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OLを助けました  作者: へたくそ
一章
1/3

ある雨の日

その日は雨が降っていた。今朝の天気予報でも降水率は100%と言ってたので、持ってきた傘で学校の最寄り駅まで濡れずに来れた。もしこの日に傘を忘れるとしたら盛大に寝坊したか、天気予報を見ていない人くらいだと思いながら、列の先頭でホームで電車を待っていた。




『五番線に、電車が到着いたします。ご注意ください』



右側から電車のライトが見える。どうやら俺が待っている電車が来たようだ。そう思っていた時、スーツを着たずぶ濡れの女性が歩いているのが目に入った。身長は160cm程で黒髪のボブ、胸はEはある。男の理想的な体型だ。



だがよく見てみるとその人の目は光を写していなかった。スーツを着ているのに荷物も持っていない。何かおかしい、なぜこの人は列に並ばなかった?なぜ止まらない?その時、女性の奥の方から電車が近づいてくるのが分かった。そしてその女性が何を考えているのかも。



























「おーい上野(かみの)。この後遊ぼうぜ!」


「ごめん、俺用事あるから帰るわ」


「そっか、それじゃまた誘うな〜!」




上野(かみの) 四夜(よつや)。これが俺の名前だ。学校では根暗、陰キャと言われているただの男子生徒。静かな空間が好きで、教室で大人しくしてたら陰キャ呼ばわりされた。解せない・・・。でも俺に話しかけてくれた伊藤(いとう) (ひかる)は俺にも話しかけてくれたりする。



帰り支度を整えた俺は、バケツをひっくり返したよう雨が降っているのを見て、持ってきたちょっと大きめの傘を広げスーパーに向かった。買うのは今晩のカレーの食材。それと明日の弁当のおかずもついでに買っていく。




「合計で2670円になります」




会計を済ませた俺は、レジ袋を片手にスーパーを出る。登下校中に音楽を聴いている俺は、今日もテキトーに映画を見ながらご飯の支度でもするかと考えていた。いったい何を見ようか、そんな事を考えているとあっという間に駅に着き、電車も来た。



















そして、その駅のホームの線路に向かって止まらず歩いている女性がいた。ずぶ濡れの体、暗い瞳、そして力無くフラフラと歩く姿。止まる事なく歩き続ける彼女と同じく、電車も近づいてくる。このまま両方が止まらなかったら・・・。そう思った俺は考えるよりも先に体が動いていた。女性の片足は既に電車の軌道の上、1秒もしない内に彼女と電車は接触する。




その時、世界の時間がゆっくりになったような錯覚に陥った。周りがよく見えるが音が消えた。咄嗟に手を伸ばし彼女の腕を掴む。そして次の瞬間、俺の視界は電車のライトで埋め尽くされた。






























周りでは雨が屋根に打ちつける音と、人が騒いでいる声。そして買ってきた食材と傘が散乱していた。俺に関しては、激しい運動はしていないのに心臓がバクバクなって、息が上がっている。


そして、俺の腕の中にいる女性は、何が起こったのか分からないような顔をしていた。だが自分が何をしたの理解したのか、それとも雨に濡れたせいなのか女性の体は震え始め、目には光が戻っていく。




「君たち!大丈夫か!」




近くにいた駅員が直ぐに俺たちに駆け寄ってきてくれた。俺自身、頭が混乱してうまく声を出せない。とりあえず、女性に怪我がないか確かめるために、声を掛けようとした。だが女性に目を向けると目が合った。そこで俺はまた、声を出せなくなってしまった。
















彼女は涙を流している自分に気付かないまま、俺を見つめていた。

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