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第十九話 「それぞれの想い」〜1〜

何でも屋、そして始末屋には平日も休日も無い。

仕事があれば仕事になるし、仕事が入らなければ休日となる。

最も、何でも屋と始末屋の2つの仕事で稼いだ金はかなりの巨額となっている。とりわけ裏家業「始末屋」の報酬は

何百万単位から始まり、中には億単位の場合もある。それを考慮すると仕事をしなくても後10年くらいは不自由する事無く生活する事が出来る。

それに甘んじているわけではないのだが、安堵感はあるのは事実だった。

金の管理は全部紅麗が行なっている。銀行の通帳から印鑑、暗証番号まで全て管理している。

毎月歪にある程度の金は渡すが、足りなくなった事は一度も無い。勿論「足りない」と言われればいくらでも渡すつもりだ。

だが歪はほとんど金を使わなかった。普通の男のように飲み食いに金を使うような男ではない。

使うとすれば愛用のショットガンのメンテナンスで使うか、携帯用のナイフに使われるかのどっちかである。

金もあり住む場所もある。それが紅麗を安心させる要因だった。


今日は仕事の予定は無い。ここしばらく天誅会の件で時間を取られまともに睡眠を取っていなかった紅麗は

昼頃まで寝ている予定だった。しかし凄まじく食欲をそそられるような香りが部屋中に漂い、思わず目が覚めた。

「うーん・・・・」

ベッドの中で伸びをすると、遮光カーテンの隙間から差し込む太陽の光に目を向ける。今日は天気が良いらしい。

紅麗の部屋を出ると、小さな通路挟んだ反対側にキッチンがある。今日はそのキッチンが騒がしい。

何かを焼く音や煮る音、水の流れる音などが頻繁に聞こえる。

「なんだろう・・・」

紅麗はあくびをしながらカーテンを開け、部屋の扉を開けて外に出た。

キッチンからの音は未だ続いている。それにしても良い匂いだ。紅麗のお腹は正直に悲鳴を上げた。

「ハロー、紅麗ちゃん♪」

そこにはエプロンをしたシンがいた。どうやら料理を作っているようだ。

「おはよー・・・・ってちょっと待て!!なんで貴方がここにいるの!?」

「えっ?なんでって、今日からお隣に住むことになったんだ。だから食事くらい一緒にしようと思ってね」

「隣にって・・・どこの隣のこと?」

「そこ」

シンが指差したのは今は使われていない歪と紅麗のアジト内にある一室だった。現在は物置になっている。

「おもいっきりウチじゃないのさ!!隣とは言わないでしょ!」

「似たようなもんだよ、これで四六時中紅麗ちゃんと一緒に居られるんだ!俺は幸せ者だな〜」

「あんただけよ、そう思ってるのは」

「ガーーーーン!!シンちゃんシヨツク(つまりショックと言いたい)」

「大体なんで同じとこに住まなきゃいけないのよ!自分の家あるんでしょ」

「いやそれがないんだよね。俺昨日日本に着いたばかりだからさぁ」

妙に嬉しそうなシンの顔が憎い。

「歪は良いって言ったわけ?」

「俺は別に構わんぞ・・・・って言ってました」

「・・・・あのやろー・・」

「う〜ん、それにしてもノーメイクでも可愛いんだな、紅麗ちゃんは」

「へっ・・・・」

一瞬の刹那・・・まだ起きたばかりである・・・。

「うぎゃああああああっ!!そうだ!まだスッピンじゃないの!!忘れてた!」

「アハハハ!良いじゃん、可愛いよ」

「騙されないわよ、あんたみたいな人は油断ならないわ、これでどうだ!!」

紅麗はオモチャの変装道具であるお面を被った。何故かデザインがウルトラマンであるのだが・・・。

「ふふん、これで見えまい!!」

「あの〜それだったら化粧してきた方が早いと思うんですけど」


「凄い!こんな料理見たこと無い。これ何料理?」

「これは中国料理だよ。まあ本場中華の味ってヤツだ。美味いこと保証済みだ」

「ううう・・・・美味しそう・・・」

「まあ座って食べてくれよ。俺と紅麗ちゃんとの出会いを祝って作ったんだぜ」

「ううん、祝わなくて良い。だけど早く食べよう!!」

「な、なにいぃ!!そんな殺生な・・・・」

そんなシンだが、内心では「可愛いから許す」と思っているのである。

「いただきま〜す!!」

「どうよ?美味いだろ!」

「美味しい!凄い、こんな美味しいの初めてかも・・・」

単純に紅麗は感動した。本場中華の味は初めて味わった。

「どわはははは!喜んでもらえて嬉しいぜ」

シンも上機嫌である。

「そう言えば歪は?」

「ああ、あいつなら出掛けたよ。昨日話した涼風杏里さんだっけか?彼女に会いに行くって」

「・・・!?な、なんですって・・・」

紅麗の箸が止まる。それと同時に両目に殺気が宿り、目が炎に変わる。

「あ、いや、なんかこれまでの報告に行くとか・・・言ってましたね、ハイ」(^^;)

「あっそ。なによ、朝っぱらから女ですか!美味しいから歪の分も取って置いてあげようかと一瞬考えたけど」

「考えた・・・けど?」

「食べてしまえぇ!!」

そう言うと紅麗はガツガツ食べ始めた。

「あ、あの、紅麗ちゃん、あまり食べ過ぎるとコレステロールが・・・」

「ふん!!たまには多めにコレステロール取ってやろうじゃないの!!」

もはやメチャクチャである。


「ところでどうしてシンさんは心螺旋を追っているの?」

「シンさん・・・ってのはちょっと余所余所しいな。シンで良いよ」

中華麺を口に含みながらシンが言った。

「いや、私より9つも年上だし・・・どう呼ぼうか迷っちゃって、ハハハ」

「可愛いな〜紅麗ちゃんは。まぢ惚れそう」

「相変わらず軽い男・・・・」

紅麗の声のトーンが下がる!

「んがっ!!なんだ、つい今まで可愛い感じだったのに、急に目が座るなんて」

「シンがどうして独身なのか分かったわ」

「へっ?」

「その軽さよ。好き〜とか愛してる〜とか結婚しよう〜とか、誰にでも言ってんでしょ」

「うっ!!急に腹が!!」

「猿芝居・・・図星。はあ〜やだやだ、軽い男って」

「そ、そんなぁ〜」(T-T)


シンと紅麗、なかなかナイスなコンビである



2へ続く・・・。



END

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