1 Mission最終話「ターゲット」
東南アジア北部。
急激な異常気象により、国土の40%が砂漠と化しつつある広大な土地の地下では
地上の世界とは比べ物にならないほどの物資が集められ、同じように広大な施設が埋まっている。
地上にある巨大なビルと広大な施設を、そっくりそのまま地下に運んだような空間。
そこには綺麗な水が引かれ、食料も豊富。様々な施設が地下に蔓延っており、その形相は蟻の巣のようだった。
施設の作りは全て特殊な金属とコンクリートで出来ている。そのため地上が地震などで崩壊しても
この施設には何ら影響は出ない。むしろ地震など跳ね除ける強度を誇っている。
男は地上の入り口から入ると、巨大なエレベーターで下に降りた。目指す場所は地下24階。
施設への入り口はこの場所だけではないが、幹部以外の連中は皆このエレベーターを使う。
エレベーターの下には警備員が構えており、降って来た人間のチェックを行なう。
そもそもエレベーターに乗るには組織の許可証が無ければ作動されず、乗ることは出来ない。
しかしいつ危険が近づくか分からないため、警備には余念が無い。それが心螺旋のやり方だった。
地下24階に辿り着いた男は警備員のチェックをパスし、巨大な通路を進んだ。
その道程には様々な部屋があり、その中では様々な実験が行なわれている。勿論、全ては非合法である。
だからこそ心螺旋の本拠地は地下にあるのだ。地上では目立つために出来ない実験でも、ここでは容易に行なう事が出来る。
麻薬売買で集めた金を資金とし、心螺旋は今日も世界各国で暗躍を続けている。
世界中の警察が心螺旋を追っているが、この場所はまだ嗅ぎ付けられていない。発見する事は困難だろう。
男は「幹部室」と書かれた部屋のドアを開けた。部屋の中では心螺旋のトップたちがU字型のテーブルの前に座り
正面に映し出されたスクリーンに目を向けていた。スクリーンには天誅、死神。黒神 歪の写真が映し出されている。
「この男が天誅、死神の正体。本名は黒神 歪。数年前から日本の裏社会で暗躍しており、我々の仲間も何人か殺されています。
主な武器はショットガンのようですが、他にも様々な武器を使用します。身体的にも優れた肉体を持っており、洞察力、運動神経
行動力、そして攻撃力共にかなり高いレベルを持っております。今現在我々の活動を妨げる最有力者です」
スクリーンで紹介しているのは女だった。ダークグレーのスーツを着ており、秘書のような風貌である。
スクリーンは続いて紅麗の写真が映し出された。
「夜美也 紅麗。彼女は黒神のパートナーとも呼べる人物で、実行犯ではなくブレインの役目を担っております。
優れた計算力と持ち前の知識を活かしていつも黒神をサポートしています。今回のザスター撃破も
彼女の勘と行動力があってこそ成し得た事だと言えると思います。実際問題彼女が居なければ、ザスターは死なずに済んだでしょう。
黒神と比べると脅威度は下がりますが、彼女の存在もまた大きいと言えるでしょう」
更に画面は切り替わって今度はシンの写真が映し出された。
「シン・マイズナー。中国人とフランス人の両親を持つフランス系中国人です。元は中国最大のマフィア、ブラッディ・マリーのリーダーでしたが
現在はブラッディ・マリーを引退し、黒神と同じように我々を追っています。今回のザスターの一件で黒神と合流しており
事実上、黒神に続く脅威度です。所持している武器は日本刀で二刀流。身体的にも優れており、何より身のこなしがかなり優れています。
スピードだけなら黒神よりも上と言うデータが出ています。日本刀だけでなく、テコンドー、空手、太極拳なども極めており肉体系格闘技もこなします。
黒髪とこのシンが合流した以上、連中の力は測定不能にまで達します。我々にとってこの上ない脅威となる可能性が極めて高いと言えます。以上です」
スクリーンの電源が切れ、部屋の電気が灯った。
「涼風杏里のほうはどうなっている?」
