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異世界エイナール・ストーリー  作者: 七霧 孝平
異世界エイナール・ストーリーⅡ 闇剣士クロンの復讐記

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第1話

クロンはジライに聞いた情報をもとに、森の奥深くへ向かう。


森の奥深く。そこには洞窟の入り口が存在していた。


「ここか……」


クロンの前に広がる洞窟の入り口。


「こいつは思ったより……」


それはクロンの想像よりもはるかに巨大な入口であった。


(この入口の大きさ……大群か? 大物か?)


クロンは思案しつつ、剣に手を掛け、洞窟へ入っていく。


洞窟は広くクロンは慎重に進むが、何事もなく奥へ進んでいく。


(この広さ。大群だったら骨が折れたが――)


そう考えながら奥を覗くとクロンは内心、驚いた。


(でかい……!)


洞窟の最奥。そこにいるのはオークと思われるモンスター。


しかも、クロンが旅をしてきた中で見たモンスターでも、かなり大きいサイズである。


(だが今は背を向けている。今なら――!)


クロンは壁から飛び出すと、剣を抜き一気にモンスターへ加速する。だが――


「気づいてないとでも思ったかぁ?」


「っ!」


モンスターは、クロンが振り下ろそうとした剣を振り向きながら掴んだ。


「なんだぁ? 大きな剣だが使い手は小僧かぁ?」


オークは剣ごとクロンを持ち上げると放り投げる。だがそれはクロンの計算通りであった。


「感謝するぜ」


クロンはオークの先、オークが貯めていたと思われる宝に着地する。そこには――。


(この子か……)


宝の山には銀髪の少女が一人、横たわっていた。


「宝は渡さねえぞぉ!」


オークは棍棒を掲げクロンに迫る。


クロンはすぐさま大剣を構えた。


「そんな細腕でぇ!」


オークの棍棒が振り下ろされる。


あまりにも違う体格差。


だがクロンの大剣は棍棒を受け止めると、軽々とオークごと弾き飛ばした。


「な、なにぃ!?」


オークは飛ばされながらも驚きを隠せない。


(さっき剣を掴んだときには、こんな力はなかったはず!?)


「こんな力はなかった……とでも思ってるのか?」


「!」


「最初の一振りは試しだ。お前がどれくらいの力の持ち主かのな」


クロンは剣を振り上げながら話す。


「しょせんただのデカブツだったな」


「ま、待てっ――」


剣の一撃がオークを切り裂く。それで決着はついた。


「まだだ。こんなのではあいつを殺せない……」


村で見せた優しい表情と同じ人物とは思えないほど、クロンの表情は黒く怒りに震えていた。


「……さて」


クロンは表情を戻すと、横たわっている少女を見る。


「おい、大丈夫か?」


クロンの声では少女は目を覚まさない


「……どうするか」


クロンは考えつつ、少女を軽く動かす。


「う……ん」


少しすると少女はゆっくり目を開けた。


「……ここは?」


「洞窟の奥。きみはモンスターにさらわれて連れてこられた」


「さらわれ……。あっ」


少女はハッとすると、しばし考えて訊いた。


「じいは……。ジライは無事ですか?」


「ああ。腰を痛めているが、村で無事にいる」


「そうですか。よかった」


少女はほっとする。


「じゃあ、帰るぞ。……っと、きみ、名前は? じいさんはメル様と言っていたが」


「あ、はい。わたしはメル。『メルリーン・エイナール』です」


(サブネーム持ち? 偉い子なのか……?」


サブネーム。この世界での苗字の呼び方である。


「あ、メルリーンと呼んでくだされば」


「あ、ああ」


後でジライに確認しようと考えるクロンだった。


「いくぞ。メルリーン」


「はい」




「おお! メル様、ご無事で安心しました!」


「じいも元気そうでよかった。腰はもう大丈夫ですか?」


「はは、もう完全に治って――」


ジライは腰を平気そうに動かす……が。


「う!」


再び腰を痛そうにしてしまった。


「無理をしてはいけません」


後方から村長と宿屋の主人が声を掛ける。


「ジライさん、駄目じゃないか。大人しくしてないと」


だがジライは構わないといった様子でメルリーンを見る。


「お願いできますかメル様」


「もちろんです」


メルリーンはジライの後ろに立つと、ジライの腰に手を当てる。


クロンと村人たちは何をするのかと見守っていると……。


「!?」


メルリーンの手から光が放たれ、ジライの腰に当たっていく。


少しして立ち上がったジライは、今度こそ何もないように腰を動かした。


「き、奇跡の力じゃ」


村長が呟く。


「これがメル様のお力――」


自慢げに言おうとするジライを遮るように村人がメルリーンへ押し寄せる。


「……」


村人が騒ぐ中、クロンも驚きの表情を隠せないでいた。




「なんですと!?」


村の宿屋にジライの大声が響き渡る。


「ジライ……。声が大きいです」


「はっ、すみません。しかし……」


ジライは謝りつつも、メルリーン、そして部屋の隅に立つクロンを見る。


「確かにあの男はメル様を助けてくださった。とはいえ護衛に雇うなどと!」


「倒れているのを見ただけですけど、彼は巨大なオークを倒す実力者です。それに……」


「?」


メルリーンはクロンを見る。彼の視線はどこか悲しげに虚空を見ている。


「いえ、なんでもありません」


「なら! ワシというものがありながら、なぜ護衛にするなどと……」


「ジライ。あなたは――」


その後に告げられた言葉にジライはショックで倒れる。


「肝心な時に腰痛で苦しんでいるから……」


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