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第十四話 「新興宗教」〜5〜

「光は心にも宿る・・・か。さすが言うことが違うな」

「私も目を失って気付いたんです。それまではただ悲しいだけでした」

「悲しみは時間と共に薄れてゆくものだ。お前はその時間が人よりも短かったのだろう」

「そうだと思います。ところで、貴方は?」

「その質問に答える前に、聞きたいことがある」

「なんでしょう」

「俺はとある組織を追っている。いろいろと単独で調べているんだが、その先に行き付いたのがお前だった。

記憶と視界を消されたと聞いているが、何か覚えている事は無いか?」

「組織・・・・心螺旋の事ですね」

「心螺旋?それが組織の名前なのか?」

「そうだと思います。私も記憶を消されてしまったので明確には覚えてません。だけどその言葉は今でも残っているんです」

歪にとってそれは有力な手掛かりだった。組織の名前は「心螺旋」(しんらせん)それだけでも大きな収穫だ。

「その心螺旋はどうしてお前を殺さなかったんだ?聞けばお前は組織の一員だったそうだな」

「はい。いろいろと事をしていたと思うんです。これも覚えていないので良く分からないのですが・・・」

「お前が覚えている範囲の事を聞きたい。話してくれないか?」

「良いですよ、覚えている限りでよければ・・・」

そう言うと杏里は静かに語り始めた。

「心螺旋は元々は小さな組織だったんです。最初は売春の斡旋やブローカーとの闇取引などをメインに起こっていたグループで

まだ組織と呼べるほどの勢力は無かったんです。でもそれが時間と共に巨大化して行って、気が付くと心螺旋と言う名前が出来上がり

創設者や幹部を名乗る人々が増え始めたんです。私の覚えている限りでは、当時の私は詳しい事は何も知らされておらず

ただ運ばれてくる人たちを指定された施設に運ぶと言う作業を繰り返してました。当然私は医療関係だろうと思っていたんですが

どうやら違ったようです」

「違った?」

「はい。これも私の覚えている範囲なのですが、私が運んでいた人々は皆既に死んでいる人間だったらしいのです」

「死んでいる人間・・・・」

「一部の話では遺体から皮膚や臓器などを取り出して、それを何かに使うと聞きました」

「それは闇市場での臓器売買とは違うのか?」

「違うみたいですね。私の知っている限り、それらを売ったと言う話は聞いたことがありません。

それに彼らが摘出していたのは何も皮膚や臓器だけじゃないんです。脳や眼球、爪なども摘出していたと聞いてます」

どう言う事だ・・・・歪は疑問に思った。単なる麻薬組織ではないのか・・・。

通常の麻薬組織であれば摘出した臓器はブラックマーケットで売られ、それを資金源として麻薬の取引に役立てるはずだ。

人間の皮膚や臓器と言うのはかなり高値で取引される。どんなに安くても300万円はくだらないと聞く。

臓器の種類によっても異なるが、通常なら1000万円レベルで取引される代物である。

それを売買せずにいるとは一体どう言うことなのだろう・・・。

「麻薬とは関係無さそうな事ばかりしているんだな」

「さあ、その辺は私にも分からないんです。私が心螺旋で働いていたのは半年だけでしたから」

「もう一つ質問に答えてくれ。何故自分は殺されなかったと思う?」

「分かりません。私もあの時、暗殺者がやってきたときは殺されるだろうと思ったんですが・・・」

「何故か記憶と光を失うだけで済んだ」

「そうなんです。でも・・・・」

「なんだ?」

「実は私にはちょっとした能力があるんです」

「能力?」

「大したことじゃないんですけど、私は光を失って、心に光が宿ってから、邪なものが見えるようになったんです」

「邪なもの?」

「はい。例えばそれが邪悪なものかどうか、それに近づいただけで何となく分かるんです」

心の目、心眼と呼ばれるものの悟りを開いた者だけが得られる一種の特技だろう。障害者が健常者よりも長けた部分があるのと同じだ。

「心螺旋がどうしてお前を殺さなかったのか、何かわけがありそうだな」

「どうでしょうね。私には分かりませんが」

「もう一つ聞きたい。覚えている限りで良い、心螺旋は今何処に拠点を置いている?」

「心螺旋は時の流れによって拠点を変えています。アメリカだったり中国だったり。だけど私が暗殺者に捕まったとき

一人の男が妙な事を言っていたんです」

「なんだ?」

「ザスターが日本へ向かった。これで日本でも大きな市場が開かれるだろう」

「なにっ!!」

ザスター・・・・この名前には聞き覚えがある。そうだ、天誅会の教祖の名前が確か「ザスター」だった。

ザスターは天誅会を設立した。そしてその設立させた施設には今、紅麗がいる!!

さすがに歪は驚いた。まさか心螺旋と天誅会が繋がっているとは、考えもしなかったのだ。

「貴方に危機が迫っています」

「俺に?」

「正確に言うと貴方ではなく、貴方の良き理解者です。女性が見えますね、何かの宗教でしょうか。大きな施設が見えます」

これが杏里の言う特殊能力なのだろうか。良き理解者の女性とは間違いなく紅麗の事だろう。

「急用が出来た。失礼する」

「あっ!行く前にお名前を。貴方にはまた会うような気がするんです」

「天誅、死神」

「えっ!!」

次の瞬間、杏里の部屋から男の気配は完全に消え去った。

「天誅、死神・・・・あの天誅事件の首謀者が私のところに・・・」

杏里は思い出した。かつて心螺旋にいた頃、幹部の人間たちが口々に言っていた言葉。


「天誅、死神。いずれ我々の驚異となる相手だろう」


杏里は確信した。いずれまた天誅、死神と会うときが来ると・・・。



6へ続く・・・。



END


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