に付着した後が綺麗に放射線状になっており、恐らく犯人は血痕が残らないように刺した。刃物の扱い方を知っており。周到に後の事を“考えて”犯行に及んでます。」
「ふん、『見て』『観て』『診る』事は大体出来てるな。」
「他には?」
「え〜っ、他ですか?」
私は眉間に皺を寄せ顎に手をあててしばし考えてみた…
「う〜ん?………あ!痴情、怨恨の縺れの可能性が高いっス!」
「馬鹿たれ!!」
「ひいっ!」
「んなこたぁ、見ればわかる!」
「予測犯行時間から何分経っている?」
「え〜っと…30分っス」
「じゃぁ、犯人はまだ近辺に潜んでいる可能性だってあるだろ?」
「事件は初動捜査が大事なんだってあれほど言ってるだろうが!」
「まだ痕跡が残っているかもしれん、此処は一人現場に残って、お前は直ぐ足で追え!」
「了解しました!」
私はくるりと足を返し外へ出た。