U字型テーブルの中央に位置する場所に座っている男が聞いた。
「連中は涼風杏里とも接触しています。ですが、彼女に関して目立った動きはまだ無いようです」
今度は別の男が言った。
「身の程知らずとは言ったものだが、こんな連中が我々の脅威になるとは思えんがな」
「しかし現に連中はザスターを撃破している」
「フン!ザスターなど我々からしたら虫けら同然だぞ。だからどう言う訳ではない」
「いかがいたしますか?アイバース議長」
アイバースと呼ばれた男は両肘を突き、顎を支えたまま黙っている。
「いずれ何らかの手を打つ必要はあると思うが、今はまだその時ではない。わざわざ我々が動かずとも連中は砕ける。
心螺旋はそこまで軟弱ではないからな」
「仰るとおりです」
「そうですな」
「ジェシカ」
アイバースがそう言うと、部屋の置くから一人の女が現れた。
「もし、連中が何らかの動きを見せたときは今度はお前がやれ。ザスター程度では手に負えないようだからな」
「分かりました」
「おお、ジェシカを動かしますか」
「ジェシカは我が心螺旋、特技隊3巨頭の一人。彼女に任せておけば安心だ」
「仰せのままに・・・」
そう言うとジェシカは暗がりに消えて行った。
「討伐抜擢おめでとう」
「死四、お前か」
そこにはジェシカと同じ特技隊3巨頭の一人、死四が立っていた。
「俺たちが動くまでもないと思っていたんだが、腰抜けザスターが殺られたとあっては動かざるを得んか」
「ザスターなど小悪党に過ぎん。私が受け持った以上、次に動きがあった時が最後になる」
「相変わらず凄まじい自信じゃねぇの、それに相変わらずムカつく女だぜ」
「残滓、貴様か」
「ククク・・・てめぇなんかがやらなくても、俺様が出向けばそれで終いなのによ。幹部の連中は頭が悪りぃな」
廊下の奥から3巨頭最後の一人、残滓が姿を現した。
残滓は隔世遺伝によってライオンと人間の遺伝子が融合した姿をしている。常にフードの付いたマントを纏っていなければ
その姿では外を歩けない。一報の死四は通常の人間タイプだが、我ら心螺旋の財力と最新のテクノロジーを駆使した手術によって
身体の9割が鋼鉄で出来ている。そのため死四には銃器や刃物は一切通用しない。
「貴様は相変わらず醜いな」
「ケッ!青臭せぇ女に言われたくねぇよ。3巨頭を2巨頭にしてやろうか?」
「お前が私を?フッ・・・・笑わせる」
「なんだぁ!!」
「よせ、二人とも。ターゲットは別のはずだぞ」
死四が制した。
「フン」
「連中とはいずれ戦うことになるだろう。ヤツらの首を意の一番に見せてやるよ」
「クククク・・・そいつは楽しみだぜ。足元すくわれんなよ!!」
「だがジェシカ、あまりヤツらを見くびるなよ。特に黒神とシンは要注意だ」
「分かっている」
心螺旋の動きは着々と進められていた・・・。
「んで?どうするんだ、これから先」
「別にどうもしない、いつも通りの生活を送るだけだ」
シンの問い掛けに歪はそう答えた。
「特に何もしなくても、いつかカチ合う・・・か」
「そう言うことだ。これだけは避けられん」
「でもさ、心螺旋って未だに良く分からないよね。調べようにもデータが無いし」
「別に良いさ。成るように成るだろうからな」
歪が言った。
「それはそうと、お前はこれからどうするんだ?」
「俺?そりゃ勿論、ここに住ませてもらうぜ」
シンがおどけて言った。
「本気だったのね」
「そりゃそうさ、だってぇ〜行くとこないしぃ〜」
「家賃払いなさいよね」
「うっ!!そ、そりは・・・」
「やれやれ・・・勝手にしろ」
「あれ?歪、どこ行くの?」
「次の仕事だ。依頼が入ってるぞ、知らなかったのか?」
「ええっ!!そうだっけ!?」
「まったく・・・どいつもこいつも」
歪の悩みの種は増える一方であった。
ジャッジマスター 1 Mission The End
The Next Day 2 Mission Start!!
物語は2 Missionへと続きます。